【第4版】国際課税の実務と理論

【第4版】国際課税の実務と理論 page 26/34

電子ブックを開く

このページは 【第4版】国際課税の実務と理論 の電子ブックに掲載されている26ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
【第4版】国際課税の実務と理論

28第1章非居住者・外国法人に対する所得課税23日判決(平成19年(行コ)第215号)は、主観的な贈与税回避目的を事実認定における決定的な考慮要素としたが、最高裁第二小法廷平成23年2月18日判決(平成20年(行ヒ)第139号)は、住所の本来の意義である「生活の本拠」と同義(借用概念)に解した上で、相続税法に定める「住所」の課税要件のあてはめを行い「国内における住所を有していたということはできないというべきである」と判示した22。永遠の旅人(Perpetual Traveler, Permanent Traveler)居住者か否かの判定は、滞在日数のみによって判断するものでなく、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断されるから、外国に1年の半分(183日)以上滞在している場合であっても、日本の居住者となる場合がある。すなわち、1年の間に居住地を数カ国にわたって転々と移動する、いわゆる「永遠の旅人(Perpetual Traveler,Permanent Traveler)」の場合であっても、その者の生活の本拠=住所が国内にあると日本の税務当局が判断すれば、日本の居住者とされる。外国の居住者となるかどうかは、当該外国の法令によって決まるから、ある国で居住者と判定され、日本でも居住者と判定される場合は、各々の22須藤正彦裁判長裁判官の補足意見は次のとおりである。「納税は国民に義務を課するものであるところからして、この租税法律主義の下で課税要件は明確なものでなければならず、これを規定する条文は厳格な解釈が要求されるのである。明確な根拠が認められないのに、安易に拡張解釈、類推解釈、権利濫用法理の適用などの特別の法解釈や特別の事実認定を行って、租税回避の否認をして課税することは許されないというべきある。そして、厳格な法条の解釈が求められる以上、解釈論にはおのずから限界があり、法解釈によっては不当な結論が不可避であるならば、立法によって解決を図るのが筋であって(現に、その後、平成12年の租税特別措置法の改正によって立法で決着が付けられた。)、裁判所としては、立法の領域にまで踏み込むことはできない。後年の新たな立法を遡及して適用して不利な義務を課すことも許されない。結局、租税法律主義という憲法上の要請の下、法廷意見の結論は、一般的な法感情の観点からは少なからざる違和感も生じないではないけれども、やむを得ないところである。」