月刊スタッフアドバイザー Staff Adviser News
現場で感じる上手い雇用の実践術 第1回 定年退職者の再雇用で会社を強くする!!(その1) 社会保険労務士 笹島 敏邦2008.11.14
第1回 定年退職者の再雇用で会社を強くする!!(その1)
[月刊 スタッフアドバイザー 2008年10月号に掲載]
少子高齢化の改善は一向に進む気配はなく、むしろその傾向は強くなるばかりです。日本企業は深刻な労働力不足に直面する可能性が高く、その労働力不足を補うためには、「定年退職者(以下 高齢者)の活用」と「女性の活用」がどうしても必要です。「女性の活用」については、次回以降のテーマとして取り上げていくこととして、今回は「高齢者の活用」について解説していきたいと思います。
今まで「高齢者の雇用」と言えば、「如何にして65歳までの雇用機会を与え、法律の義務を果たしていくのか」という視点で捉えていた企業が多かったのではないでしょうか。今後企業が求める高齢者の役割は、一層高まっていくものと予想されます。受け身の姿勢で高齢者の雇用を捉えていては、高齢の人たちも力を発揮してくれません。
企業は、高齢者の雇用を能動的・積極的に捉え、高齢の人たちが力を発揮できるような仕組み・制度を整えていく必要があるのです。
1.「分断、共有、検証」が基本
私は、高齢者の雇用については「分断、共有、検証」のプロセスを経て、依頼する仕事の内容と労働条件を決定していくべきものと考えています。と言ってもいきなりでは何のことかわからないでしょう。以下、この「分断、共有、検証」とは何かについて、順を追って説明していきます。
(1) 分断とは
分断とは、仕事の内容と労働条件について、60歳(定年)までのものと60歳以降のものを全く別物として考えることです。
まずは仕事の内容について。分断の段階で曖昧な対応をしてしまうと、次の共有の段階で苦労することになります。今までの仕事の内容を引きずってしまうことにより、会社にとって、組織にとって、本当に必要な職務に当たってもらうことができなくなる恐れがあります。結果的には、今までと全く同じ内容の職務に当たってもらうことになるかもしれません。その場合でも、一度きっちり分断し、白紙の状態にしてから、次の共有の段階に移るようにしたいものです。
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<さらにone point 賃金の分断>
この段階で最重要の問題のひとつとなるのは、労働条件における賃金です。多くの企業では60歳以降の賃金に関する約束事を既に決めているでしょう。それでも、その中身は「定年時の60%」など、60歳までの制度を引きずった型の内容が多いのではないでしょうか。せっかく仕事の内容について分断し、60歳以降の仕事内容を設定するのですから、賃金についても60歳以降の仕事の内容とリンクする約束事(賃金制度・人事制度)を決めておく必要があります。シンプルで簡単なものでいいのです。複雑で難しい制度を作る必要は全くありません。
なお、在職老齢年金・高年齢雇用継続給付などの公的給付は、大いに活用するべきものです。60歳以上の賃金については、これらの公的給付を考慮に入れて、約束事を決めていくことをお勧めします。
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(2) 共有とは
共有とは、高齢者が担う仕事の内容(職務、役割、責任など)と労働条件(賃金・労働時間・休日など)に関して、労使が認識を一致させることを指します。この共有の段階は、「分断、共有、検証」のプロセスの核となるものであり、共有の成否が、高齢者雇用の成否に直結するといっても過言ではありません。
これから担っていただく仕事について、労使が認識を一致させることにより、高齢者は自らの役割や責任を理解し、職務に当たります。また、会社側も高齢者が力を発揮しやすくするための支援が可能となります。
共有の進め方は、原則として会社側・組織側の要望・事情を優先させます。つまり、「会社・組織として必要・適切な雇用パターンは何なのか」というところをベースにして、高齢者の「仕事に対する意気込み」「体力面」「諸事情による制約」などを勘案し、仕事内容の共有を図っていくのです。高齢者の雇用パターンには、権限変更型、2007年問題解決型、労働力そのもの型、従来業務継続型、新職務担当型、新規雇用型、未経験者雇用型などが考えられます。後半でそれぞれの雇用パターンにおけるポイントを整理しますので、共有時の参考にしてください。
では、共有をうまく図ることができない場合、どうなってしまうのでしょうか?例えば、会社が意図する仕事の内容は「権限変更型」であるにもかかわらず、労働者側は今までの権限と変わらない形の「従来業務継続型」と認識して職務に当たった場合、組織の指揮命令系統に混乱が生じます。特に新しく権限を付与された者にしてみれば「先輩に気を遣う」「自分の指揮命令が機能しない」と、面白くない状況です。この例に限らず、仕事内容の共有が図れない場合、高齢者が力を発揮できないならまだしも、組織に悪影響を及ぼす可能性があります。したがって、仕事内容の共有(認識の一致)は、互いに納得するまで時間とエネルギーをかけ、確実に行わなくてはなりません。
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<さらにone point 労働条件の共有について>
労働条件の共有については比較的容易に進めることができます。
まず、労働時間や休憩、休日等に関してはなるべく労働者側の要望を取り入れるようにしましょう。要望を受け入れやすくするためには、「短時間勤務制度」「短期休養・休暇制度」などの制度を整備しておく必要があります。また、賃金に関しては、分断のところで決めた仕事の内容とリンクした約束事(賃金制度・人事制度)があるはずなので、この約束事に基づいて賃金を決定していくことになります。
いずれにしても、「仕事内容の共有」→「労働条件の共有」という流れで進めていくことになります。
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(3) 検証とは
検証とは、共有した内容が実行されているかどうかを調べることです。
検証することによって、仕事の内容と労働条件について、改めて労使が認識を一致させることができます。また、誤差が大きい場合には、仕事の内容や労働条件を変更することによって、再び認識を一致させることが可能となります。
検証の方法は、自己評価が一番適しています。自己評価に基づき、所属長等との間で面談を行い検証結果を確認すればいいのです。高齢者を評価する人もやりにくい面があると思いますし、高齢者自身も評価されることに抵抗を感じることが多いと思います。何よりも、自己評価は「気付き」「再認識」の効果が期待できます。自己評価シートを作成する際には、高齢者が自分の職務・役割等への気付き・再認識ができるような項目を入れ込むようにしましょう。
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<さらにone point 検証の結果を処遇につなげるには>
高齢者への賃金は元々低く抑えている場合が多く、また契約も1年単位を繰り返していることが多いので、マイナスの処遇を行うことは考え難いものがあります。したがって、私が検証結果を処遇につなげる制度の構築を支援する場合、その処遇は「プラスのみ」、つまり加点方式を採用しています。
具体的には、検証の結果を賞与等につなげる処遇制度も考えられますが、賞与は年金額や高年齢雇用継続給付の給付金に影響してしまうので、せっかくの賃金設計が崩れてしまいます。
これに対して、退職金は給付金に影響されず、税務上の恩恵も受けることができます。したがって、検証の結果を処遇につなげるのなら、退職金制度に連動させる方式が、高齢者には合っています。そこで、退職金制度についても60歳以前とは当然分断し、60歳以降の退職金制度を作る必要があります。例えば、検証結果をポイント化し、そのポイントを積み上げていくような加点方式を採用することにより、高齢者の貢献を処遇につなげることが可能となり、結果として高齢者が担う職務・役割・責任などの実効性を高めることができます。
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