月刊スタッフアドバイザー Staff Adviser News
現場で感じる上手い雇用の実践術 最終回 40歳までにチャレンジする、40歳からチャレンジする(その1) 社会保険労務士 笹島 敏邦2009.09.28
[月刊スタッフアドバイザー2009年9月号に掲載]
今回の第12回をもって、この「現場で感じる上手い雇用の実践術」の連載が一段落します。そこで、今回は「現場で感じたこと」というよりは、「当事者、自分事として感じ、考えさせられた事例」について記述していこうと思います。
1. 働き盛りの40歳代…
私が所属する社会保険労務士法人において、個別の無料相談会を定期的に実施しています。私もこの個別相談会において経営者の色々な悩みを聞くことがありますが、これからお伝えするケースは、良い意味でも悪い意味でもとても印象に残っている経営者からの相談です。
相談相手は、衣料品店を都内に5店舗構え、更なる事業の拡大を目指している経営者です。では、そのときの私と社長とのやり取りを振り返ってみましょう(経営者の設定、会話の内容は多少変更しています。)。
社長:先生、40歳で退職してもらえる人事制度を作ったことがありますか?
私 :40歳で退職ですか…。
社長:はい、そうです。人事制度でなくてもいいんです。40歳で退職してもらうための仕組みは何かありますか?
私 :(……。)私も40歳を過ぎたばかりですが、40歳以上の者は必要ないということなのでしょうか?
社長:申し訳ないのですが、そうなんですよ。失礼ですが先生の給料はいくらですか?まさか年収300万ってことはないですよね。ウチみたいな中小企業では40歳以上の方に満足のいく給与は払えません。500万が限界です。これじゃ満足できませんよね。
あと、この方たちに退職してもらわないと、若い人たちを採用することができないのです。20代の者たちに500万出せば、喜んで働いてくれます。
私 :確かに、20歳代の人たちには良い待遇ですね。でも、500万円あれば生活はできますし、40歳の方でも店舗運営の仕事にやりがいを感じていれば喜んで働いてくれるのではないでしょうか?
社長:ええ、確かに40歳を過ぎても喜んで働いてくれる人もいるでしょう。ただ、金の問題だけではなくて、センスというか感性というか、やっぱり若い奴らの方がいいんですよ。
40歳で退職してもらういいアイデアはありませんかね?
結局、この相談会において、私はこの社長に満足してもらえるような回答ができませんでした。それはそうです。40歳で辞めてもらえる仕組みなど、突然聞かれても、簡単に答えは出てきません。
この会社における正社員の構成は、店舗ごとに3〜4人、本部に3人。20人前後の正社員しかいないにもかかわらず、ここ数年3〜4人の新卒を採用しています。会社も若く、社長を除く一番の年長者が42歳の方で、すべての店舗のマネジメントを担っています。社長に言わせると、今まで社長の右腕的な存在であったこのマネージャーでさえ、退職の対象となっているとのこと。40歳退職の計画は着々と進んでいるのです。
自分が退職リストの対象となっているような気がして、相談会の後は落ち込んでしまいました。40歳代は働き盛りのはずです。仕事でも、家庭でも中心として頑張らなくてはならないのに…。
2. ほかの経営者たちも
この個別相談会の後、私が担当している企業の社長や知り合いの社長など、数人の経営者に対して、「40歳退職」に関する意見を求めてみました。すると、意外や意外、肯定的な意見が多かったのです。そのうちの2人の社長とのやり取りを振り返ってみると…。
(1) 1人目の社長
社長:この社長の考えは極論過ぎるけど、確かに40歳くらいになると「ウチには合わないからほかの世界に行った方がいいんじゃないのかなあ」と思う人は結構いますよ。
私 :「他の世界」と言っても、なかなか自分に合う会社・仕事など見つけることはできないと思います。特に年齢が上になれば上になるほど、不利になりますよね。
社長:そうなんですよ。情みたいなものも当然あるし、「ウチが見捨てたらやっていけないだろうな」というような人も確かに多い。反面、「ウチにいるより、他の会社に行った方が幸せになるかもしれない」って本気で思うこともある。
私 :本当は辞めてもらいたいけど、情けで雇い続けてもらっていることがわかったら切ないですね。ところで、社長のところでは40歳以上の方が何名かいらっしゃいますが、どのくらいの割合で、ほかの世界に行った方がいいと思う人がいるのですか?
社長:半分以上はいますね。
私 :半分以上ですか…。
(2) 2人目の社長
社長:多かれ少なかれこのような考えは、経営者にはあると思いますよ。
私 :社長は「少なかれ」の方に見えますが…。
社長:そんなことないですよ。思っていても実行力がないだけです。
私 :どんなところが共感できるのでしょうか?
社長:共感ということではないのですが…。
組織はいつもおなじ人だとダメになります。ある程度の入れ替わりは、やはり必要です。これを「意図的に入れ替えるか、自然に任せるか」っていうことではないでしょうか。
私 :社長のところはほとんど入社・退社がなく、退職者が出たとしても、いつも円満退職に見えていました。「自然に任せている」ということなのでしょうか?
社長:だから業績が悪いのかもしれません。まあ、その分社員も一生懸命働いてくれていますが…。
ただ、今まで成立していたことが、明日成立するとは限らない時代です。意図的な入れ替えも考えていかなければならないと、最近思うこともあるのですよ。会社がなくなったら元も子もありませんから。
私 :意図的にですか…。
