第1節 納税地及び納税義務

概要

(1) 法人は,法人税法の定めるところにより,法人税を納めなければならない( 法4 )。法人税の納税義務者は,法人であるが,人格のない社団等(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものをいう。)も法人とみなされる( 法3 )。

法人は,各事業年度の終了により,あるいは解散によって消滅することにより,税法の定める要件に従ってこの義務が具体化され,その具体的に確定した税額を納付する義務を負う。

(2) 納税地は納税者が税法の定めるところにより,その義務を履行するとともに権利の行使をする基準となる場所であるが,法人の法人税の納税地は,その本店又は主たる事務所の所在地である( 法16 )。

法人の納税地が,その法人の事業又は資産の状況からみて,法人税の納税地として不適当であると認められる場合には,その納税地の所轄国税局長は,その法人税の納税地を指定することができる( 法18 )。

1−1−1 法人でない社団の範囲

法第2条 第8号((人格のない社団等の意義))に規定する「法人でない社団」とは,多数の者が一定の目的を達成するために結合した団体のうち法人格を有しないもので,単なる個人の集合体でなく,団体としての組織を有して統一された意志の下にその構成員の個性を超越して活動を行うものをいい,次に掲げるようなものは,これに含まれない。

(1) 民法第667条((組合契約))の規定による組合
(2) 商法第535条((匿名組合契約))の規定による匿名組合

改正等

昭56直法2―16により通達番号変更(旧15―1―1)

解説

(1) 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを,法人税法上「人格のない社団等」といい( 法2 八),法人とみなして同法の規定が適用されることになっている( 法3 )。

私法上のいわゆる権利能力のない社団・財団がこれに該当するが,権利能力のない社団・財団が,その構成員又は出えん者から独立した団体又は財団として活動を行う場合には,単に法人格を有していないだけでその実体は法人である社団・財団と異ならない。また,私法上も社会的に独立した存在としてその法主体性が認められていることに伴い,法人税法及び所得税法においても,これを法人とみなし,その構成員又は出えん者から独立した納税の主体とされている。

(2) 本通達においては,法人でない社団の意義とともに,民法上の組合(いわゆる任意組合)及び商法上の匿名組合は法人でない社団に含まれない旨が明らかにされている(会社法によって創設された合同会社(日本版LLC)は,会社自体に法人格があることが会社法上明記されている。)。

すなわち,私法上にいう人格のない社団(いわゆる権利能力なき社団)とは,@共同の目的のために結集した人的結合体であって,A団体としての組織を備え,Bそこには多数決の原則が行われ,C構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し,Dその組織によって代表の方法,総会の運営,財産の管理等団体としての主要な点が確定しているものをいうとされているが(昭39.10.15最高判),税法上の考え方も同じことであるので,本通達においてはそのことが明らかにされている。

なお,民法上の組合や商法上の匿名組合は,一種の契約関係であって団体としての性格はないから,人格のない社団には当たらない。

1−1−2 法人でない財団の範囲

法第2条 第8号((人格のない社団等の意義))に規定する「法人でない財団」とは,一定の目的を達成するために出えんされた財産の集合体で特定の個人又は法人の所有に属さないで,一定の組織による統一された意志の下にその出えん者の意図を実現すべく独立して活動を行うもののうち法人格のないものをいう。

改正等

昭56直法2―16により通達番号変更(旧15―1―2)

解説

本通達においては,法人でない財団の意義が明らかにされている。

法人でない財団は,法人でない社団が人の集合体であるのに対し,一定の目的のために出えんされた財産の集合体であって人の集団を構成分子としないものであるところに特徴がある。したがって,ある財産の集合体が法人でない財団といい得るかどうかの判断に当たっては,その財産がどの程度その出えん者の所有から離れ,独立した存在として財産的活動を行っているかが主要なポイントとなる。

このように,法人でない財団というためには,一定の目的のために存在する財産の集合体であってそれが独立した活動体であることを要するから,その収益が実質的に特定の法人又は個人に帰属することとなっているようなものは,法人でない財団に該当しない。

1−1−3 人格のない社団等についての代表者又は管理人の定め

法人でない社団又は財団について代表者又は管理人の定めがあるとは,当該社団又は財団の定款,寄附行為,規約等によって代表者又は管理人が定められている場合のほか,当該社団又は財団の業務に係る契約を締結し,その金銭,物品等を管理する等の業務を主宰する者が事実上あることをいうものとする。したがって,法人でない社団又は財団で収益事業を行うものには,代表者又は管理人の定めのないものは通常あり得ないことに留意する。

改正等

昭56直法2―16により通達番号変更(旧15―1―3)

解説

法人でない社団又は財団のうち,法人とみなされるのは「代表者又は管理人の定めのあるもの」ということになっているが( 法2 八),本通達においてはこの代表者又は管理人の定めがあることの意義が明らかにされている。

すなわち,法人でない社団又は財団といい得るためには,少なくとも団体としての組織を備え,代表の方法が定められていること,又は財産を運営する組織を有することなどが必要であるところから,法人でない社団又は財団であって,現に収益事業を行っているものには,代表者又は管理人の定めのないものは通常あり得ないので,本通達においてはこのことが念のため明らかにされている。

1−1−4 人格のない社団等の本店又は主たる事務所の所在地

人格のない社団等の本店又は主たる事務所の所在地は,次に掲げる場合に応じ,次による。

(1) 定款,寄附行為,規則又は規約(以下1―1―4において「定款等」という。)に本店又は主たる事務所の所在地の定めがある場合 その定款等に定められている所在地
(2) (1)以外の場合 その事業の本拠として代表者又は管理人が駐在し,当該人格のない社団等の行う業務が企画され経理が総括されている場所(当該場所が転々と移転する場合には,代表者又は管理人の住所)

改正等

昭56直法2―16により通達番号変更(旧1―1―1)

解説

(1) 民法では,法人は登記をするものとされている(民法36)。また,会社法では,株式会社はその本店の所在地において,設立時取締役等による調査が終了した日又は発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に設立の登記をすることによって成立するものとされている( 会社法49911@)。

他方,法人税法では,法人の法人税の納税地(申告,申請,届出,納付その他の手続に関する所轄官庁を定める基準となる場所)は,その本店又は主たる事務所の所在地とすることになっている( 法16 )。

そして,ここでいう「本店又は主たる事務所の所在地」の意義については,登記上の本店所在地を指すというのが,税務上の一般的な解釈であり,このため,登記のある法人の場合には,おのずと納税地が明らかである。

(2) 一方,人格のない社団等は,税法上は法人とみなされるが( 法3 ),一般の法人とは異なり,登記がないので,登記上の本店所在地を基準として納税地を定めることはできない。そこで,本通達において人格のない社団等の納税地が明らかにされている。

(1)では,定款等で本店又は主たる事務所の所在地が定められている場合には,その定款等の定めによることとし,(2)は,定款等に本店又は主たる事務所の所在地に関する定めがない場合には,いわゆる管理統括機能を有する場所,すなわち事業上の本拠地をもって本店所在地とすることとしている。