ご照会のB名義の債券が、その名義人であるB自身が取得し、Bが所有するものであることが明らかである場合には、その債券はBの固有の財産であり、Aの相続財産に含まれないことはいうまでもありません。 また、その債券の取得のための資金をBが負担せず、Aが負担していた場合でも、その債券の名義人がBである以上、その債券は、その取得資金をAが負担したときに、AからBに贈与されたものとして取扱われます。このことは、相続税法基本通達9−9においても明らかにされております。B名義の債券の取得は10年以上前とのことですので、贈与によって取得されたものと扱われても、贈与税については更正等の制限期間が経過しており、課税されることはありません。 ただし、その債券の真実の所有者がAであり、Bは単なる名義人である場合には、そのB名義の債券はAの相続財産に含まれることなりますが、真実の所有者がAであることの証明責任は、それを主張している税務署にあります。真実の所有者がAであることについて合理的な疑いをさしはさむ余地がないほど、客観的な証拠によってそれが証明されない限り、その債券の真実の所有者は、Bであると判断すべきと考えます。 また、B名義の債券がAの立替金によって取得されたかどうかについても、その証明責任は、それを主張している税務署にあるものといえます。 ご照会の文面からだけでは、税務署が、合理的な疑いをさしはさむ余地がないほどに、B名義の債券の真実の所有者がAであること、あるいは、Aの相続開始時に立替金債権が存在したことを証明できるのかどうかは判断できませんが、もし、税務署がそれを証明できないのであれば、ご照会のB名義の債券は、上記通達により、Aの相続財産であるとはいえないものと考えます。 (税理士懇話会・資産税研究会事例より)