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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

後遺障害保険金について (18.6/6更新)
Q

 Aは、平成27年11月25日転倒による事故により後遺障害を被りました。
 Aは、従前より普通傷害保険に加入しており、保険会社に対して後遺障害保険金の給付を申請していましたが、事故と症状との間の因果関係がなかなか認められず、保険金を受け取らずに平成29年10月19日に死亡してしまいました。
 その後、相続人が交渉を継続し、平成30年2月27日後遺障害保険金2,400万円の支払いが確定したとの通知が保険会社からありました。受取人はAの相続人(長男)Bです。
 Bは独身でAとは別生計です。

 この保険金は、相続発生時には権利として発生していないので相続財産にはならないものと考えます。
 また、受取人Bは直系血族なので所得税は非課税(所得税基本通達9-20)と考えます。
 以上の考え方で良いか、ご教示のほどよろしくお願いします。


A  被相続人の生前に後遺障害保険金の支払いがされるべき場合において、その保険金の支払前に相続が発生したものについては、その未払保険金に係る支払請求権自体が本来の相続財産として相続の対象になり、これについて相続税が課税されることになります。

 これに対して、被相続人の死亡による相続開始の際に、被相続人に係る保険金が支払われること自体がまったく確定しておらず、そのため、保険金支払請求権が発生しなかったものについては、その後、保険金を支払うことが確定して初めて、支払を受けるべき具体的な権利が相続人に発生することになりますから、その実質が被相続人に支払われるべきであった後遺障害保険金であっても、その法律関係は、後遺障害保険金の支払者と相続人との間に直接に発生するものと考えられます。

 一方、相続税法では、相続という法律上の原因によって財産を取得した場合でなくても、実質上、相続によって財産を取得したのと同視すべき関係にあるときは、これを相続財産とみなして、所得税ではなく相続税を課税することとされています(相法3)。

 相続によって財産を取得したものと同視すべき関係にあるという以上、被相続人の死亡による相続開始の際、その支払額はたとえ未確定であるにせよ、少なくとも後遺障害保険金の支払われること自体は確定されていることが必要かと思われます。

 照会事例の場合、相続開始の際、後遺障害保険金を支払うこと自体は確定されておらず、したがって、この場合の被相続人に係る後遺障害保険金は、相続の対象となるべき財産とはなり得ず、相続人の一時所得として所得税の課税対象となるのが本来であると思われます。
※ みなし相続財産とされる規定も見当たりません。

 所得税法では、損害保険会社等の締結した損害保険契約に基づき支払を受ける保険金等で、身体の傷害に基因して支払を受けるものについては、所得税を課さないこととされています(所法9@一七、所令30一)。

 これらの定めは、自己が身体に傷害を受けたことによって、支払を受ける保険金等を非課税として扱うこととするものであり、したがって、自己以外の者が傷害を受けたことによって支払を受ける傷害保険金等についてまで非課税とするような規定にはなっていません。

 しかし、課税実務上、保険金等の受取人が被保険者の配偶者、直系血族又は生計を一にするその他の親族である場合の保険金等に限って、自己の傷害によるものでないものについても非課税として取り扱われています(所基通9-20)。

 世帯主が、自己を被保険者とする保険の契約者として保険料を負担している場合と妻や子を被保険者とする保険の契約者として保険料を負担している場合とにおいて、自己または妻や子が交通事故で傷害を受けたため支払を受けるような保険金については、その実質では大差がないこと等を考慮して、自己の場合と同様に非課税として取り扱うこととされています。

【所得税法基本通達】
(身体に損害を受けた者以外の者が支払を受ける傷害保険金等)
9-20 令第30条第1号の規定により非課税とされる「身体の傷害に基因して支払を受けるもの」は、自己の身体の傷害に基因して支払を受けるものをいうのであるが、その支払を受ける者と身体に傷害を受けた者とが異なる場合であっても、その支払を受ける者がその身体に傷害を受けた者の配偶者若しくは直系血族又は生計を一にするその他の親族であるときは、当該保険金又は給付金についても同号の規定の適用があるものとする。

 ご照会事案については、相続税及び所得税のいずれについても、ご照会内容の課税の取扱いになるものと考えます。


             (税理士懇話会・資産税研究会事例より)

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