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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

同一敷地内に複数の貸家を建てた場合の土地の評価 (18.7/4更新)
Q

 土地の評価について質問いたします。
 図のように土地を造成し貸家を建築しました。
 サブリース契約を結び、同族会社が一括して賃貸借契約を結んでいます。
 同一敷地内に複数の貸家を建築し、異なる相手先に貸し付けている場合は一区画ごとの評価にするようにとのことですが、この場合は私道を除く部分を一区画として評価するのでしょうか。 その場合広大地の適用はできますか。
 ※私道は固定資産税評価では公衆道路となって非課税ですが、特定の者の通行の用に供されるので減額評価をします。


A  宅地は、1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地をいいます。)を評価単位とします(評基通7-2(1))。
 この場合における「1画地の宅地」の判定は、原則として、@宅地の所有者による自由な使用収益を制約する他者の権利(原則として使用貸借による使用借権を除きます。)の存在の有無により区分し、A他者の権利が存在する場合には、その権利の種類及び権利者の異なるごとに区分することとされており、例えば、貸家建付地を評価する場合において、貸家が数棟あるときは、原則として、各棟の敷地ごとに1画地の宅地として評価することとされています(国税庁ホーム/法令等/質疑応答事例/財産評価/宅地の評価単位の(5))。

 従来は、この「各棟の敷地ごとに1画地の宅地として評価する」という部分については、通常は、各棟の建物賃借人(権利者)は異なるため、「原則として、各棟の敷地ごとに1画地の宅地として評価する」と説明されているものであり、したがって、複数棟の貸家を一括して賃貸している場合には、建物賃借人(権利者)は同一人であるため、例外的に、この複数棟の貸家の敷地を併せて1画地として評価することができるという考え方により、広大地評価も可能というのが実務上の取扱いであったかと思われます。

 この点に関して、平成25年5月20日裁決(裁決事例集未登載)は、「評価をする宅地の所有者がその宅地の上に複数の貸家である建物を所有している場合において、当該各建物が外観上それぞれ独立したものであるときには、母屋と離れのように当該各建物が一体で機能している特段の事情が認められる場合を除き、各建物の敷地部分をそれぞれ1画地の宅地とみるのが相当である」として、上記質疑応答事例の(5)に沿う判断をしています(平成26年4月25日裁決(裁決事例集未登載)も同旨)。

 これらの裁決の考え方が妥当であるかどうかは別として(裁判例はないようです。)、両事件において、課税庁は、「本件各土地には、転借人又は賃借人の本件土地を利用する権利が各棟の本件各共同住宅ごとに存することから、本件各土地に存する転借人又は賃借人の権利は本件各共同住宅の敷地ごとに異なる」(平成25年5月20日裁決)、「本件各共同住宅は各転借人が利用することを前提とするものであることからすると、本件各宅地に係る権利関係を判断するに当たっては、各転借人が有する本件各共同住宅の敷地利用権をも考慮すべきである」(平成26年4月25日裁決)と主張しており、上記1のAの「他者の権利」については、賃借人だけではなく転借人の敷地利用権も含まれると考えているようですから、ご質問の評価対象地については、上記質疑応答事例の(5)の原則のとおり、各貸家の敷地ごとに1画地の宅地として評価する、したがって、広大地(課税時期が平成30年1月1日以降の場合は、地積規模の大きな宅地の評価)の適用はないとするのが無難ということになります(この場合、私道に特定路線価を設定して各貸家の敷地を評価することになります。)。


             (税理士懇話会・資産税研究会事例より)

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