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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

相続時精算課税制度で贈与した財産を遺留分減殺請求した場合、相続税の更正の請求で小規模宅地の減額は使えるか (18.8/3更新)
Q

 被相続人が生前に、相続人の一人に、土地などの財産の全てが相続時精算課税制度により贈与されていたことが相続後に発覚しました。
 財産を取得していない相続人が、遺留分減殺請求をする予定なのですが、そこで取り戻した土地について、相続税の小規模宅地の減額が使えるのでしょうか(居住用などの要件は満たしているという前提です)。
 もともと贈与で取得した土地については、小規模宅地の減額は適用できないので当初申告は小規模宅地の減額なしでの申告になるかと思います。
 もし遺留分減殺請求で取り戻した土地に小規模宅地の減額の適用ができるのであれば、「申告期限後3年以内の分割見込書」のような届出は必要ないのでしょうか。


A  小規模宅地等の特例が適用される財産は、個人が相続又は遺贈により取得した財産(宅地等)に限られていますから(措法69の4@)、例えば、相続時精算課税制度を適用して贈与された宅地等については小規模宅地等の特例の適用はありません(国税庁ホーム>法令等>質疑応答事例>相続税・贈与税>相続開始の年に被相続人から贈与を受けた宅地に係る小規模宅地等の特例の適用の可否)。

 しかしながら、この相続時精算課税制度を適用して贈与された宅地等について、他の相続人(遺留分権利者)が遺留分の減殺請求を行い、取り戻した場合には、その宅地等については、遺留分権利者が相続により取得した財産ということになり、小規模宅地等の特例が適用される財産に該当することになります(参考:国税庁ホーム>法令等>質疑応答事例>相続税・贈与税>遺留分減殺に伴う修正申告及び更正の請求における小規模宅地等の選択替えの可否)。

 お尋ねの「申告期限後3年以内の分割見込書」は、相続税の申告期限までに共同相続人又は包括受遺者によって分割されていない宅地等について、分割後に小規模宅地等の特例の適用を受けようとする場合に、分割されていない理由及び分割の見込みの詳細を記載して相続税の申告書に添付して提出するものです(措法69の4E、措規23の2G六)。

 ご質問の場合、遺留分権利者は、相続税法32条1項4号に規定する事由すなわち「遺留分による減殺の請求に基づき返還すべき、又は弁償すべき額が確定したこと」により、期限後申告書を提出する必要が生じるとともに(相法30)、その期限後申告書によって小規模宅地等の特例を適用することになります(措法69の4E)。

 つまり、相続時精算課税により贈与を受けた者は、その贈与を受けた財産の価額を相続税の課税価格として相続税の申告書を提出しなければなりませんが(相法21の16)、この場合には、共同相続人又は包括受遺者によって分割されるべき宅地等は存在しませんから、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する必要もありません。

 そして、遺留分権利者は、遺留分の減殺請求が認められ、小規模宅地等の特例の対象となる宅地等の返還を受けることが確定するまでは、相続税の申告書を提出する必要はなく(相法27)、その返還を受けることが確定して初めて、相続税の期限後申告書を提出する必要が生じ、また、小規模宅地等の特例の特例対象宅地等が生じるわけですから、このような場合に、小規模宅地等の特例を適用するための事前の届出など無理があり、必要ないものと考えます。


             (税理士懇話会・資産税研究会事例より)

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