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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

非上場株式の贈与税の納税猶予・免除の特例税制について (18.10/5更新)
Q

 後継者の取得株数要件として、いわゆる3分の2要件があります。
@先代経営者株式数≧発行済株式数×2/3−後継者株式数の場合
 ・・・「発行済株式数×2/3−後継者株式数」以上の一括贈与義務
A先代経営者株式数<発行済株式数×2/3−後継者株式数の場合
 ・・・先代経営者株式数の全ての一括贈与義務

この場合において、例えば「先代経営者・・・発行済株式数の20%所有、後継者・・・発行済株式数の80%所有で、先代経営者の全株贈与」のように、後継者の所有する株式数が、そもそも3分の2を超えていた場合については、上記算式がマイナス値となってしまいます。

 これが後継者の所有する株式数が3分の2に達していない場合は、上記@の算式ですと、3分の2までが適用対象限度ではなく、それ以上の一括贈与があった場合でも、3分の2を超える部分も対象となることを鑑みますと、上記の例のように、後継者の所有する株式数が、そもそも3分の2を超えていた場合についても、適用対象となるのでしょうか。

 それとも、そもそも適用対象からはずれるのでしょうか。


A  非上場株式等についての贈与税の納税猶予の特例は、特例贈与者が特例経営承継受贈者に特例認定贈与承継会社の非上場株式等の贈与をした場合において、その贈与が次に掲げる場合の区分に応じ次に定める贈与であるときは、特例対象受贈非上場株式等(当該非上場株式等で贈与税の申告書にこの特例の適用を受けようとする旨の記載があるものをいいます。)に係る納税猶予分の贈与税額に相当する贈与税については、その特例贈与者の死亡の日まで納税を猶予するというものです(措法70の7の5@)。

@ 特例経営承継受贈者が1人である場合 次に掲げる贈与の場合の区分に応じそれぞれ次に定める贈与
その贈与の直前において、特例贈与者が有していた特例認定贈与承継会社の非上場株式等の数又は金額が、その特例認定贈与承継会社の発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2からその特例経営承継受贈者が有していたその特例認定贈与承継会社の非上場株式等の数又は金額を控除した残数又は残額以上の場合 その控除した残数又は残額以上の数又は金額に相当する非上場株式等の贈与
イに掲げる場合以外の場合 特例贈与者が当該贈与の直前において有していたその特例認定贈与承継会社の非上場株式等の全ての贈与
A 特例経営承継受贈者が2人又は3人である場合(内容略)

上記@のイ及びロを算式で表すと、次のとおりです。
特例贈与者の所有株式数≧発行済株式総数×2/3−特例経営承継受贈者の所有株式数
特例贈与者の所有株式数<発行済株式総数×2/3−特例経営承継受贈者の所有株式数

 ご質問は、後継者(特例経営承継受贈者)が会社(特例認定贈与承継会社)の発行済株式の総数の80%(発行済株式の総数の3分の2以上)を有している場合には、上記算式(発行済株式総数×2/3−特例経営承継受贈者の所有株式数)がマイナス値となり、そもそも特例の適用対象からはずれるのかと問われるものですが、「その特例認定贈与承継会社の発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2からその特例経営承継受贈者が有していたその特例認定贈与承継会社の非上場株式等の数又は金額を控除した残数又は残額」については、計算上それがマイナス値となる場合であっても、残数又は残額という用語からはマイナスではなくゼロということになるものと思われますから(相続税の申告書第8の2表の付表1「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の適用を受ける対象非上場株式等の明細書」の「3 納税猶予及び免除の適用を受ける株式等の数等の限度数(限度額)の計算」欄の「B (@−Aの数等)」欄参照))、この場合は、上記@のイに掲げる贈与に該当するものと考えます。

 したがって、ご質問の場合における後継者がその特例認定贈与承継会社の非上場株式等について措置法第70条の7第1項に規定する非上場株式等の贈与税の納税猶予及び免除(いわゆる一般の非上場株式等の贈与税の納税猶予制度)の適用を受けていないこと(措法70の7の5A六ト)など、他の要件を満たす場合には、先代経営者からの株式の贈与については、措置法第70条の7の5第1項の非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例の適用を受けることができるものと考えます。


             (税理士懇話会・資産税研究会事例より)

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