トップへ

【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

代表取締役が所有する土地の上に建つマンションを所有する法人の株式会社を評価する際の借地権の考え方とその土地の評価 (19.7/3更新)
Q

 個人Xは、自身が保有する土地Aの上に、賃貸マンションBを建築し、建築当初からハウスメーカーにサブリースしています。
 今回、法人Y(個人Xが100%出資:個人Xが代表取締役)に対し、賃貸マンションBを売却することを検討しています。
 上記売買後、土地Aに関する契約は使用貸借とし、無償返還届(使用貸借)を提出する予定です。また、賃貸マンションBは引続き、当該ハウスメーカーにサブリースします。
 上記売買後、3年を超えた段階で法人Yの株式を個人Xの長男に贈与することを予定していますが、法人Yの株式評価(純資産価額方式)をする際、無償返還届(使用貸借)を提出しているため、土地Aの自用地としての評価額の20%相当額を借地権として計上しなくてもよいでしょうか。
 また、上記売買後、個人Xに相続が発生した場合の土地Aの相続税評価額は、建物Bの売買前後で賃借人に変更がないため、貸家建付評価でよいでしょうか。


A  1 法人Y株式の1株当たりの純資産価額を計算する場合の借地権価額の取扱い

 被相続人が同族会社に貸し付けている宅地について無償返還届出書が提出されている場合において、相当の地代が授受されている場合には、被相続人所有の貸宅地の価額は、自用地としての価額からその20%に相当する金額(借地権価額)を控除した金額により評価し、その借地権価額については、同族会社の株式の評価上、同社の純資産価額に計上することとされています(昭和43年10月28日付直資3-22ほか「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」通達)。

 しかし、無償返還届出書が提出されている場合であっても、その貸借関係が使用貸借である場合には、被相続人の貸宅地の価額は、自用地としての価額により評価しますから(昭和60年6月5日付課資2-58ほか「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」通達の8の(注)、以下「相当地代通達の8の(注)」といいます。)、同族会社の純資産価額に計上する借地権の価額はないことになります。

 したがって、Xが法人Yの株式を長男に贈与する場合における同社の純資産価額の計算に当たっては、土地Aの自用地としての価額の20%に相当する借地権価額を計上する必要はないものと考えます。

2 Xに相続が開始した場合の土地Aの価額について

 上記の相当地代通達の8の(注)によれば、被相続人Xが使用貸借により法人Yに貸し付けている貸宅地の価額は、自用地として評価することになります。

 ところで、Xが土地A上に賃貸マンションBを建築し、これを第三者に賃貸している状態で、この建物を長男に贈与(譲渡)し、敷地については長男がXから無償で借り受けている場合において、建物の賃借人に異動がない段階で、Xに相続が開始した場合あるいはXがその敷地を贈与する場合には、土地Aは、自用地としてではなく、貸家建付地として評価することと取り扱われています。

 これは、建物の賃貸借は、Xと建物賃借人との間で締結されたものであり、Xは土地所有者でもあることから、この建物賃借人は土地所有権の権能に属する土地の使用権(敷地利用権)を有していますが、この建物賃借人の有する敷地利用権は、建物が第三者に譲渡された場合においても侵害されないと解されているためです。

 この理は、相当地代通達の8の(注)による場合も同様と考えますので、ご質問のXに相続が開始した場合には、土地Aは貸家建付地として評価することになるものと思われます。

             (税理士懇話会・資産税研究会事例より)

資産税研究会(税理士懇話会)のご案内へ
≪≪ トップに戻る税務研究会ホームページ