トップへ

【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

数次相続の処理方法 (19.8/1更新)
Q

 被相続人甲の相続人は子乙、子丙の2名ですが、甲が死亡した一週間後に乙も死亡しました。乙の相続に係る相続人は丙一人です。
 甲の相続についての遺産分割は未了でしたので不動産登記は一次相続、二次相続と順を追って行うこととなるそうです(東京地裁平成26年3月13日、平成25年(行ウ)第372号)。
 この場合、相続税の処理についても甲の遺産の二分の一を乙が取得したものとして、一次、二次の相続税の処理をする必要があるでしょうか。
 数次相続があった場合、残った相続権利者で確定させた分割協議により課税処理することが認められているように思いますが(相基通19の2-5)、一次相続の相続人等が二人であった場合にはそのような取り扱いは認められず、甲の遺産の二分の一を乙が相続したものとし、更にそれを乙から丙が相続したものとして相続税の計算をする必要があるでしょうか。


A  ご質問にもあるとおり、東京地裁平成26年3月13日判決(裁判所ホームページ行政事件裁判例集)は、「不動産登記制度の目的は、物件変動の過程、態様を公示することにある」として、数次相続が発生した場合において、「中間の相続人が数人であったが、遺産分割によりその中の一人が相続した場合(甲が死亡し、その相続人が乙、丙及び丁の三人であったが、遺産分割により乙一人が相続した後に、乙が死亡して戊が相続した場合)」などの例外事由を除いては、中間省略登記を認めておりません。
 一方、相続税基本通達19の2-5《配偶者が財産の分割前に死亡している場合》は、「第一次相続に係る被相続人の配偶者が死亡した場合において、第一次相続により取得した財産の全部又は一部が、第一次相続に係る配偶者以外の共同相続人又は包括受遺者及び当該配偶者の死亡に基づく相続に係る共同相続人又は包括受遺者によって分割され、その分割により当該配偶者の取得した財産として確定させたものがあるときは、法第19条の2第2項の規定の適用に当たっては、その財産は分割により当該配偶者が取得したものとして取り扱うことができる」として、分割の前に死亡した配偶者(中間の相続人)に相続させる遺産分割協議を認めることとしています。
 この取扱いは、配偶者に対する税額軽減額の計算上の救済措置として設けられているものですから、例えば第一次相続の相続人が配偶者と子供一人の場合すなわち相続人が二人の場合であっても、当然に適用されることになります。
 また、同様のものとして、措置法通達69の4-25《共同相続人等が特例対象宅地等の分割前に死亡している場合》がありますが、この取扱いについても、例えば第一次相続の相続人が子供二人の場合であっても適用されるものと考えます。
 これらの取扱いは、相続税法19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》及び措置法69条の4《小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例》の特例の適用に関する救済措置として設けられたものですが、この手法による分割は、これらの規定の適用がない財産についても同時に分割することを認めることになります。
 このことから、ご質問の場合のように、配偶者に対する相続税額の軽減の規定の適用がない場合であっても(小規模宅地等の特例の適用の可否については不明)、一人残された相続人(丙)が、一次相続に係る財産(甲の遺産)を、死亡した相続人(乙)と適宜分割して取得することは認められるものと思われます。


             (税理士懇話会・資産税研究会事例より)

資産税研究会(税理士懇話会)のご案内へ
≪≪ トップに戻る税務研究会ホームページ