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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

借地権が転貸されている貸宅地の評価 (19.12/4更新)
Q

 個人Aが所有している土地を法人に貸し付けています。
 土地を賃借している法人Bは、別の店舗営業者Cに土地を貸し付けていましたが、現在店舗は閉店しています。店舗建物はそのまま存在しています。
 貸店舗は休業中ですが、個人Aは法人Bから地代を受け取っています。
 このような状況でも、個人Aの所有する土地の評価に際し、貸宅地として借地権を控除して評価することはできるのでしょうか。


A  ご質問の内容によると、個人Aから土地を賃借した法人Bは、店舗用営業者Cに土地を貸し付けたとのことですから、法人Bが借地権を転貸し、Cが建物を建てたことを前提としますと、この宅地の権利関係は、個人Aは底地権を有する地主さんですが、借地権部分については、法人Bが転貸借地権を有し、Cが転借権を有しているということになると思います。
 なお、借地借家法上は、借地権者である法人Bが設定した権利を「転借地権:建物の所有を目的とする土地の賃借権で借地権者が設定しているものをいう」、Cを「転借地権者:転借地権を有する者をいう」と定義されており(借地借家法2)、転貸借地権という定義はないようです。 

 ところで、財産評価基本通達25は、貸宅地とは、宅地の上に存する権利の目的となっている宅地をいい、借地権の目的となっている宅地の価額は、原則として、自用地の価額から通達27に定める借地権の価額を控除した金額によって評価する旨を定めています。
 また、借地権とは、借地借家法第1条第1号に規定する「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」をいいますが、この評価方法は、通達27の定めにより、原則として、自用地の価額に借地権割合を乗じて評価することとされているほか、財産評価基本通達では、通達29で転貸借地権の評価方法を、通達30で転借権の評価方法を定めています。 

 そうすると、借地権が転貸されている場合に、貸宅地として評価できるのか、すなわち、自用地の価額から借地権の価額を控除してもよいのか、という疑問が生じなくもありません。上記のとおり、財産評価基本通達は転貸借地権及び転借権の評価方法を定めていますので、例えば、通達25が、「借地権が転貸されている場合は、通達29で評価した転貸借地権の価額及び通達30で評価した転借権の価額を控除する」というような書き振りになっていれば分かりやすいのですが、そのように明記されてはいないからです。 

 しかし、この点については、借地権が転貸されたとしても、借地借家法上、借地権者の地位には何ら変わりがありませんので、通達25もわざわざ上記のような書き振りにする必要はなく、「借地権の価額を控除する」と定めれば足りると考えることができます。このことは、借地借家法が転借地権について、「建物の所有を目的とする土地の賃借権で借地権者が設定しているものをいう。」と定義していることでも理解できますし、物理的・経済的にみても、借地権を転貸する場合に地主の承諾が必要であるとしても、当該宅地に受ける制約は地主にとって変わりはありませんから、むしろ、借地権の価額を控除しない方が不合理といえます。
 したがって、借地権が転貸されている場合についても、貸宅地の評価として、借地権の価額を控除することができるという結論になります。 

 次に、Cの所有する店舗用建物が閉店している場合にどうなるか、という問題ですが、前述のとおり、借地権とは、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」をいい、転借地権とは、「建物の所有を目的とする土地の賃借権で借地権者が設定しているもの」をいいますので、借地権の設定の有無には、当該建物の利用目的や利用状況は、何ら影響しないということになります。

 したがって、Cの所有する建物が利用されていないとしても、AB間の借地契約が存続している以上(なお、Cの建物がある以上、BC間の転貸借地契約も存続しているはずだと思います。)、貸宅地の評価として、借地権の価額を控除することに問題はないといえます。


             (税理士懇話会・資産税研究会事例より)

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