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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

借地権の引渡し前に相続が発生した場合 (10.10/4更新)
Q  甲は、甲所有地の借地人乙と以前からトラブルになっていましたが、平成21年10月に裁判所の調停で話し合いがつき、甲所有地上の乙所有建物を、甲が1800万円で買い取ることになりました。甲は、平成21年10月に1,000万円を支払い、残金の800万円は平成22年5月の建物引渡し時に支払うこととしていましたが、平成22年3月に死亡しました。甲の相続税の計算に当たって、この宅地は通常の貸宅地として評価し、借地権の引渡し請求権として800万円を計上し、残代金800万円を未払金として債務控除することを考えていますが、いかがでしょうか。

A

  土地等の売買契約の締結後、その土地等が売主から買主に引き渡される前に相続が発生した場合には、それぞれ次のように扱うこととされています。

@ 売主に相続が発生した場合…相続又は遺贈によって取得される財産は、その土地等の譲渡対価のうち、相続開始時における未収金の額とします。
A 買主に相続が発生した場合…相続又は遺贈によって取得される財産は、その土地等の引渡し請求権とし、未払金は債務とします。

  この取扱いは、土地に限らず、借地権などの土地の上に存する権利についても同様とされています。また、Aの引渡し請求権の価額は、その売買契約に基づく土地等の譲渡対価の額とされますが、売買契約日から相続開始日まで相当期間が経過し、その譲渡対価の額が時価として適当でない場合には、売買実例等からその価額を評価すること等も認められています。
  事例の場合、裁判所の調停によって、被相続人が貸宅地上にある借地人の建物を買い取ることとなったものですが、これは借地権を借地権者から買い取ることと実質的には同一であり、上記の取扱いが適用されると考えます。
  したがって、上記Aによって、相続財産は、ご質問にあるとおり、借地権(建物)の引渡し請求権となり、未払金が債務控除の対象となります。ただし、引渡し請求権を800万円と評価しますと、すでに支払っている1,000万円が相続財産に反映されないこととなります。
  このため、引渡し請求権の評価額は、譲渡対価の額である1800万円、債務控除の対象となる未払金を800万円とすべきであると考えます。土地についてはご質問にあるとおり、貸宅地として評価することになります。
 
                         (税理士懇話会・資産税研究会事例より)


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