会社法では、合名会社の財産だけで会社の債務を弁済することができない場合には、社員は連帯して債務を弁済する責任を負うこととされています。また、退社する社員は、本店所在地の登記所で退社の登記をすることとされており、その際に、退社の登記をする以前に生じた債務に対しては責任を負うこととされています。
このことから、合名会社の会社財産によって会社の債務を完済できない状況にあるときに無限責任社員が死亡した場合には、その無限責任社員が持分に応じて負担すべき会社の債務超過額は、相続税の計算上、その無限責任社員の債務として債務控除の対象となります。このことは、国税庁のホームページの質疑応答事例でも明らかにされております。
ご質問の場合には、債務超過の状態が未払退職金を計上したことによって生じたものかどうかが分かりませんが、死亡退職金を支給すること(未払退職金の計上)によって債務超過となるのであれば、それは被相続人の債務には該当しないものと考えます。
死亡退職金の支給は、退社する社員の死亡後に発生するものであり、死亡時に現に存していた債務とはいえないからです。 なお、合名会社の出資の評価においては、死亡退職金相当額を債務として計上することは差し支えないと考えます。
(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
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