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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

無償返還の届出書が提出されている土地の売買 (11.12/1更新)
Q    10年ほど前に、個人甲がA株式会社に土地を貸し付けました。A社は甲が代表取締役となっている同族会社です。権利金の授受はありませんが、甲とA社との連名で、「借地権の無償返還の届出書」を提出しています。このほど、この土地をA社に譲渡することになりました。売買価額については、無償返還の届出書が提出されていますが、A社には借地権があるものとして、更地価額から20%を控除した額とすることを考えておりますが問題はないでしょうか。

A    借地契約に際して無償返還の届出書が提出された場合には、権利金の授受がなくても経済的利益はなかったものとして権利金の認定課税は行わないとしているところです。
   これは無償返還の届出書を提出している場合には、借地権の価額を常にゼロとするということであり、相続税および贈与税に関する個別通達(昭和60年課資2−58)でも無償返還の届出書が提出されている場合の借地権の価額はゼロとすることとされています。また同通達では、無償返還の届出書が提出されている貸宅地については、自用地としての価額の100分の80相当額で評価することとされています。
   ご質問は、この取扱いを念頭において「更地価額から20%を控除した額」で譲渡することとされているのではないかと考えますが、この取扱いは相続・贈与税に関するものであって、譲渡の場合にまで適用されるものではありません。
   本件は、個人地主、法人借地人間で無償返還の届出書が提出されている土地を売買する場合に、売買価額に借地権部分を考慮すべきか否かの問題ですが、個人が法人に対して時価より低額で資産を譲渡した場合でも、譲渡価額が時価の2分の1以上であれば、譲渡した個人に対するみなし譲渡所得の課税問題は生じないこととされています。
    しかし、低額で譲渡を受けた法人は、時価と実際の取得価額との差額部分について、譲渡人からの贈与とされ、受贈益課税の対象とされますから。時価をどのように算定するかの問題はありますが、ご質問にあるように更地としての時価を求め、その80%相当額で譲渡するのであれば、A社には受贈益の問題が生じるものと考えます。
   ただし、時価の算定いかんでは、受贈益が生じないこととなる余地もあります。
                       (税理士懇話会・資産税研究会事例より)

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