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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

相続放棄の錯誤と遺産分割 (12.1/6更新)
Q     相続人が5人で、相続財産の中に畑や田等の農地が含まれていましたが、相続人以外の親族が「4人が相続の放棄をして1人だけが相続するほうが農地の登記がスムーズに済む」という誤ったアドバイスを行い、それを信じた相続人は5人のうち4人が相続を放棄してしまいました。相続人の意図はあくまでも農地の相続登記を支障なく済ませたいということであり、事実、その後、相続人5人で分割協議を行って各人の相続分を決定し、それぞれが財産を取得しています。このように、錯誤によって相続の放棄を行ってしまった場合でも、各相続人が取得した財産は、放棄を行わなかった相続人から贈与によって取得したことになってしまうのでしょうか。

A    民法919条の規定に基づいて有効に相続放棄の手続をした相続人は、はじめから相続人にならなかったものとみなされることになっています(民法939条)。
   したがって、相続を放棄した者は相続人ではありませんので、遺産分割協議に参加することはできません。このため、ご質問にある「相続人5人で遺産分割協議を」行ったことは、民法907条の規定に基づく遺産分割協議ではなく、相続人が、相続によって取得した財産を、相続を放棄した者に対して贈与等によって移転させることを協議したものと考えざるを得ないことになります。
   この結果、ご質問の場合には、相続を放棄しなかった相続人に対しては相続税が課税され、相続を放棄した者に対して相続財産を移転させた場合には、贈与税が課税されることになります。
   民法には、915条2項に相続放棄の取消しの規定があり、この規定によって相続の放棄が取り消された場合には、相続人5人による分割協議を行うことができますが、最高裁判所の判決では、一度受理された相続放棄の撤回は許されないとされています(昭和37年5月29日判決)。このため、たとえ家庭裁判所に相続法放棄の撤回を申し出たとしても、認められる可能性はほとんどないといえます。
                       (税理士懇話会・資産税研究会事例より)

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