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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

親族間での非上場株式の売買 (12.5/1更新)
Q    同族会社であるA社は、代表取締役であった甲が発行済株式の100%を所有しています。この度、甲は代表取締役を退任し、代わって甲の長男である乙が代表取締役に就任することになりました。これに伴って、甲は所有株式の全部を乙に譲渡することを検討しています。この場合の譲渡価額は、相続税の原則的評価方式で算定した金額となるものと思いますが、その場合には、土地や上場株式を時価に置き換え、評価差額に対する法人税等相当額を控除しない金額とするのが相当なのでしょうか。

A    個人と個人との間の譲渡においては、低額譲渡によるみなし譲渡課税の適用はありません。従って、譲渡する者については、当事者間で決定した価額によって譲渡すれば、その金額を基にして譲渡にかかる所得税が課税されることになります。
   これに対して、買受人については、著しく低い額で財産を譲受けた場合には、時価との差額については贈与とみなされて贈与税が課税されることになっています(相続税法7条)。そして、この場合の「時価」とは、相続税評価額をいうこととされておりますので、相続税の原則的評価額で評価した金額以上で譲渡されていれば贈与税の課税はないことになります。これは、親子間など親族間での売買であっても同様です。
   従って、土地や上場株式を時価に置き換えるとか、評価差額に対する法人税等相当額を控除しないなどの調整は必要ありません。
   非上場株式の価額にこのような調整が行われるのは、個人が法人に対して資産を時価の2分の1未満の対価で譲渡した場合に低額譲渡としてみなし譲渡課税が適用される場合です(所得税法59条)。この場合の時価の算定し際しては、土地等を取引時価に置き換え、法人税等相当額等を控除しないなどの調整が行われます。
   ご照会のケースは、個人と個人の非上場株式の売買であり、所得税法上の低額譲渡の規定は適用されませんから、相続税の原則的評価方式によって算定された価額以上の金額で売買されていれば、譲渡者についてはその金額よって譲渡所得が計算されることになり、買受人に贈与税課税が行われることはありません。

                       (税理士懇話会・資産税研究会事例より)

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