ログアウト

【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

レクチャー”相続税実務への近道”

相続税実務では、税理士試験で学習した範囲では全てをカバーすることはできません。 民法、財産評価やその資料の収集など、実務をやって初めて気づくことも多いはず。 そこで、相続税法で学習した範囲でカバーしきれない部分をピックアップして、 その実務のポイントを先回りして解説いたします。
これから、本格的に相続案件を手掛けようとする税理士や事務所職員の方は必見です。

遺産分割(その1) (14.6/5更新)

1.受験と実務の違い
   受験において遺産分割は問題に示されていて受験者が考えるものではない。したがって、必要な知識ではない。一方、実務においても遺産分割は共同相続人が決めるものであり、税理士が決めるものではない。しかし、遺産分割の仕方によって相続税の特例規定や納付の特例制度などの適用に影響したり、二次相続における相続税額に影響したりする。すなわち、遺産分割は相続税と密接に関係しており、税理士としては相続税の側面から遺産分割についてアドバイスを求められることがある。

2.遺産分割の知識
(1)協議分割
 遺言書がない場合や遺言書があったとしてもその遺言書の内容に納得できない場合は、相続人の全員で協議をして遺産を分ける。これを遺産分割という。この協議分割の1つの目安になるのが相続分である。相続分は、あくまでも目安であるのでこの相続分にしたがわなくても問題はない(民法906、907)。 また、遺産分割に期限はない。いつまでに遺産分割協議を調わせなければならないということはないが、遺産分割が調うまでの間は相続人の共有財産となるので、あまり好ましい状態ではない。したがって、遺産分割はなるべく早く調えた方がよいだろう。相続税の申告が必要な場合は、相続税の申告期限である10ケ月を目途に行われているようである。

(2)協議分割ができない場合
 遺産分割の協議が相続人間でまとまらない場合は、家庭裁判所に申し立て、調停または審判で分割することになる(民法907A)。

(3)遺産分割協議書
 遺産分割協議が調った場合は、後のトラブルを防ぐためにもその内容を文書化しておくべきである。その文書に相続人全員が署名押印すれば遺産分割に合意したことになり遺産分割協議書が完成する。協議書には各人で自署し、実印で押印し、印鑑登録証明書を添付する。この遺産分割協議書は、被相続人名義の土地・建物を相続人に名義変更(相続登記する場合や、被相続人名義の預貯金を相続人に名義変更)するときなどに必要になる。したがって、遺産の中に不動産がある場合は、不動産登記簿謄本に記載のとおり正確に記載しなければならない。

3.実務の留意点
  遺産分割は相続人の全員で決めることであり、税理士はその当事者でないことを自覚しなければならない(出しゃばらないこと)。また、相続人間でも利害は一致するとは限らないので、特定の相続人に肩入れしていると誤解のないように注意が必要である。

資産税研究会(税理士懇話会)のご案内へ
≪≪ 前に戻る税務研究会ホームページ