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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

レクチャー”相続税実務への近道”

財産評価:土地(その1) (14.8/29更新)
1.受験と実務の違い
 受験において土地を評価するための情報は問題に示されていて受験者が情報を収集する必要はない。したがって、情報収集能力は必要ではない。一方、実務において土地を評価するための情報収集は、各種資料、現地調査、聞き取り調査などにより税理士がするものであり、このやり方を知らなければ評価することはできない大事な能力である。
 また、受験において土地の評価額は一つでなければならない。そのため土地の形状は四角が基本となり傾斜などはない。そうでしなければ答えは複数になるからである。しかし、実務において土地の評価額は一つとは限らない。そもそも四角い土地や平坦な土地はあまりない。土地の評価は、さまざまな個別事情を考慮して評価する必要があるため、評価する税理士によってその評価額が異なることがある。したがって、土地の評価は税理士の腕の見せ所である。


2.土地評価のための情報収集
土地を評価するためには、所在地番、地目、地積、所有者、路線価、固定資産税評価額、評価倍率、形状などを把握する必要がある。

(1)不動産登記簿謄本・登記事項証明書
不動産登記簿謄本・登記事項証明書は、不動産の所在、地番、地目、地積、所有権に関する事項、所有権以外の権利等が記載されている。法務局(登記所)で取得することができる。
(2)公図
公図は、土地の大まかな位置、形状等(間口距離や奥行距離など)を確認するために必要な書類である。法務局(登記所)で取得することができる。
(3)実測図(地積測量図)
実測図(地積測量図)は、土地の正確な形状等(間口距離や奥行距離など)を把握できる。この図面がある場合には公図ではなく実測図(地積測量図)を使う。依頼者が所有しているか、法務局(登記所)で取得することができる。
(4)路線価図・評価倍率表
路線価図の位置を特定するために、住宅地図や公図で位置の整合性をとり路線価を確認する。また、評価倍率は地域、地目ごとに定められている。
路線価図・評価倍率表は税務署や国税局で閲覧ができる。国税庁のホームページでも公開(例年7月初旬に公開)されている。
(5)固定資産税評価額
固定資産税評価額は、固定資産税や都市計画税などの課税の基礎となる評価額である。納税者に送られてくる固定資産税の納税通知書や市役所等で取得できる固定資産税評価証明書で把握できる。


3.土地の評価方法
(1)評価の原則
相続税法第22条に「・・・財産取得の時にける時価により・・・」とされている。評価額を「時価」とすると@売買実例価額を把握する、A不動産鑑定士に鑑定評価を依頼するなど実務が大変困難なことになる。そこで、評価の画一性・迅速性・簡便性などを考慮し、財産評価基本通達において路線価方式と倍率方式が定められている。
(2)路線価方式
路線価(1u当たりの金額)に各種補正率等(奥行価格補正率、側方路線影響加算率、二方路線影響加算率、間口狭小補正率、奥行長大補正率、不整形地補正率など)と地積を乗じて評価額を算定する。 評価額=路線価×各種補正率等×地積
(3)倍率方式
固定資産評価額に評価倍率を乗じて評価額を算定する。
評価額=固定資産税評価額×評価倍率


4.実務の留意点
 相続財産の中に土地の占める割合は約50%である。その土地の評価額を誤ると相続税額に与える影響は大きい。評価額を高く誤ると納税者に高い税金を負担させることになり、税理士の責任問題になる可能性がある。一方、評価額を低く誤り税務署に指摘されると修正申告が必要になり、追加で相続税のみならず加算税や延滞税を負担することになり、これも税理士の責任問題になる可能性がある。
 また、実務においては財産評価基本通達により評価するのが基本となるが、財産評価基本通達がすべてに対応できるものではないため、相続税法第22条「時価」を検討すべき土地もあることを認識する必要がある。
 いずれにしても、土地は重要度の高い財産であるため正確な評価知識が求められる。


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