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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

レクチャー”相続税実務への近道”

財産評価:取引相場のない株式等(その1) (14.11/4更新)
1.受験と実務の違い
 受験において取引相場のない株式等を評価するための情報は問題に示されていて受験者が情報を収集する必要はない。したがって、情報収集能力は必要ではない。一方、実務において取引相場のない株式等を評価するための情報収集は、各種資料、聞き取り調査などにより税理士がするものであり、このやり方を知らなければ評価することはできない大事な能力である。

2.取引相場のない株式等を評価するための情報収集
取引相場のない株式等を評価するためには、株主構成、業種目、売上高、総資産価額、従業員数、課税所得金額、配当状況、所有資産の詳細などを把握する必要がある。
(1)法人の登記簿謄本、登記事項証明書
 会社名、本店所在地、設立年月日、事業内容(目的)、発行済株式の総数並びに種類及び数、資本金の額、役員などの基礎データが確認できる。
(2)課税時期前3期分の決算報告書・勘定科目内訳書
 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)を算定するために必要な資産と負債を把握できる。また、勘定科目内訳書には資産と負債に関する内訳詳細が記載されているので評価をするための資料として確認できる。
(3)所有資産の評価資料
 @ 土地:不動産登記簿謄本・登記事項証明書、公図、実測図(地積測量図)、路線価図・  評価倍率表、固定資産税の納税通知書など
 A 建物:不動産登記簿謄本・登記事項証明書、固定資産税の納税通知書など
 B 上場株式:残高証明書、株価など
(4)課税時期前3期分の税務申告書
 類似業種比準価額を算定するために必要な年配当金額、年利益金額、簿価純資産価額などを把握できる。
(5)類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等
 類似業種比準価額を算定するために必要な類似業種の株価、年配当金額、年利益金額、簿価純資産価額を把握できる。国税庁のホームページで公開されている。
(6)株主名簿・法人税申告書別表2
 株主構成を把握できる。ただし、名義上の株主の存在を確認しなければならない。

3.取引相場のない株式等の評価方法
(1)評価の概要
 上場企業に匹敵する会社もあれば個人商店に近い会社もあり、幅広い会社の株式を評価するのが取引相場のない株式等の評価方法である。一つの評価方法を定めただけでは適切な株価の算定ができないため、幾つかの判定をしてその会社に見合った評価方式を採用する。このように判定を経て評価をするため、その過程で誤りがあれば正しい評価はできないことになる。また、実務では評価明細書(第1表の1から第8表まで全9表)を作成して財産評価するのであり、その作成方法も難易度の高い財産評価である。
(2)評価の流れ
@ 株主の判定
 一定数の議決権を持つ同族株主は会社の業績や財産を考慮して評価する原則的評価方式を採用し、少数の議決権しかないその他の株主は配当実績を考慮して評価する特例的評価方式を採用する。
A 会社規模の判定
売上高、総資産価額、従業員数により会社規模を分けて、類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式により評価する。
B 特定会社の判定
会社資産に占める土地等や株式等の割合が高い会社(土地保有特定会社や株式保有特定会社)や開業後3年未満の会社、休業中の会社などは原則として純資産価額により評価する。
C 評価方式
会社資産に占める土地等や株式等の割合が高い会社(土地保有特定会社や株式保有特定会社)や開業後3年未満の会社、休業中の会社などは原則として純資産価額により評価する。


4.実務の留意点
 税理士事務所の顧問先企業のオーナー社長の相続事案は相続税の申告を必要とするケースが多く、その中心となる財産が取引相場のない株式等である。取引相場のない株式等を正しく評価し適正な相続税申告ができれば、相続人である後継者との信頼関係を築けることになる。しかし、この財産評価を誤ると相続税額に与える影響は大きく、それが相続人である後継者との信頼関係に影響をきたし、最悪は顧問契約の解消といったことになる可能性もある。
 このように相続税申告だけでなく顧問契約にも関係する大変重要な財産評価である。



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