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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

レクチャー”相続税実務への近道”

財産評価:取引相場のない株式等(その2) (14.12/1更新)
1.株主の判定
 その株主が原則的評価方式又は特例的評価方式のどちらで評価をするか判定するには、その評価会社の同族株主や中心的な同族株主などを把握しなければならない。
 同族株主とは、株主の1人及びその同族関係者(法人税法施行令第4条((同族関係者の範囲))に規定する特殊の関係のある個人又は法人をいう。)の有する議決権で判定する。また、中心的な同族株主とは、同族株主の1人並びにその株主の配偶者、直系血族、兄弟姉妹及び1親等の姻族(これらの者の同族関係者である会社を含む。)の有する議決権で判定する。
 ようするに、株主の判定をするためには株主の親族関係を把握しなければならない。株主名簿を見ても親族関係が示されているわけではないので、依頼主である相続人や会社の人事部又は総務部などに確認して親族関係を把握し評価方式の判定をする。

2.会社規模の判定
 会社規模により類似業種比準方式、純資産価額方式、それらの併用方式で評価するか決まる。その会社規模の判定でポイントとなるのが従業員数である。
 従業員数とは、次の算式により計算した人数である。

 税理士事務所では顧問先企業の従業員の人数を把握していないケースが多いので、会社の人事部や総務部などに確認して把握し会社規模の判定をする。

3.純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)
 純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)は、次の算式により計算した金額である。
 
 相続税評価額による資産の合計額は、課税時期における評価会社の各資産を財産評価基本通達の定めによって評価した価額の合計額による。
 帳簿に資産として計上されていないものであっても、相続税法上の課税財産に該当するもの、たとえば、無償で取得した借地権、特許権や営業権等がある場合には、これらを財産評価基本通達の定めるところにより評価する。
 一方、前払費用や繰延資産等で財産性のないものについては、たとえ帳簿価額があるものであっても評価の対象にしない。
 一つの例示として中小企業で多いのが社長に生命保険をかけているケースである。この場合に評価会社が受け取った生命保険金はどのように評価に反映するのであろうか。
 生命保険金請求権として資産(相続税評価額及び帳簿価額)に計上する。保険積立金など保険料が資産の部に計上されている場合はこれを除外する。
 また、この生命保険金から死亡退職金等を支払う場合は、負債に退職金等を計上し、死亡退職金等を控除した後の保険差益について課される法人税等も負債に計上する。
保険差益に係る法人税等=(生命保険金−保険積立金−死亡退職金等)×40%
※ 欠損法人の場合には、保険差益から欠損金を控除して法人税等を計算する。

 これらのように、評価会社の貸借対照表のみを見ていても株式の評価ができるわけではない。各資産や各負債の内容を把握し、それらを評価するための資料を収集して財産評価し株式の評価に反映する。したがって、会社の所有資産や負担する負債が多いほど作業量は増えミスをする可能性も高くなるので注意をしなければならない。

4.実務の留意点
 税理士事務所が顧問先企業の全てを把握しているわけではない。まして顧問先企業ではない事案であると何も把握していないところからのスタートである。
 会社の資料だけでは把握できないこともあるので相続人や会社関係者に聞き取り調査をしたり、会社の決算報告書などを見て追加で資料を収集したりして、評価するための情報を得て株式の評価をする。それを相続開始後10ヶ月以内に行うので相続人や会社関係者との信頼関係は重要となる。


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