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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

レクチャー”相続税実務への近道”

小規模宅地等の減額特例(その2) (15.1/28更新)
1.限度面積要件
 小規模宅地等の減額特例(その1)に記載したとおり選択特例対象宅地等には限度面積がある。さらに選択特例対象宅地等が特例事業用等宅地等(特定事業用宅地等又は特定同族会社事業用宅地等)、特定居住用宅地等又は貸付事業用宅地等のうちいずれか2以上に該当する場合の限度面積は次のとおりとなる。
    (1)特例事業用等宅地等及び特定居住用宅地等 特定事業用等宅地等400uと特定居住用宅地等330uのそれぞれを限度面積まで適用し、最大730uまで適用できる(完全併用)。
     (2)貸付事業用宅地等及びそれ以外の宅地等 貸付事業用宅地等がある場合の併用調整計算は次のとおりである。


<実務の留意点>
選択特例対象宅地等には限度面積があり、すべての宅地等に適用できるわけではない。したがって、納税者からは減額が最も大きくなる宅地等で適用することの依頼が多くなる。
納税者不利な適用とならないよう注意が必要である。

2.特例対象宅地等の分割要件
相続税の申告期限までに分割されていないもの(未分割宅地等)については、原則として特例の適用はない。この場合は相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出する。
ただし、相続税の申告期限までに分割されなかった宅地等が、次のいずれかに該当することとなったときには特例の適用がある。
    ・申告期限から3年以内に分割された場合
    ・申告期限から3年以内に分割されなかったことにつき、相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の一定のやむを得ない事情があるときには、納税地の税務署長の承認を受けその宅地等の分割ができることとなった日として定められた一定の日の翌日から4か月以内に分割されたとき(この場合は申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出する必要がる。)

<実務の留意点>
納税者には早めに分割要件があることを説明した方が良いと思う。
また、未分割の事案では相続税の申告期限から3年ほど時間が経過してからの手続きのため「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」の提出を失念しないよう注意が必要である。

3.特例適用についての同意
 特例対象宅地等を取得した個人が2人以上いる場合には、特例対象宅地等を取得したすべての者のこの選択についての同意が必要となる。その同意を証する書類が小規模宅地等、特定計画山林又は特定事業用資産についての計算明細書(第11・11の2表の付表1)である。
<実務の留意点>
納税者全員の利害が一致しているとは限らない。例えば、長男が取得した宅地等で限度面積まで特例を適用することが全体の相続税の負担としては有利であるとしても、他の納税者は特例を適用できない。すなわち納税者個人で見た場合に、長男の相続税は大きく減額されるが他の納税者の相続税の減額は少ない。 このような事実を説明し理解の上、同意を取り付けることとなるので、後でトラブルとならないように十分に説明をする必要がある。

4.具体的事例
    (1)二世帯住宅
    一棟の二世帯住宅で構造上の区分のあるものについて、被相続人及びその親族が各独立部分に居住していた場合には、その親族が相続又は遺贈により取得したその敷地の用に供されていた宅地等のうち、被相続人及びその親族が居住していた部分に対応する部分を特例の対象とする。
    完全分離型の二世帯住宅でも、被相続人だけでなく親族が居住していた部分に対応する敷地部分も特例の対象となるが、その二世帯住宅が区分所有登記されている建物である場合には、被相続人の居住の用に供されていた部分のみが特例の対象となる。
    <実務の留意点>
    建物の構造や登記の内容で特例の適用が変わるため、被相続人や取得者の利用状況、建物内部で行き来できる構造なのか完全分離型か、また、共有登記なのか区分所有登記かなどを確認する必要がある。

    (2)老人ホームに入居している場合
    老人ホームに入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋に敷地の用に供されていた宅地等は、次の要件が満たされる場合に限り、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして特例を適用する。
    @ 被相続人に介護が必要なため入所したものであること
    A その家屋が貸付け等の用途に供されていないこと
    <実務の留意点>
    被相続人が要介護認定等を受けていたかどうかは、相続の開始の直前において認定を受けていたかにより判定する。
    市町村役場に要介護認定等の申請をした後に相続が発生し、相続後に認定が下りた場合でも特例の適用対象になるとの税務情報誌(週刊税務通信 NO.3313 平成26年6月2日)の記事がある。すなわち認定は相続開始直前に下りていない場合でも適用できるということである。このような情報にも注意したい。


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