ログアウト

【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

レクチャー”相続税実務への近道”

延納制度 (15.5/7更新)
1.受験と実務の違い
 受験において延納制度は、分納税額や利子税を計算する問題又は法令上の規定を記述する理論問題で出題されると思われる。すなわち延納が決まっている計算又は暗記した法令の記述を坦々とこなすことになる。
 一方、実務において延納制度は、住宅ローン等を組むのと同様に返済できるか、ようするに分納税額及び利子税を納めることができるのか検討しなければならない。また、延納は納税の特例であり税務署長に延納の許可を得るための手続きを行わなければならない。そのポイントの一つは納税の原則である金銭一時納付を困難とする理由が必要である。もう一つは担保を提供しなければならないことがある。

2.延納の要件<金銭一時納付が困難であること>
 延納申請書に「金銭納付を困難とする理由書」を添付する。この理由書は、「納税者固有の現金・預貯金その他換価の容易な財産の金額」「生活費の金額」「配偶者その他の親族の収入金額」「事業経費の金額」「おおむね1年以内に見込まれる臨時的な収入・支出の金額」を記載することになる。また、記載した金額の根拠として、前年の確定申告書(写)・収支内訳書(写)、前年の源泉徴収票(写)、その他必要な書面等を添付することとなる。
 ようするに、この理由書によって納税の原則である納期限までに金銭一時納付をすることができないことを説明しなければならない。

3.延納の要件<担保を提供すること>
 延納許可の要件として担保を提供すること。ただし、延納税額が100万円以下(平成27年3月31日以前に提出する申請書により延納の許可を受ける場合は50万円未満)で、かつ、延納期間が3年以下の場合は不要である。
 延納申請者は、延納申請期限までに必要な事項を記載した延納申請書に延納の手続に必要な書類(担保提供関係書類)として担保財産の種類に応じ登記事項証明書、固定資産税評価証明書、抵当権設定登記承諾書等を添付して提出しなければならない
 このように延納手続に必要な書類が法令で明確化され、これらの書類を原則として延納申請時に提出することが定められている。

<主な担保提供関係書類>
土地
□登記事項証明書
□固定資産税評価証明書※1
□抵当権設定登記承諾書※2
□印鑑証明書※2
【担保にできない財産】
譲渡について制限のある土地
【担保の提供手続及び解除手続】
抵当権の設定及び抹消の手続は税務署で行います。

※1 担保の提供に係る相続税(贈与税)の課税価格計算の基礎となった財産を担保提供しようとする場合を除きます。
※2 各種確約書(申請書別紙)に基づき税務署長から提出を求められた場合に速やかに提出してください。

建物
□登記事項証明書
□固定資産税評価証明書※1
□抵当権設定登記承諾書※2
□印鑑証明書※2
□裏書承認等のある保険証券等
【担保にできない財産】
(1)火災保険に加入していない建物
(2)違法建築又は土地の違法利用のため、建物除去命令等がされているもの
(3)法令上担保権の設定又は処分が禁止されているもの
(4)借地上の建物で担保物処分の際に、借地権の譲渡についてあらかじめ地主の同意が得られないもの
【担保の提供手続】
1.保険金請求権に対する質権設定(※詳しくは保険会社でご確認ください。)
@ 保険会社等所定の質権設定承認請求書を税務署に提出し、税務署長の記名なつ印を受け、これに保険証券又は、継続保険の契約証書を添えて保険会社に提出します。
A 保険会社から質権設定の裏書をした保険証券、継続保険の契約証書又は質権設定承諾書の交付を受けます。
B 上記の質権の設定に関す書類に公証人役場等で確定日付を受け、税務署に提出してください。
C 提出を受けた保険証券の内容を確認し、保険証券をコピーした上で、保険証券はその場でお返しします。
2.抵当権の設定の手続は税務署で行います。

【担保の解除手続】
1.税務署から『質権消滅通知書』をお受け取りください。
2.質権消滅承認請求書(保険会社に請求してください。)に必要事項を記載し、質権設定 の際に使用した印を押なつした上、保険証券等に質権消滅通知書を添えて、保険会社に提出し、保険金請求権の質権の抹消登録を受けます。
3.抵当権の抹消の手続は税務署で行います。

※1 担保の提供に係る相続税(贈与税)の課税価格計算の基礎となった財産を担保提供しようとする場合を除きます。
※2 各種確約書(申請書別紙)に基づき税務署長から提出を求められた場合に速やかに提出してください。
(「相続税・贈与税の延納の手引」より)
4.実務の留意点
 相続税の納税を納期限までに金銭で一時に納付できないと思われる事案(相続税>金融資産)については、早めに納税方法の検討をした方が良いと思う。
 そして延納の手続きを進めるに当たっては、延納申請書や各種添付書類の作成、また、担保提供関係書類の準備や提出を税理士が行うことになると思われる。税務署長に延納の許可が得られるよう、納税者の協力を得ながら着実に手続きを行うことが大事である。


資産税研究会(税理士懇話会)のご案内へ
≪≪ 前に戻る税務研究会ホームページ