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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

レクチャー”相続税実務への近道”

物納制度(その1) (15.5/27更新)
1.受験と実務の違い
 受験において物納制度は、法令上の規定を記述する理論問題で出題されると思われる。すなわち暗記した法令の記述を坦々とこなすことになる。
 一方、実務において物納制度は物納財産を税務署に引き取ってもらえるのか、ようするにその財産で納税できるのか検討しなければならない。また、物納は納税の特例であり税務署長に物納の許可を得るための手続きを行わなければならない。そのポイントの一つは納税の原則である金銭一時納付を困難とする理由が必要である。もう一つは手続きの迅速化である。

2.物納の手続き
 (1)相続税の納期限または納付すべき日までに、物納財産の種類に応じた物納手続関係書類を物納申請書とあわせて提出する〔図表〕。
〔図表〕物納手続関係書類の例示
@ 更地の場合
    所在図(住宅地図)、公図の写し、登記事項証明書、地積測量図、境界確認書・道路明示証、土地の維持管理に要する費用の明細書、所有権移転に必要な書類(所有権移転登記承諾書、付記原因証明情報、印鑑証明書)を提出する旨の申出書
    ※なお、土地の状況によっては、以下の書類も必要になる。
    越境物の撤去等を約する旨の確認書、隣地を通行することを承諾した書類、電柱等に係る土地使用承諾書の写し、仮換地指定通知書の写し
A 有価証券の場合
    要請により有価証券届出書を提出する旨の確約書等

(2)上記書類に不備があった場合や提出がなかった場合、税務署長は必要書類の訂正や提出を申請者に請求できる。この場合、請求後20日以内に必要書類の訂正又は提出がされなかった場合は、その物納申請は取り下げたものとみなされる。
(3)税務署長は、廃材の撤去等物納財産を収納するために最低限必要な措置を講ずることを申請者に請求することができる。期限は1年以内で定められる。期限内にその措置がされなかった場合は、その物納申請は取り下げたものとみなされる。
(4)物納財産が多数あること等により、物納手続関係書類の準備や収納必要措置に時間を要する場合、申請者の届出により、上記(1)から(3)の期限を延長することができる。延長期間はそれぞれ一度の届出につき3ヶ月までとされ、期間満了時には再届出により延長する。ただし、最長でも当初の期限から1年までとなっている。
(5)税務署長は、必要に応じて一定の条件付で物納を許可することができる。一定の条件とは、後日において汚染地であったことが判明した場合に必要な措置を講ずること等で、条件に違反した場合は物納の許可を取り消すことができる。ただし、条件違反による取消しは、5年以内に限ることとされている。
<実務上の留意点>
 この手続きの流れを把握し迅速に対応しないと、物納申請から税務署長の許可までに時間がかかることになる。すなわち、後述する利子税を負担することになるので注意が必要である。

3.物納申請の却下に係る再申請
 物納申請にかかる財産が管理処分不適格財産又は物納劣後財産で他に物納適格財産があるときは、税務署長はその物納申請を却下する。この場合、物納申請者はその却下の翌日からから起算して20日以内に再申請ができる。ただし再申請は1度だけに限られる。
<実務上の留意点>
 このとおり再申請(やり直し)は1回だけである。したがって、物納許可の得られる財産の選定が大事である。

4.物納に係る利子税
 物納申請した場合は、納期限または納付すべき日の翌日から納付があったものとされる日までの期間について利子税の納付が必要になる。ただし、審査事務に要する期間は利子税が免除される。

5.実務の留意点
 相続税の納税を納期限までに金銭で納付できないと思われる事案(相続税>金融資産+その後の収入金額)については、早めに物納又は資産の売却の検討をした方が良いと思う。
 そして物納の手続きを進めるに当たっては、物納申請書や各種添付書類の作成、また、物納手続き関係書類の準備や提出を税理士が行うことになると思われる。税務署長に物納の許可が得られるよう、納税者の協力を得ながら着実に手続きを行うことが大事である。


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