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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

レクチャー”相続税実務への近道”

物納制度(その2) (15.6/30更新)
1.物納財産
(1)物納財産の順位
 物納に充てることができる財産とは、納税義務者の課税価格計算の基礎となった財産(その財産により取得した財産を含み、相続時精算課税の適用を受ける財産を除く。)で日本国内にあるもののうち図表に掲げるもの(管理処分不適格財産を除く。)となっている。
<図表 物納できる財産の種類・順位>
第一順位 @ 国債、地方債、不動産、船舶
A 不動産のうち物納劣後財産に該当するもの
第二順位 B 社債、株式、証券投資信託又は貸付信託の受益証券
C 株式のうち物納劣後財産に該当するもの
第三順位 D 動産
(注)「美術品の美術館における公開の促進に関する法律」に定める登録美術品のうち、その相続開始時において既に同法の登録を受けているものについては、図表の順位にかかわらず物納することができる。

(2)管理処分不適格財産
 上記(1)のとおり相続税法において物納できる財産から管理処分不適格財産が除かれている。そして、その管理処分不適格財産の範囲は相続税法施行令第18条及び同施行規則第21条において詳細が定められている。
<管理処分不適格財産の例示>
担保権が設定されていることその他これに準ずる事情がある不動産 @ 抵当権の目的となっている不動産
A 譲渡により担保の目的となっている不動産
B 差押さえがされている不動産
C 買戻しの特約が付されている不動産
D 上記@〜Cに掲げる不動産以外の不動産で、その処分が制限されているもの
権利の帰属について争いがある不動産 @ 所有権の存否又は帰属について争いがある不動産
A 地上権、永小作権、賃借権その他の所有権以外の使用及び収益を目的とする権利の存否又は帰属について争いがある不動産


(3)物納劣後財産
 物納できる財産(管理処分不適格財産以外の財産)のうち、物納劣後財産に該当しないもので物納申請の際に適当な価額のものがない場合に限り、物納に充てることができる。その物納劣後財産の範囲は相続税法施行令第19条において詳細が定められている。
 したがって、物納申請を検討している財産が物納劣後財産の場合には、その相続人に物納に適した財産が他になければ物納が認められることになる。
<物納劣後財産の例示>
地上権、永小作権若しくは耕作を目的とする賃借権、地役権又は入会権が設定されている土地
法令の規定に違反して建築された建物及びその敷地

(4)実務上の留意点
 前回で述べたとおり物納手続き上、再申請(やり直し)は1回だけである。したがって、物納財産の順位や管理処分不適格財産並びに物納劣後財産を把握し、物納許可の得られる財産の選定を検討することが大事である。

2.売却
 (1)物納と売却どちらが有利?
 相続税を納税するに当たり物納を検討する場合には、資産の売却も同時に検討することがある。いずれにしても資産を手放すことになるのだが、納税をするに当たりどちらが有利か検討しなければならない。その比較は、@物納する場合は物納財産の収納価額(相続税評価額)が納付税額となる。A売却する場合は売却価額から売却諸費用(仲介手数料など)と譲渡所得税・住民税を差し引いた売却による手取金額が相続税を納付できる財源となる。いずれか金額の多い方を選択した方が有利になる。


(2)実務上の留意点
 物納申請財産を売却する場合には物納申請を取り下げなければならない。そして法定納期限の翌日から相続税の完納の日までの期間については延滞税を負担することになるので、そのことも考慮して比較検討する必要がある。

3.実務の留意点
 相続税申告の実務の中で物納を検討する事案は、相続税が高額になるケースが多く税理士としてはその分リスクも大きい。
 売却も検討する事案では不動産業者との連携も必要になる。納期限を過ぎれば物納は利子税、売却は延滞税を負担することになる。すなわち時間がかかった分だけ納税者の負担が増えることになる。
 迅速に手続きを進めるに当たっては納税者と税理士と不動産業者が連絡を密にして事案に対応しなければならない。


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