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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

レクチャー”相続税実務への近道”

贈与税の留意点(その1) (15.8/3更新)
1.受験と実務の違い
 受験において贈与は、贈与税額を計算する問題又は法令上の規定を記述する理論問題で出題されると思われる。すなわち贈与を実行した場合いの計算又は暗記した法令の記述を坦々とこなすことになる。
 一方、実務において贈与は相続(相続税)対策で行うケースが多い。ようするに贈与を行う前に対策としてのメリット・デメリットを説明し、顧客の理解と同意を得たうえで実行する。その事前説明(提案)が重要である 。

<贈与の留意点>
2.売却
 相続税の申告の際に、子供や配偶者名義の預金が、亡くなった父親(夫)のものではないかとトラブルになることがある。つまり、子供名義の預金でも、それが以前に父親から贈与されたものなのか、それとも単なる子供の名義を借りただけのものなのかということである。単なる名義を借りただけということであれば、その子供名義の預金は亡くなった父親のものとして相続税の対象となる。
 贈与とは他人に無償で財産を与える契約で、贈与する者(贈与者)と贈与を受ける者(受贈者)の合意が必要である。贈与した際に、預金通帳も印鑑も父親がもっているというのでは贈与したことにはならないため、贈与契約書などを作成して父親の口座から子供の口座へ贈与する金額を振り込み、通帳も印鑑も子供が管理し、なるべく110万円を超える贈与をして贈与税の申告を税務署に提出しておくことも検討した方がよい。

3.その都度贈与か定期贈与(連年贈与)か?
 「現金1,100万円を10年に分けて贈与する」のと「1年目110万円を贈与、2年目110万円を贈与、3年目110万円を贈与・・・10年たったら1,100万円贈与していた」というのとは話が違う。つまり前者のケースでは、「最初の年に1,100万円の贈与があった」すなわち定期贈与(連年贈与)と認定され高い贈与税を納めることになる。贈与することが、その年に決まった(その都度贈与)ということが説明できるように、毎年贈与契約書などを作成する、毎年贈与の時期をずらす、金額を変える、贈与する物を変えるなどしておくと無用のトラブルを避けられる。

4.不動産の名義と不動産購入資金
 住宅新築資金を父親が負担したのに、子供の名前で登記した場合や、子供名義で登記された家屋に父親が増改築をしたような場合には、贈与とされて贈与税が課税される。
 また、マイホームの購入資金に充てるために、子供が父親からお金を借りた際、「あるとき払いの催促なし」や「出世払い」にしたというような場合は贈与とみられる。親子間でも金銭消費貸借契約書を取り交わし、きちんと毎月返済し、返済を銀行振込みにするなどしておくと無用のトラブルを避けられる。

5.相続税との関係
 暦年課税贈与で相続開始前3年以内に行われた贈与は相続税の対象となる。

6.土地の貸借
 親子間で土地の貸し借りをする場合に、通常は権利金を支払う地域で権利金のやり取りがなくても、地代が無償または固定資産税相当額以下(使用貸借の場合)の場合は贈与とはされない。しかし、権利金を支払わずに、通常の地代を支払っていると、借地権が贈与されたとみなし贈与税が課税される。

7.実務の留意点
 贈与は相続(相続税)対策のなかでは比較的に簡単に実行できる対策である。簡単であるが故に実行の際には注意が必要である。上記に示した注意点などを踏まえて、思わぬ課税がされないように実行することが重要である。


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