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(16.1/6更新) |
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1.受験と実務の違い 受験において「住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税措置」の特例は、贈与税額を計算する問題若しくは相続税の課税財産として相続税を計算する問題又は法令上の規定を記述する理論問題で出題されると思われる。すなわち贈与を実行した場合いの計算又は暗記した法令の記述を坦々とこなすことになる。
一方、実務において贈与税の住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税措置は実行に当たっての適用要件の判定や活用する場合の留意点を顧客に説明し、顧客の理解と了解を得たうえで実行する。その事前説明(提案)と申告手続きが重要である。
2.制度の概要
直系尊属(父母や祖父母など)から住宅取得等資金の贈与を受けた受贈者が、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金を自己の居住用家屋の取得や一定の増改築等に充て、かつ、その家屋を同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日後遅滞なく自己の居住用に供することが確実であると見込まれるときには、住宅取得等資金のうち一定金額について贈与税が非課税とされる。
3.主な適用要件
住宅税制は適用要件が多く、その判定に留意する必要がある。適用要件の主なものは次のとおりである。
(1)非課税特例の対象となる受贈者
@ 贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること。
A 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。
(2)特例の対象となる住宅取得等資金
受贈者が自己の居住の用に供する一定の家屋を新築若しくは取得又は自己の居住の用に供している家屋の一定の増改築等の対価に充てるための金銭をいう。
@ その家屋の新築若しくは取得又は増改築等とともにするその家屋の敷地の用に供される土地や借地権などの取得も対象となる。
A 住宅用家屋の新築(住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の翌年3月15日までに行われたものに限る。)に先行して行われるその敷地の用に供される土地や借地権などの取得も対象となる。
(3)特例の対象となる「一定の家屋」と「一定の増改築等」
<一定の家屋>
@ 家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合は区分所有する部分の床面積)が50u以上240u以下であること。
A 購入する家屋が中古の場合の要件
・耐火建築物である家屋の場合は、その家屋の取得の日以前25年以内に建築されたものであること。
・耐火建築物以外の家屋の場合は、その家屋の取得の日以前20年以内に建築されたものであること。
・ただし、家屋が地震に対する安全性に係る基準に適合するとして、一定の「耐震基準適合証明書」又は「住宅性能評価書の写し」等により証明されたものは、建築年数の制限はない。
B 床面積の2分の1以上が専ら居住の用に供されること。
<一定の家屋>
@ 増改築等の工事に要した費用が100万円以上であること。なお、居住用部分の工事費が全体の工事費の2分の1以上でなければならない。
A 増改築等後の家屋の床面積の2分の1以上が専ら居住の用に供されること。
B 増改築等後の家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合は区分所有する部分の床面積)が50u以上240u以下であること。
4.非課税限度額
次の区分により受贈者1人につき贈与税の非課税限度額は次のとおりとなる。
(1)住宅用家屋の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 10%である場合
住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 |
右記以外 |
東日本大震災の被災者 |
良質な住宅用家屋 |
左記以外の住宅用家屋 |
良質な住宅用家屋 |
左記以外の住宅用家屋 |
平成28年10月〜 平成29年9月 |
3,000万円 |
2,500万円 |
3,000万円 |
2,500万円 |
平成29年10月〜 平成30年9月 |
1,500万円 |
1,000万円 |
1,500万円 |
1,000万円 |
平成30年10月〜 平成31年9月 |
1,200万円 |
700万円 |
(2)上記(1)以外の場合
住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 |
右記以外 |
東日本大震災の被災者 |
良質な住宅用家屋 |
左記以外の住宅用家屋 |
良質な住宅用家屋 |
左記以外の住宅用家屋 |
〜平成27年12月 |
1,500万円 |
1,000万円 |
1,500万円 |
1,000万円 |
平成28年1月〜 平成29年9月 |
1,200万円 |
700万円 |
平成29年10月〜 平成30年9月 |
1,000万円 |
500万円 |
平成30年10月〜 平成31年6月 |
800万円 |
300万円 |
(注)非課税限度額は、住宅取得等資金を贈与した日で決まるのではなく、住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間で決まる。
5.手続き
非課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1目から3月15日までの間に非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に計算明細書、戸籍の謄本、住民票の写し、登記事項証明書、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する。
添付書類も適用を受ける内容によって変わる。例えば、新築住宅又は中古住宅の違い、住宅の取得又は増改築の違い、良質な住宅用家屋又はその他の住宅用家屋の違いなどがある。添付書類にも留意する必要がある。
<実務の留意点>
この非課税の特例は、暦年課税でも相続時精算課税制度を選択していても適用が受けられる。暦年課税の場合には基礎控除額110万円と、相続時精算課税制度を選択した場合には特別控除額2,500万円と合算した金額の贈与税が非課税となる。
【例】平成27年に良質な住宅用家屋を取得した場合
@ 暦年課税の場合
1,500万円+110万円=1,610万円が非課税限度額
A 相続時精算課税を選択した場合
1,500万円+2,500万円=4,000万円が非課税限度額
(注)相続時精算課税を選択した場合、相続時に相続で取得したとみなされるのは2,500万円部分と
なる。
また、この特例を適用して贈与された住宅取得等資金は、相続税計算の際、相続開始前3年以内の贈与財産を加算する規定の対象外とされる。したがって、贈与税・相続税のどちらも課されない。
相続税対策として実行する場合は、祖父母から又は父母から、暦年課税又は相続時精算課税の選択など、い
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