ログアウト

【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

レクチャー”相続税実務への近道”

教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置 (16.2/29更新)
1.受験と実務の違い
 受験において「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の特例は、法令上の規定を記述する理論問題で出題されると思われる。実際に平成27年度(第65回)税理士試験で出題されている。
 一方、実務において教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、この制度を利用する信託銀行等の金融機関で口座を開設し、その非課税申告の手続きも金融機関を通じて行うことになる。すなわち、税理士の申告実務が伴わない非課税制度である。
 したがって、税理士は本制度の内容や活用に当たってのメリット・デメリットなどを顧客に説明する。相談対応が主な実務となる。

2.制度の概要
 受贈者(30歳未満の者に限る)の教育資金に充てるためにその直系尊属が金銭等を拠出し、金融機関に信託等をした場合には、信託受益権の価額又は拠出された金銭等の額のうち受贈者1人につき1,500万円(学校等以外の者に支払われる金銭については、500万円を限度)までの金額に相当する部分の価額については、平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に拠出されるものに限り、贈与税を課さないこととする。
(注)教育資金とは、文部科学大臣が定める次の金銭をいう。
 @ 学校等に支払われる入学金その他の金銭
 A 学校等以外の者に支払われる金銭のうち一定のもの

3.非課税申告
 受贈者は、本特例の適用を受けようとする旨等を記載した教育資金非課税申告書を金融機関を経由し、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

4.払出しの確認等
 受贈者は、払い出した金銭を教育資金の支払に充当したことを証する書類(領収書等)を金融機関に提出しなければならない。
 金融機関は、提出された書類により払い出された金銭が教育資金に充当されたことを確認し、その確認した金額を記録するとともに、その書類及び記録を教育資金を管理するための契約の終了の日の翌年3月15日後6年を経過する日まで保存しなければならない。

5.終了時(残額の取扱い)
(1)受贈者が30歳に達した場合
 非課税拠出額(金融機関に預けた金額)から教育資金支出額(教育資金の支払いに使った金額)を控除した残額については、受贈者が30歳に達した日に贈与があったものとして贈与税を課税する。
(2)受贈者が死亡した場合
 非課税拠出額(金融機関に預けた金額)から教育資金支出額(教育資金の支払いに使った金額)を控除した残額については、贈与税を課さない。

6.実務の留意点
 本制度の中で税理士の申告実務が伴うのは、終了時(受贈者が30歳に達した時など)の非課税拠出額(金融機関に預けた金額)から教育資金支出額(教育資金の支払いに使った金額)を控除した残額について贈与税申告を行うだけである。 しかし、本制度は顧客の相続対策(生前贈与対策)を検討する上で使える一つの選択肢である。また、教育資金の非課税規定には本制度の他に扶養義務者からの教育費の贈与(その都度贈与)もある。
 顧客に活用ニーズがある場合には、一括贈与とその都度贈与の両者を説明し活用を検討することが望まれる。

7.利用状況
 信託協会によると、平成27年9月末までの教育資金贈与信託の契約件数(累計)は141,655件、信託財産設定額(累計)は9,639億円になっている。1件当たりの信託財産設定額は単純平均で6,804,560円となる。



資産税研究会(税理士懇話会)のご案内へ
≪≪ 前に戻る税務研究会ホームページ