<1>概要
経営承継円滑化法の第三章は「支援措置」となっており、第12条から第15条までの4つの条文で構成されています。また、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則」(円滑化法省令)の第6条から第17条までが支援措置に関連した条文です。これらの支援措置の条項には、@金融支援措置の要件・手続等と、A事業承継税制のベースとなる要件・手続等の両方が規定されています。
<2>金融支援措置
先代経営者の死亡や退任に伴い、後継者が事業を承継する場合には、多額の資金需要が生ずることがあることから、金融支援措置が設けられています。
【要件】
金融支援措置を受けるためには、「経済産業大臣の認定」が前提となり、その認定を受けるためには、先代経営者の死亡又は退任に伴い、次のいずれかの事由が生じている必要があります。
@中小企業者又はその代表者(後継者)が、分散した自社株式や事業用資産等を取得したり、その中小企業に対する貸付金や未収入金の弁済をしたりする必要があること
A後継者が相続・遺贈・贈与により取得した自社株式や事業用資産等に係る多額の相続税・贈与税の納付が見込まれること
B先代経営者の死亡又は退任後の3か月間における売上高等が、前年同期の3か月間における売上高等の80%以下に減少すると見込まれること
Cその他所定の場合の他、会社の事業活動の継続に支障が生じていること
【特例制度】
金融支援措置は、具体的には、次の2つの特例制度をいいます。
@中小企業信用保険法の特例
認定を受けた中小企業者の事業に必要な新たな資金の借入れについて、通常の信用保証枠(普通保険2億円、無担保保険8千万円、特別小口保険1,250万円)と同額の特別枠を設けられ、金融機関からの資金調達が容易になっています。この特例の適用対象者は、中小企業である会社又は個人事業主であり、株式や事業用資産等の買取資金や信用状態の低下による運転資金として活用できます。
A株式会社日本政策金融公庫法等の特例
認定を受けた中小企業者(会社)の代表者個人が必要とする資金で、事業活動の継続に必要なものについて、融資を受けることができます。事業用資産を相続・受贈した場合の相続税・贈与税相当の納税資金や事業用資産を相続するために必要となった代償金等に活用されることが想定されます(従前の制度では、日本政策金融公庫等から後継者個人が融資を受けることができませんでした。)。また、金利は、通常の金利(基準金利)ではなく、特別に低い利率(特別利率)が適用されます。
【手続】
経済産業大臣の認定を受けるためには、経済産業大臣に「認定申請書」を提出する必要があります。なお、経済産業大臣の認定は、融資の実行を保証・確約するものではありません。融資に際しては、個別の審査があります。
<3>事業承継税制
平成21年度税制改正において相続税の納税猶予制度と贈与税の納税猶予制度が規定されます。これが新しい事業承継税制です。「所得税法等の一部を改正する法律案」(平成21年1月24日)をみると、租税特別措置法の該当条文(措法70条の7〜70条の7の4)に含まれる項数は73もありますので、これらの納税猶予制度の要件や手続等は、租税特別措置法と同施行令で詳細に規定されることが予想されます。したがって、現在、事業承継税制のベースとなる要件・手続等に関して規定している円滑化法省令の該当する条項が見直されることが考えられます。
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