A
該当条文(措置法70の7@)を要約し、説明を加え、適宜に読み替えると、次のようになります。
(1)条文の要約
贈与者(=先代経営者)が経営承継受贈者(=後継者)に認定贈与承継会社の非上場株式等(=自社株)の贈与をした場合において、その贈与が次の(3)@Aのいずれかに該当するときは、その経営承継受贈者のその贈与の日の属する年分の贈与税の申告書(期限内申告書に限ります。)の提出により納付すべきものの額のうち、「特例受贈非上場株式等」に係る納税猶予分の贈与税額に相当する贈与税については、担保を提供した場合に限り、その贈与者の死亡の日まで、その納税が猶予されます。
(2)特例受贈非上場株式等の意義
「特例受贈非上場株式等」とは、非上場株式等でその贈与税の申告書にこの項の規定の適用を受けようとする旨の記載があるもの(当該贈与の時における当該認定贈与承継会社の発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2に達するまでの部分として政令で定めるものに限ります。)をいいます。
(3)該当する贈与
以下、便宜上、認定贈与承継会社の非上場株式等の発行済株式総数を1,200株とします。
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贈与の直前の状態の判定式 |
納税猶予の適用を受けることができる場合 |
@ |
A≧Bの場合 |
先代経営者が後継者に下記Bの「残数」以上の贈与をした場合 |
A |
A<Bの場合 |
先代経営者が保有しているすべての自社株式を後継者に贈与をした場合 |
A:先代経営者が有していた自社株の数
B:「発行済株式総数の3分の2(=800株)」から「後継者が有していた自社株の数」を控除した「残数」(要するに、後継者が3分の2に達するために追加的に必要な株式数) |
(4) 具体例
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直前の状態と贈与株式数・判定式 |
贈与税の納税猶予の対象となる株式数 |
@ |
先代経営者(900株)は、後継者(200株)に
600株を贈与した。 |
●600株のすべてが納税猶予の対象となります。
●先代経営者は300株を保有し続けてもかまいません。 |
A:900株
B:800株−200株=600株
∴ A≧B |
A |
先代経営者(900株)は、後継者(200株)に全株式の900株を贈与した。 |
●600株(発行済株式総数の3分の2に達するまでの部分)が納税猶予の対象となります。
●300株については、贈与税の納税猶予の対象となりませんが、相続時精算課税制度の適用を受けることが可能です。 |
(判定式は@と同じ。) |
B |
先代経営者(500株)は、後継者(200株)に全株式の500株を贈与した。 |
●A<Bの場合は、先代経営者は後継者に全株を贈与しなければなりません。
●500株のすべてが納税猶予の対象となります。 |
A:500株
B:800株−200株=600株
∴ A<B |
(5)一括贈与の意味
上記(3)Aの場合は、先代経営者は後継者に保有する全株式を贈与する必要があります。しかし、(3)@の場合は、贈与後の後継者の保有株式が発行済株式総数の3分の2に達すれば足ります。「一括贈与」とは、「全部の贈与」ではなく、「一度に贈与」の意味です。 |