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「経済産業大臣の確認」の要件の説明は省略しますが、ハードル(要件の厳しさ・手続の煩雑さ)は相当に低いものとなっていますので、多くの中小企業が容易に行うことができます。
実務上のポイントは、相続税の納税猶予・贈与税の納税猶予の特例の適用を受ける可能性がある場合には、申請マニュアルを活用して、「経済産業大臣の確認」申請を直ちに行うことに尽きます。
〈1〉申請マニュアルの入手と利用
相続開始前・贈与前に行う「経済産業大臣の確認」であれ、相続開始後・贈与後に行う「経済産業大臣の認定」であれ、円滑化法施行規則(経済産業省令)に基づいて行うことになります。しかし、経済産業省令は、全体像を把握するまでは、必ずしも読みやすい規定ではありません。
そこで、実務上の利便性が高いものとして「中小企業経営承継円滑化法申請マニュアル」(中小企業庁財務課、平成21年2月16日改訂)をお勧めします。この申請マニュアルには、「経済産業大臣の確認」や「経済産業大臣の認定」などの大括りの手続ごとに、確認や認定を受けるための要件・個別の手続・理由などが詳細に記載されています。なお、経済産業省令は平成21年3月31日に全面改正されていますので(実質的な改正は一部です。)、申請マニュアルの利用にあたっては多少の留意が必要ですが、この申請マニュアルを利用すると円滑化法関連の手続のすべてを容易に行うことができます(現行の経済産業省令に即した改訂が近々に行われるものと思われます。)。申請マニュアルは、中小企業庁のホームページからダウンロードすることができます。
〈2〉確認申請の実行
相続税の納税猶予・贈与税の納税猶予の少なくともいずれかの特例の適用を受けることが予想(予定)される場合には、直ちに「経済産業大臣の確認」を受けるための申請を行うことが必須となります。
相続税の納税猶予・贈与税の納税猶予ともに、経済産業大臣から交付される「確認書」が、相続開始後・贈与後に行う「経済産業大臣の認定」申請のための添付書類となっていますので、「経済産業大臣の確認」を受けていることが「事業承継税制の適用ベースとなる経済産業大臣の認定要件」の前提条件といえます。
もっとも、次の場合については、「経済産業大臣の確認」を受けていなくとも「経済産業大臣の認定」を受けることができるとされています。
@ 被相続人(先代経営者)が60歳未満で死亡した場合 A平成20年10月1日から平成22年3月31日の間に発生した相続の場合 B計画的な事業承継に係る取組が実質的に行われていたと認められる一定の場合 |
しかし、これらはいずれも救済規定であり、積極的に活用するものではありません。先代経営者が60歳になった直後や平成22年4月に、突然に相続の開始があることも考えられます。したがって、新しい事業承継税制の適用が予想(予定)される場合には、早期に(例えば、平成21年中に)、「経済産業大臣の確認」を受けるための申請を行うことが推奨されます。
なお、この「経済産業大臣の確認」には有効期限はありませんし(「経済産業大臣の認定」には有効期限があります。)、「経済産業大臣の確認」を受けていても、「経済産業大臣の認定」申請を必ずしなければならない訳ではありません。
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