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「財務会計からはじめよ」 ~世界的大企業での経理財務変革の道のり~ (イベントレポート)

 2023年12月7日、ブラックライン株式会社は「財務会計からはじめよ~世界的大企業での経理財務変革の道のり~」と題して、オンラインセミナーを開催しました。登壇したのは、ブラックラインのソリューション責任者であり、過去にはジョンソン・エンド・ジョンソンに18年間在籍し、ファイナンス部門の責任者を務めたマイケル・ポラハ氏です。氏がジョンソン・エンド・ジョンソンで取り組んだ事例をもとに、経理財務変革の道のりについて、「組織改革」「業務プロセスの最適化」「IT活用」の3つの視点からお話しします。

経理・財務組織の現状と課題

マイケル・ポラハ(Michael Polaha)
マイケル・ポラハ(Michael Polaha)
BlackLine
SVP(シニア・バイス・プレジデント)、Finance Solutions&Technology

2021年10月、BlackLineにExecutive Management Teamとして入社。
前職では、ジョンソン・エンド・ジョンソンにて、グローバル全体でのデジタルファイナンストランスフォーメーションを推進。経理・財務組織の改革・業務変革の企画から実行までをリード。グローバル全体でのマスターデータマネジメントの推進、SAP Central Finance、BlackLine等の経理・財務ソリューションを積極的に活用した。
経理・財務プロセス、ガバナンス、組織設計、ITの選択・設計・展開に関する深い見識あり。
経理・財務組織の変革およびIT技術活用に関しての第一人者として講演も多数実施。
リーハイ大学卒業、現在南カリフォルニア在住。

 ビジネスモデルの進化・複雑化が進む現代において、企業に対してより複雑な報告や開示が求められています。それに伴い、経営陣から経理財務部門への要求事項も増加しています。また、経済環境においては、不確実性がますます高まっているにもかかわらず、企業は優れた顧客体験の提供や従業員体験(従業員満足・エンゲージメント)の向上が求められ、さらにはイノベーションの創出(テクノロジー)への期待も高まっています。

 今日、企業はより多くの価値創出が求められています。こうした状況に対応するため、有効な手段の一つとなるのが「革新的なITテクノロジーの活用」です。

 私はBlackLineが決算、売掛金、企業間取引の自動化やERPの最適化などに関して、多大な価値を提供することを目の当たりにしてきました。また、事業の計画や業績予測において、ビジネスで求められるもの、そして経営陣(CFO、CIO)が経理財務部門へ求めるものに対して、BlackLineの革新的なテクノロジーが有益な情報をもたらしていることは、今の市場で十分に示されております。

 とはいえ、現状の経理財務部門は手作業に頼る部分も多く、戦略的な業務が十分に行えていない状況にあります。企業の価値を向上させるため、経理財務部門はより戦略的な業務に従事すべきです。ところが、手作業の業務に時間をとられ経営陣が求める情報を提供しきれていないのが現実です。

 手作業の業務を自動化しなければ、経理・財務の業務に膨大な時間とコストが発生します。その結果、経理・財務部門は経営陣にとってビジネスパートナーであるべきという、本来の役割が全うできません。そして何よりも、優秀な人材確保・定着に悪影響を及ぼす恐れがあります。

 では、反復的な手作業に費やされる時間と労力を改善し、自動化するにあたり、解決すべき課題とは何でしょうか。一般的によくある課題と考察をまとめると次のような事項が挙げられます。

  • 複数のデータソースから発生する分散したデータ
  • 複雑で属人的、かつ個別最適なプロセス
  • 非効率な組織設計
  • 時代遅れの非効率なテクノロジー
  • 社内のリソースや専門知識の不足

変革時に考えるべき「優先順位」

 経営陣は経理・財務改革を最優先課題だと考えています。私たちの調査では、70%のCFOが経理・財務改革がなければ、競合他社に先を越されると感じていることが明らかになりました。そして、経理財務部門とIT部門の両リーダーにとっても、変革は重要課題であることに変わりはありません。

 変革を実現させるには、いかに業務を自動化しコストを抑えるか、加えて、手作業中心の業務を付加価値の高い業務へシフトできる人材を育成できるか、さらには業務をどのように最適化するか、これらの検討がますます重要になっています。

ジョンソン・エンド・ジョンソンでの経理財務変革(事例紹介)

事業の成長がもたらした課題

 先に、経理・財務部門が抱える課題について触れましたが、ジョンソン・エンド・ジョンソンでも同様の課題に直面していました。その中で、私がどのような変革に取り組み、課題を解決したかをお話しします。

 まずは、ジョンソン・エンド・ジョンソンについて簡単に紹介します。同社は、強固なビジネスモデルのもと、業績は順調に推移してきました。35年にわたり、配当及び調整後の1株あたり利益を増やし続け、貸借対照表はAAAに格付けされています。

 また、135年以上の歴史を持ち、私が変革にあたった当時、全世界で約15万人の従業員がいました。経理・財務部門には約6500人がおり、様々な地域、国、法人にまたがって事業を展開していました。

 課題を挙げると、M&Aによる事業の成長、あるいは既存事業の成長を進めてきた結果、最終的には非常に複雑なシステム構成を抱えることになってしまったという点です。変革をはじめる時点では、約65のERPシステム、55の異なるプランニングシステム、税務や資金管理等、様々な要素にまたがる非常に複雑な経理・財務システムの構成となっていました。結果、こうした複雑なシステムがデータを素早く有益な情報に変換することに悪影響を及ぼしていたのです。

 先ほど、私は一般的な経理・財務部門が抱える問題として、「複数のデータソースから発生する分散したデータ」「複雑で属人的、かつ個別最適な業務プロセス」「非効率な組織設計」といった事項を挙げましたが、ジョンソン・エンド・ジョンソンも同様の問題を抱えていました。

変革の全体像

 私たちは課題を解決するために、まずは全体像から整理し、何をすべきか、どのような組織になるべきかを明らかにしました。導いた答えが、まずは効率性を高めコストを削減するということ。その上で俊敏に適用できる経理財務部門となろうとしました。すなわち、ビジネスをサポートするために高速で動き、各市場やセグメントで起きていることをリアルタイムで理解し、最適な意思決定を行うことができるような組織になろうということです。そして、これらを実現するにはどうしたらよいか、熟慮を重ねました。

図表1

変革への取り組み、3本柱は「組織」「プロセス」「IT」

 私たちは熟慮の結果、課題解決にあたり次の3点について改革に取り組むことを決断しました。

①組織の改革
②業務プロセスの最適化
③ITの活用

図表2

 具体的な取り組み内容について紹介しましょう。

①組織の改革:具体的な取り組み・グローバルシェアードサービスの設立

 組織の改革については、部分的な組織改革ではなく、グローバル全体で改革に着手しました。そして、グローバルシェアードサービスセンター構想を打ち出し、データの集中化を図りました。具体的には、従来、日々の経理業務は垂直型で、地域ごとに処理していましたが、これらの業務を集約、標準化することで、グローバルシェアード体制を構築しました。

 当初は、限定した地域や限られた拠点でスタートしましたが、最終的にはグローバルなシェアードサービスのハブとしてマニラの拠点を立ち上げ、こちらに経理財務業務の多くを移管しました。

図表3

 重要なポイントは、財務会計と管理会計のうち、財務会計から変革を起こしたことです。冒頭で触れましたが、経理財務部門は管理会計を強化し、予算管理や予測計画の実行、さらには時代の変化に対応してタイムリーな洞察、提言が求められています。こうした要望に対応するには、実績値のデータを正しく取得することが必要です。良いデータがなければ、良い分析もできません。実現には、財務会計の強化からはじめることが必要です。言い方を変えれば、会計なくして財務なしということです。

図表4

②業務プロセスの最適化:具体的な取り組み・タイムリーに正確な実績値を提供

 業務プロセスについての従来からの問題は、全世界でデータが散在し、また、データの正確さも不明瞭だったため、多くの手作業、手戻りが発生するという悪循環に陥っていたことにあります。四半期ベースでの財務数値を確定し、実績値しか出ない、そのような状態だったのです。そこで、全世界のプロセスを標準化し、データをつなげたことで、世界全体での月次決算の実現が可能になりました。

 具体的には、「より頻繁にタイムリーに正確な実績値を」というビジョンを掲げました。従来は決算期に作業が集中する業務プロセスでしたが、継続的に決算業務を行うように変革しました。仕事を分散させ、四半期ごとの数値集計から日次で数値を追えるようにしました。

図表5

 こうした改革によって、経営陣が求める、戦略に関する提言や業績予測の支援が可能になりました。また、この改革を機に全世界で四半期から月次決算体制に移行しました。継続的に決算を行うという考えはとても重要です。

 変革を成功させたことで、私たちは決算時の事業間、部門間での調整業務を改善することができ、また、決算時の残業時間を削減、データの提供や集計に費やす手作業と時間を最小限に抑えることができるようにもなりました。

③ITの活用:具体的な取り組み・グローバルでのBlackLine導入

 私たちはシェアードサービスセンターを立ち上げ業務を行うようになりましたが、その中で浮上した一番の課題であり懸念事項がグループ会社間取引でした。ERPの数が多く、400~500以上の異なる法人が取引していたのですから無理はありません。中でも、手作業による仕訳入力は時間的な足かせとなり、大幅な残業を招き、業務を複雑にもしていました。

 こうした問題を解決するため、私たちはBlackLineを導入し、「勘定照合(勘定照合の標準化と自動化)」「仕訳の自動化」「タスク管理」「マッチング」を行いました。具体的な取り組みについて紹介しましょう。

図表6

勘定照合

 まずは貸借対照表の勘定照合からはじめました。その結果、貸借対照表を確実に管理できるようになりました。具体的には、照合プロセスを見える化し、可視性と透明性を確保しました。

 調査を行い、現状を把握した結果、四半期に多くの勘定照合を行っていることや、重大なリスクをもたらさない部分に業務の多くを費やしていることが判明しました。その改善にあたっては、自動認証のロジックやルール、ポリシーをどのように見直せば手作業を減らせるかを考えました。特に、コンプライアンスや外部報告に影響せずに労力を減らすために、内部監査や外部監査と協力して方針や手続きを考えたのち、BlackLineを導入し勘定照合に関する業務の標準化と自動化に取り組みました。

仕訳の自動化

 手仕訳をなくすことも大きな課題でした。そこで改めてBlackLineを用いて、なぜこれほど多くの手仕訳があるのかを診断しました。具体的には、仕訳の理由コードやその他のフラグ付けにより、なぜこのように件数が多いのか?そしてこれらが毎月、もしくは決算期に発生していることを把握できました。

 問題のある特定のプロセスを継続的に改善したことで、適切で、標準化されたワークフローを設定することができました。その後、BlackLineに何を取り込むことができるかを検討するために、仕訳のソースやデータソースを理解し、最終的に仕訳の自動化に移行しました。また最適化された仕訳入力ワークフロープロセスによって、仕訳入力自体もBlackLine上から可能となりました。

タスク管理

 個々のシェアードサービスセンター内で、どのような決算業務があるかを明らかにするためにBlackLineの「タスク管理」を活用しました。タスク管理は、決算タスクの一覧表示やスケジュールのカレンダー表示ができます。また、期日を超過したタスクや差戻しが行われたタスクなど、件数や内容を画面でリアルタイムに確認できます。こうしたタスク管理の機能を活用しながら、各国の異なる決算業務処理を整理し、全世界で標準化を進めました。併せて、マニラでのオペレーションの一元化を進めました。

マッチング

 BlackLineにはマッチングといって、入金消込ほか突合作業の自動化といった機能があり、活用しました。

図表7

 こうした取り組みの結果、ジョンソン・エンド・ジョンソンは課題解決を実現しました。また、グローバルで1日に150時間分の業務削減も達成しました。

 今日お話した情報は、皆様が改革を進めるうえでのヒントになると思います。皆様はそれぞれ異なる環境下でビジネスをしていると思いますが、今回のセミナーの中には、いくつか当てはまることもあったかと思います。今回共有した情報が皆様のお役に立てるならば幸甚です。

図表8

ブラックライン株式会社

ブラックラインは経理業務プロセスの可視化、標準化、自動化、統制強化を実現する経理業務変革プラットフォーム「BlackLine」を提供しています。決算業務を中心に、既存の会計システム等でカバーされないアナログ作業をデジタル化することで、経理人材を膨大な手作業から解放し、戦略的で高度な業務へのシフトを支援します。また如何なる環境でも持続可能かつリアルタイムにグループ全体の経理データが可視化されることで、ガバナンス強化や経営の意思決定の迅速化に貢献します。「BlackLine」は世界130か国以上、4,300社の企業、375,000を超えるユーザーに利用されています。

[コーポレートサイト]
ブラックライン株式会社|経理業務変革プラットフォーム

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