譲渡所得・山林所得・贈与税・財産評価 申告の手引

譲渡所得・山林所得・贈与税・財産評価 申告の手引 page 54/54

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譲渡所得・山林所得・贈与税・財産評価 申告の手引

第1 譲渡所得の範囲11譲渡(基礎)贈与者に経済的利益をもたらす負担付贈与の場合は,贈与者が贈与財産をその負担額で有償譲渡したことになると解されます。   そこで,あなたの場合は,消滅した債務の額で土地を譲渡したものとして,次のとおり譲渡所得が課税されます(所法33①,36①)。   (収入金額) (取得費) (課税長期譲渡所得金額)   1,500万円-1,000万円=   500万円    また,長男は,受贈時の土地の通常の取引価額に相当する金額(時価)から負担する債務の額を控除した金額を課税価格として贈与税が課税されます(相基通21-4,平元3.29. 直評5,直資2-204)。    (時価)  (負担額)  (基礎控除額)  (基礎控除額控除後の課税価格)   2,000万円-1,500万円- 110万円 =      390万円 ● 賃貸アパートの贈与についての負担付贈与 問  私は,父から賃貸アパート(建物)の贈与を受けました。この際,賃借人から預かった敷金200万円についても,贈与を受けております。   この場合,負担付贈与として譲渡所得が課税されるのでしょうか。 答  敷金とは,不動産の賃借人が,賃料その他の債務を担保するために契約成立の際,あらかじめ賃貸人に交付する金銭(敷金は権利金と異なり,賃貸借契約が終了すれば賃借人に債務の未払いがない限り返還されます。)をいい,その法的性格は,停止条件付返還債務である(判例・通説)とされています。   また,賃貸中の建物の所有権の移転があった場合には,旧所有者に差し入れた敷金が現存する限り,たとえ新旧所有者間に敷金の引継ぎがなくても,賃貸中の建物の新所有者は当然に敷金を引き継ぐ(判例・通説)とされています。   事例の場合,お父さんについては,負担付贈与に該当しないことから,譲渡対価がないので,譲渡所得の課税は生じないこととなります。旧所有者(父)が賃借人に対して敷金返還義務を負っている状態で,新所有者(子)に対し賃貸アパートを贈与していることから,法形式上は,負担付贈与に該当しますが,敷金返還義務に相当する現金の贈与を同時に行っている場合には,一般的に敷金返還債務を承継させる意図が贈与者・受贈者間においてなく,実質的な負担はないと認められます。   したがって,事例の場合には,実質的に負担付贈与に当たらないと解されます(平成元年3月29日付直評52ト,負担付贈与通達)。