平10課法2-14・査調4-20
平成10年11月2日、日本公認会計士協会から、また、同年11月2日及び11月20日、日本不動産鑑定協会から、国税庁に対し、両協会が策定した適正評価手続に基づいて算定される債権及び不良債権担保不動産の取引価額は税務上も認められると解して差し支えないか照会がありました。
国税庁においては、その内容について検討し、平成10年12月4日、それぞれの手法の計算の基礎とした収支予測額及び割引率が適正であれば税務上も認められる旨両協会に対して回答しました。
別紙1 |
課法2-12 査調4-18 平成10年12月4日 |
日本公認会計士協会 会長 中地 宏 殿 |
国税庁長官 薄井信明 |
「「流動化目的」の債権の適正評価について」に基づいて算定される価額の税務上の取扱いについて (平10.11.2付照会に対する回答) |
標題のことについて、評価対象となる債権の取引価額につき、「「流動化目的」の債権の適正評価について」に基づいて算定された価額については、適正な収支予測額及び割引率等に基づいて算定されたものである場合には、貴見のとおり取り扱うこととします。 |
別紙2 |
課法2-13 査調4-19 平成10年12月4日 |
社団法人 日本不動産鑑定協会 会長 安藝哲郎 殿 |
国税庁長官 薄井信明 |
「不良債権担保不動産の適正評価手続きにおける不動産の鑑定評価に際して特に留意すべき事項について」に基づいて算定される価額の税務上の取扱いについて (平10.11.2及び11.20付照会に対する回答) |
標題のことについて、評価対象となる不良債権担保不動産の取引価額につき、「不良債権担保不動産の適正評価手続きにおける不動産の鑑定評価に際して特に留意すべき事項について」に基づいて算定された価額については、適正な収支予測額及び割引率等に基づいて算定されたものである場合には、貴見のとおり取り扱うこととします。 |
別紙3 |
平成10年11月2日 |
国税庁長官 薄井 信明 殿 |
日本公認会計士協会 会長 中地 宏 |
「「流動化目的」の債権の適正評価について」に基づいて算定される価額の税務上の取扱いについて(照会) |
現下の緊急課題である不良債権・債務関係の迅速円滑な処理を進めるため策定されました「総合経済対策(平成10年4月24日)」及び「金融再生トータルプラン(平成10年6月23日)」の決定に基づき、本協会において、別添の「「流動化目的」の債権の適正評価について」を取り纏めました。 つきましては、本報告書に基づいて算定される流動化目的の債権の価額が税務上の取扱いにおいて、特に問題がないかどうかにつき、貴見を得たくお伺い申しあげます。 |
「流動化目的」の債権の適正評価について |
平成10年10月28日 日本公認会計士協会 |
- 本報告書の目的
1 本報告書は、銀行等金融機関等が不良債権等を流動化(売却、証券化等)する際の、貸出金等債権(以下「債権」という。)の売買価値を適正に評価する方法とそれを担保する手続に関する実務上の指針を提供するものである。 - 銀行等金融機関の貸倒引当金等の設定との関係
2 銀行等監査特別委員会報告第4号「銀行等金融機関の資産の自己査定に係る内部統制の検証並びに貸倒償却及び貸倒引当金の監査に関する実務指針」(平成9年4月15日日本公認会計士協会)(以下「報告第4号」という。)は、銀行等金融機関の貸倒償却及び貸倒引当金の計上に関する監査上の取扱いを示している。報告第4号は、銀行等金融機関の保有する債権に対する会計上の見積もりである貸倒償却及び貸倒引当金を対象としており、取得原価主義を基礎としている。 一方、本報告書は、財務諸表作成のための会計基準とは異なり、債権の流動化のための評価を目的としている。したがって、債権の売買価値は、流動化によってもたらされるキャッシュ・フローの現在価値によって測定される。 - 適正評価方法の対象となる債権
3 本報告書が対象とする債権は、銀行等金融機関の資産の自己査定により分類された不動産担保付債権が中心となるが、それに限らずその他担保・保証付債権及び無担保債権も含まれる。 対象となる債権は一契約毎の債権金額全体を一体として扱ったものであり、債権の資産分類別の評価を行うものではない。
- 適正評価方法
- 債権の評価方法
4 流動化目的の債権の適正な売買価値は、流動化目的の債権が主として投資対象として取得されることや、投資採算の測定が債権から得られる将来のキャッシュ・フローのみによるところから、流動化によってもたらされるキャッシュ・フローの割引現在価値によって測定される。割引現在価値の算定にあたっては、将来キャッシュ・フローに対しての評価日から回収日までの時間の経過と回収の不確実性を考慮するのが適当であるとの立場から、評価日現在の市場金利水準に一定の信用スプレッドを加えた利率で割引を行う。なお、将来のキャッシュ・フローは、合理的で最善の見積もりにより算出されなければならない。 - 他の評価方法との関係
5 本報告書において不動産収益還元評価法としているのは、日本不動産鑑定協会のとりまとめた適正評価方法を指す。当該方法は、流動化目的の不動産の適正評価、又は、もっぱら担保不動産からの収入しかキャッシュ・フローがない債権の適正評価に使用する。 - 正常先債権の適正評価
6 正常先債権を流動化する場合の適正評価は、当該債権の契約条件に従って元利金の返済スケジュールを満期日まで見積もり、債権キャッシュ・フロー割引法(以下「債権CF割引法」という。)により適切な割引率で割引現在価値を計算することによって行う(債権CF割引法は、付録2及び付録3参照)。 割引率は、評価日現在の債権の満期日までの期間に対応する国債の利回り等適切な指標に信用スプレッドを上乗せした利率を使用する。 なお、割引率は経済環境及び金融、不動産市場環境の変化に対応して変更される。 - 正常先債権以外の債権の適正評価
7 正常先債権以外の債権を流動化する場合の適正評価は、元利払いの履行状況、債務者の財務内容、担保の状況等を勘案し、次のステップにより実施する。 - 元利払履行継続テスト
8 次の条件をすべて満たす債権は、元利払履行中として扱う。 - (1) 債権の元利金の支払遅延は30日未満で、その他の契約条件が遵守されていること
- (2) 財務上の事由により、過去に金利減免・棚上げ等貸出条件の緩和は行われたことがないこと
上記条件を満たし、次の将来履行懸念テストに問題のない債権は、債権CF割引法により評価する。 - 将来履行懸念テスト
9 将来の元利金の返済履行を確実に行わなくなる原因となる事象(例えば、将来の巨額一括返済に必要なキャッシュ・フローの不足)が存在するか、又は、将来債務不履行になる可能性があるかを検討する。 - 債務者テスト
10 元利払履行継続テストを満たさない場合は、債務者テストを実施する。 債務者テストでは、債権の担保として提供されている資産以外を原資として元利金を返済する能力があるか否かを検討する。事業収益により生み出される営業キャッシュ・フロー、担保に提供していない金融資産、不動産、投資等、又は第三者からの資金提供があれば、債務者が元利金の返済を履行できる可能性がある。 債務者テストを満たし、将来履行懸念テストに問題がない場合は、債権CF割引法を使って評価する。債務者テストを満たさない場合、又は債務者テストは満たすが将来履行懸念テストを満たさない場合は、再建計画の有無により評価方法を決定する。 - 再建計画
11 債務者が再建計画をもっている場合は、その再建計画の合理性及び実行可能性を検討し、再建計画によるキャッシュ・フローに基づく債権CF割引法を使って評価する。 再建計画があっても、当事者(取締役会、金融機関、債権者等)の合意が得られていない場合や再建計画に合理性及び実行可能性がない場合は、再建計画はないものとして扱う。 再建計画がない場合は、債権の担保として不動産が提供されているかどうかによって適用する評価方法が異なる。 - 複合評価法
12 再建計画に問題がある場合、あるいは再建計画が存在しない場合は、将来債務不履行となることを仮定した上で、下記の複合評価法により評価する。採用する仮定については、債権の売買当事者間で合意することが望まれる。 - 不動産収益還元評価法
13 不動産担保貸出金のうち、もっぱら担保不動産からの収入又はその処分収入しか返済原資が見込めないものについては、不動産収益還元評価法を使用して評価する。この方法の適用が適当である債権は、不動産担保貸出金が実質的に担保不動産を所有していることと同じである場合である。 - 保証及び不動産以外の担保
14 不動産担保貸出金以外の債権については、その債権に対する保証及び不動産以外の担保がある場合、当該保証の価値及び当該担保の処分による回収見込額により評価する。 保証履行は、保証人の履行能力に疑問があることが多い。 優良保証を除けば、保証の価値は、次のいずれかの小さい金額の10%として計算するが、実状にあわせて増減できるものとする。 - 無担保又は無保証の債権
15 担保又は保証が付されていない債権は、担保、保証付債権及び法律上の優先債権(税金、労働債権等)の返済に充当するキャッシュ・フロー以外のキャッシュ・フローによってしか弁済を受けることができない。 法的整理が行われる場合は、その形態によって回収できる金額を見積もる。
- 流動化目的の債権の適正評価を担保する手続
- 債権の適正評価の担保手続
16 債権の適正評価が確実な基礎資料に基づいて行われているかを担保する手続として、債権関係、債務者関係、保証人関係及び担保資産関係等の法的関係の確認又は内容の分析等を行う必要がある。 - 債権関係
17 流動化対象債権について、流動化を実施する時点において、当該債権の保全手続が適法に行われていることを金銭消費貸借契約書及び関連原始資料を閲覧することにより確かめる。その際、当初貸付残高、貸付日、返済期日、利率、現在における延滞元本残高合計額、延滞利息合計額、延滞日、根抵当権、抵当権の設定日、設定者、資産所有者、債務者及び設定額等を確認する。 過去12か月における債務者による返済状況を把握し、最終元利金支払日から5年近く経過している場合は、時効の成立を中断する手続が適切に行われていることを確認する。 - 債務者関係
18 直近の財務諸表その他の資料を使用して債務者の返済能力を分析する。 債務者が破綻先である場合は、法的手続(会社整理、破産、和議、会社更生法、清算、特別清算)又は、任意整理手続がどのように進められているかを関連書類から把握し、担保以外による債権回収の可能性を検討する。更に、債務者の債権者との対応が協力的か否か、また、反社会的勢力との関係の有無を債権者が保管する文書ファイル等で確認する。 - 保証人関係
19 保証の有効性を確かめるため、保証約定書を査閲する。また、保証人の返済能力の有無を直近の財務諸表等を使用して分析する。 - 担保資産関係
20 不動産担保の場合は、不動産収益還元評価法を用いた不動産鑑定士による評価書を入手し、査閲する。 不動産登記簿謄本にて下記の事項を確認し、抵当権及び根抵当権が適法に成立していることを確かめる。なお、登記簿謄本は、すべてのページが揃っていること、及び最新に取り寄せられたものであることを確認する。 - (甲区)
- 所有者名、所有権移転日、破産・差押・更生手続開始の有無(日付)
- (乙区)
- 抵当権者(各順位)、抵当権設定日、設定額・極度額、債務者名、共同担保設定の有無、先順位優先額、同順位債権者の有無、後順位債権者数、賃借権・地上権等の設定の有無
- (その他)
- 敷地権の設定の有無
- 合意の上確認する事項
21 担保物件の価値に影響を与える事項の有無を確かめるため、依頼者と合意した手続を実施する。確認事項の例としては、以下のものがある。 なお、弁護士、不動産鑑定士等他の専門家と分担して手続を実施することが適切な場合が多いことに留意する。 - ・ 公図等を参照し、地番等の不整合の有無
- ・ 写真・地図により登記簿上の記載の正しいことの確認
- ・ 写真・地図により未登記建物(例えば、プレハブ小屋)がないことの確認(未登記建物が担保権設定日よりも先に建てられたケースでは、地上権が発生する可能性がある。)
- ・ 借地権等登記簿に登記されていない権利を含め建物の敷地利用権の確認
- ・ 先順位の抵当権者がいる場合の抵当権の金額の把握 ・ 抵当権の実行及び担保物件の処分を制限する事項の有無(短期賃借権の設定、農地法や都市計画法などの法令上の規制等)
- ・ 優先滞納税の金額の把握
- ・ 抵当物件に関する賃貸借契約書を入手し当該賃借権の内容の把握、賃借人との係争関係の有無及び占有者との関連の調査
- ・ 賃借料及び敷金の一覧表を入手し、著しく相場からかけ離れた金額にて賃貸借されているもの及び賃借料滞納の有無
- ・ 賃料の差押の可否
- ・ 抵当物件が賃貸以外の特定の事業用不動産(例えば、ゴルフ場、ホテル等)として使用されている場合には、その事業の収益状況の把握
- 競売の場合
22 担保物件についての競売申立がなされている場合、競売関連資料を入手し、競売開始決定日・入札期限・競売回数・最低入札価格の情報を確認する。こうした情報から物件が競売によりいつ処分されるか検討する。 - 任意売却の場合
23 仲介業者の価格の妥当性(例えば、債務者が自己と関係がある仲介業者の利用を主張したかに留意する。)及び任意売却がいつ成立するかを検討する。また、売却価額から減額される下記の事項についても留意する。 - ・ 後順位者が要求したハンコ代の把握
- ・ 任意売却の場合と競売の場合との売却価格の比較
- ・ 債務者が任意売却に協力的か否かに関する情報の入手
- ・ 各担保物件ごとに過去の買取り提示の実績を調べ、物件自体の市場性の確認
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付録2 | 債権CF割引法 | 1 元利払履行継続債権の適正評価額は、満期日までの債権からの月次キャッシュ・フローの割引現在価値となる。割引は、原則として月又は年複利計算による。 - 2 割引率
割引率は、評価日現在の残存期間に対応する国債利回り等適切な指標に信用スプレッドを上乗せして決定する。割引率は、経済環境及び市場環境の変化に対応して変更される。 - 3 信用スプレッド
国債の利回り等適切な指標に市場実勢を反映した信用スプレッドを上乗せする。信用スプレッドは原則として、債務者分類、担保不動産の種類及び所在地、担保順位、返済の履歴、金融・資本市場の状況等を総合的に勘案して交渉のうえ決定する。
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付録3 | 割引率の設定について | 債権CF割引法に適用される割引率は、債権売買の当事者が市場実勢を反映して決定するのが適切である。しかし、将来、一般的ガイドラインを設定する必要が生じた場合には、中立的立場にある関係者が市場の実勢を調査し、債権売買の当事者の意見を聴取した上で決定することが適当である。 割引率のガイドラインを設定する上で考慮を要する事項は次のとおりである。 1 正常債権とそれ以外の債権、又は正常にキャッシュ・フローのある債権とそれ以外に分けてガイドラインを設定する。 2 正常債権又は、正常にキャッシュ・フローのある債権の割引率は、適切な指標(国債利回り、TIBOR、スワップ・レート等)に一定の信用スプレッドを上乗せする。 3 正常債権以外の債権、又は正常にキャッシュ・フローのない債権の割引率は、市場実勢の割引率を採用する。 4 債権の担保となっている不動産の種類・用途により割引率を分ける。 5 割引率は、一定の幅で設定する。 6 割引率は、市場環境の変化に対応して改定する。
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別紙4 |
平成10年11月2日 |
国税庁長官 薄井 信明 殿 |
社団法人 日本不動産鑑定協会 会長 安藝哲郎 |
「不良債権担保不動産の適正評価手続きにおける不動産の鑑定評価に際して特に留意すべき事項について」に基づいて算定される価格の税務上の取扱いについて(照会) |
現下の緊急課題である不良債権・債務関係の迅速円滑な処理を進めるため策定されました「総合経済対策(平成10年4月24日)」及び「金融再生トータルプラン(平成10年6月23日)」の決定に基づき、本協会において、別添の「不良債権担保不動産の適正評価手続きにおける不動産の鑑定評価に際して特に留意すべき事項について」を取り纏めました。 つきましては、この留意事項に基づいて算定される不良債権担保不動産の価格は税務上も認められると解して差し支えないか、貴見を伺いたく照会申し上げます。 以上 |
平成10年9月22日 | 不良債権担保不動産の適正評価手続における不動産の鑑定評価に際して特に留意すべき事項について(概要) | (その1 デフォルト状態にある不良債権の担保不動産) | - Ⅰ 評価対象
本留意事項の対象は、「デフォルト状態にある不良債権の担保となっている不動産」であり、不良債権そのものではない。 デフォルト状態にある不良債権の担保不動産の評価に当たっては、対象不動産を市場で早期に換価することにより、確実に回収できる額を見積り査定することが必要になる。この場合の評価の基本的姿勢としては、①対象不動産が有している収益力を価格に的確に反映させることを基本とし、②詳細な調査に基づくより確実なデータを前提とした合理的なものとすることが必要不可欠であるとともに、③早期売却の必要、換価困難といった減価の必要性を的確に価格に反映させ、④調査によって判明しない部分については、原則として価格に対して保守的な評価、すなわち判明しない部分をリスクとして評価し、結果として対象不動産が確実に有する収益力を反映した、いわば最低価格を求めて評価することとなる。
| - Ⅱ 調査統括表
本評価に当たって必要となる調査事項については、別紙の調査統括表により作成する。 調査事項によっては、弁護士、公認会計士、建築士等他の専門職業家の調査・判断を要する場合には、その意見を尊重し、その意見書等を添付する。 なお、依頼者の意向(調査期間、費用による制約も含む)により、調査項目や、その精度が制約される場合は、該当項目にその旨を記載する。
| - Ⅲ 適用手法
前記の評価目的から、買い主は、自己利用を目的とする最終需要者ではなく、比較的短期間での転売を予定する限られた投資家が想定される。したがって、採用する収益還元法の手法としては、特にこのような投資家の価値判断に沿った、予測可能な将来のキャッシュフローを重視した手法が適切である。 一方、地域の特性として一般に収益性を前提としないで取引されており、適切な賃料等の収益把握が困難と判断される戸建住宅等については、取引事例比較法等(転売前提)による。 なお、収益還元法を採用する場合においても、他の手法から求めた価格による検証および調査資料として、取引事例比較法または原価法等による試算も行うこととする。 - 1 原則
- 2 本手法適用上の留意事項
- (1) 評価条件
原則として現況を所与の条件として評価し、想定条件はつけないものとする。関係当事者等の他者との合意を必要とせず、投資期間や対象不動産の価格からみて許容しうる一定の期間とコストをかければほぼ確実に達成できるものについては想定が可能であるが、虫食い土地等での隣地等との併合や一体開発は原則として想定しないものとする。 - (2) 保有コストに見合う収入の得られない不動産の評価
現況で通常想定できる収入が保有コストを下回る場合には、投資価値がないものとして評価することとする。この場合、評価額の欄に「投資価値なし」と記載する。
- 3 類型別の評価上の留意事項
- (1) 商業用賃貸不動産(オフィスビル等)
- (2) 事業用不動産
賃貸用不動産を除く収益用不動産すべてが含まれる(ホテル、デパート、パチンコ店等)。原則として、現状の業種の継続経営による企業収益に基づいて不動産に帰属する純収入を求め、収益還元法(DCF法:不動産残余法)により求めるものとする。 - (3) 住宅
戸建住宅や郊外のファミリー型マンション等では、最終的な購入者として、近傍類似の取引価格を取引指標とする自己使用目的の最終需要者が多数想定され、地域の特性として一般に収益性を前提としないで取引されており、合理的な市場での賃貸を想定することが困難な不動産が多いので、原則として取引事例比較法等を適用して求めるものとする。ただし賃貸が想定できるとき、および現に賃貸中であるときは、前記(1)「商業用賃貸不動産」の手法による。 - (4) 現状は低未利用の状態にある不動産
- ① 追加投資により、そのままで建物建築や用途変更が可能なもの
対象不動産の最有効使用に応じ、建築後転売することを想定して各手法を適用する。 - ② 当面、有効な建物建築想定が困難なもの
立地条件や画地条件等により、建物建築が困難または建築しないほうが収益性があると判断できるものは、駐車場や資材置き場等の土地の賃貸を想定して収益還元法(DCF法)を適用する。 - ③ 不整形地等
分割が容易な不整形地で、分割して使用収益したほうがよいと判断できる場合は、分割後の最有効使用に応じ、前記①または②に区分して、それぞれの手法を適用し、求められた評価額を合計して評価する。
| - Ⅳ 減価要因
- 1 減価要因の評価への反映方法
本評価においては、対象不動産自体がもつ減価要因のほか、対象不動産をめぐる各種事情による減価要因を広く把握し、これを適切に評価に反映させる必要がある。 各種減価要因を評価に反映させるに当たっては、できるかぎり個別に数値化して評価することとする。個別に数値化できない減価要因は、還元利回りを構成するリスクプレミアム(投資対象としての危険性、流動性、管理の困難性等)の中で勘案して反映させる。 本評価において、通常の鑑定評価と異なる考慮すべき減価要因は、次に掲げるものが考えられる。 - イ 債権者(売り主)にとって早期売却の必要性があること
- ロ 売り主の状況を考慮しなければならないこと(瑕疵担保責任の負担能力を喪失していること等)
- ハ 権利関係錯綜等の換価困難性がある場合(短期賃借権の存在、関係者間での紛争の存在等)
- 2 早期売却の必要性についての評価
競落予想時点の予想最低売却価額を現在価値に割り戻した価格および通常の取引価格(正常価格)から早期売却による減価をした価格との験証を行う。 - 3 所有者(売り主)の状況による減価についての評価
所有者に瑕疵担保責任の実質的な保証能力がないことによる減価を考慮する。 - 4 換価困難性についての評価
- 5 類型別減価要因
対象不動産の類型、用途に応じ、調査統括表に基づいて各種減価要因を把握し、その内容に応じて適切に減価額または減価率、あるいは利回り格差を査定する。 - 6 調査によって明らかにできない事項があるときの減価の取り扱い
調査・確認できない事項については、合法性、合理性を有する現実的な最低、最悪の場合を想定した(たとえば収支の査定においては「最小限の収入、最大限の支出」)条件を設定したうえで評価する。さらにこの想定によっても、なおさらなる負担が懸念される減価可能性があるときには、適切な一定率の減価もしくはリスクプレミアムの加算により減価を行うこととする。
| - Ⅴ 評価額の決定
- 1 原則
対象不動産が賃貸用不動産および事業用不動産である場合の評価額は、原則としてキャッシュフローを重視した収益還元法による収益価格から求めた価格(各種減価要因による減価後)を評価額として決定する。 また、地域の特性として一般に収益性を前提としないで取引されており、適切な賃貸等の収益把握が困難と判断される戸建住宅等については、比準価格または積算価格等から求めた価格(各種減価要因による減価後)を評価額として決定する。 - 2 例外
収益価格を評価額として決定するに際しては、検証手段として求めた比準価格、積算価格等との比較を行い、収益価格よりも比準価格または積算価格等が低い価格となる場合は、いずれか低いほうの価格をもって評価額とする。
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別紙5 |
平成10年11月20日 |
国税庁長官 薄井信明 殿 |
日本不動産鑑定協会 会長 安藝哲郎 |
「不良債権担保不動産の適正評価手続きにおける不動産の鑑定評価に際して特に留意すべき事項について」に基づいて算定される価額の税務上の取扱いについて(照会) |
平成10年11月2日付にて照会申し上げた留意事項(デフォルト状態にある不良債権の担保不動産の適正評価手続きにおける不動産の鑑定評価に際して特に留意すべき事項)と関連し、「不良債権担保不動産の適正評価手続きにおける不動産の鑑定評価に際して特に留意すべき事項について」(その2 デフォルト状態にない不良債権の担保不動産)を取り纏めました。 つきましては、この留意事項に基づいて算定される不良債権担保不動産の価額は税務上も認められると解して差し支えないか、貴見を伺いたく照会申し上げます。 以上 |
平成10年11月17日 | 不良債権担保不動産の適正評価手続における不動産の鑑定評価に際して特に留意すべき事項について(概要) | (その2 デフォルト状態にない不良債権の担保不動産) | - Ⅰ 評価対象
- 1 評価対象
本留意事項の対象は、「デフォルト状態にない不良債権の担保となっている不動産」であり、不良債権そのものではない。また、今回デフォルト状態にない不良債権の担保不動産の鑑定評価の留意事項としてとりまとめるのは、次の範囲のものとする。 ① 不良債権の早期処理という社会的要請に基づいて、担保不動産を評価するに当たり、債務の返済に懸念があり、安全性を考慮することが特に要請されている不良債権(現在時点においてはデフォルト状態にないもの)の担保不動産を、不良債権の早期処理のための債権回収の中で早期に任意売却する場合の鑑定評価。 ② 前記①と同様の不良債権を、前記要請に基づいて不良債権処理のために債権を売却等する場合の担保としての不動産の鑑定評価。
- 2 基本姿勢
この場合の評価の基本的姿勢としては、①対象不動産が有している収益力を的確に価格に反映させることを基本とし、②詳細な調査に基づくより確実なデータを前提とした合理的なものとすることが必要不可欠であるとともに、③早期売却の必要(売却の場合)、換価困難といった減価の必要性を的確に価格に反映させ、④調査によって判明しない部分については、原則として価格に対して保守的な評価、すなわち判明しない部分をリスクとして評価し、結果として早期売却の必要性の程度に応じた、または担保としての安全性を考慮した対象不動産が有する収益力を的確に反映した価格を求めて評価することとなるものである。 - 3 その他
本留意事項で対象としているデフォルト状態にない不良債権における、債権の状態等による対象不動産の早期売却の必要性の程度等の判断については、依頼者(債権者等)に委ねることとし、必要に応じて公認会計士の判断を求めて決定することとする。
| - Ⅱ 調査統括表
本評価に当たって必要となる調査事項については、前回の留意事項と同様の調査統括表により作成する。 調査事項によっては、弁護士、公認会計士、建築士等他の専門職業家の調査・判断を要する場合には、その意見を尊重し、その意見書等を添付する。 なお、依頼者の意向(調査期間、費用による制約も含む)により、調査項目や、その精度が制約される場合は、該当項目にその旨を記載する。
| - Ⅲ 適用手法
- 1 原則
担保としての評価に当たっては、対象不動産が有している的確な収益力を価格に反映させることを基本とする前記の評価の基本姿勢から、原則として、買い主側の価値判断としての、対象不動産の生み出す収益に基づく手法である収益還元法を採用する必要がある。 一方、地域の特性として一般に収益性を前提としないで取引されており、適切な賃料等の収益把握が困難と判断される戸建住宅等については、市場性等の減価要素を十分織り込んだ取引事例比較法等によることが適当である。 なお、収益還元法を原則として採用する場合においても、他の手法から求めた価格による験証および調査資料として、取引事例比較法または原価法等による試算も行うこととする。 また任意売却のための評価は、評価に当たっての基本的姿勢が早期売却を除き共通している本留意事項による担保としての評価の場合の適用手法、適用数値等を準用してこれを標準とし、正常価格およびデフォルト状態の不良債権の場合の特定価格を求める場合のそれぞれの適用手法、適用数値等を勘案して、早期売却の必要性の程度(対象不動産の通常成約に必要な期間と債権等の状態等により許容される(前提としている)市場滞留期間との関係等)に応じて評価することとする。 - 2 本手法適用上の留意事項
- (1) 評価条件
原則として現況を所与の条件として評価し、想定条件はつけないものとする。関係当事者等の他者との合意を必要とせず、保有期間や対象不動産の価格からみて許容しうる一定の期間とコストをかければほぼ確実に達成できるものについては想定が可能であるが、虫食い土地等での隣地等との併合や一体開発は原則として想定しないものとする。 - (2) 保有コストに見合う収入の得られない不動産の評価
現況で通常想定できる収入が保有コストを下回る場合には、市場性、収益性に劣るので、担保価値がないものとして評価することとする。この場合、評価額の欄に「担保価値なし」と記載する。なお、比準価格等も比較考量する低・未利用地は、個別的要因を中心に担保適格性を判断して決定する。
- 3 類型別の評価上の留意事項
- (1) 商業用賃貸不動産(オフィスビル等)
- ① 期間
各年度のキャッシュフローの査定期間は、現在の日本の不動産市況(賃貸借期間が短期、先行き不透明等)を考慮し、五年程度を標準として対象不動産の収支等の予測確実性により判断する。(正常価格を求める場合より予測の確実性を厳しくみて予測確実性の高い期間は短めとする。) - ② 還元利回り
当分の間、社団法人日本不動産鑑定協会において、個別に検討された数値に基づき決定する。早期売却部分はないが、種々の減価要因によるリスク程度はデフォルト状態の債権の場合と同程度のものを適用する。
- (2) 事業用不動産
原則として、現状の業種の継続経営による企業収益に基づいて不動産に帰属する純収入を求め、収益還元法(DCF法)(不動産残余法)により求めるものとする。 - (3) 住宅
戸建住宅や郊外のファミリー型マンション等では、最終的な購入者として、近傍類似の取引価格を取引指標とする自己使用目的の最終需要者が多数想定され、地域の特性として一般に収益性を前提としないで取引されており、合理的な市場での賃貸を想定することが困難な不動産が多いので、原則として担保としての安全性(市場性、および価格の変動リスク等)の観点から市場性の減価要素を十分織り込んだ取引事例比較法等により求める。ただし賃貸が想定できるとき、および現に賃貸中であるときは、前記(1)「商業用賃貸不動産」の手法による。 - (4) 現状は低・未利用の状態にある不動産
| - Ⅳ 減価要因
- 1 減価要因の評価への反映方法
本評価においては、対象不動産自体が持つ減価要因のほか、対象不動産をめぐる各種事情による減価要因を広く把握し、これを適切に評価に反映させる必要がある。 各種減価要因を評価に反映させるに当たっては、できる限り個別に数値化して評価することとする。個別に数値化できない減価要因は、還元利回りを構成するリスクプレミアム(危険性、流動性、管理の困難性等)の中で勘案して反映させる。 本評価において通常の鑑定評価と比べ特に考慮すべき減価要因は、権利関係錯綜等の換価困難性ある場合(短期賃借権の存在、関係者間での紛争の存在等)が考えられる。また、売り主(所有者)は現在時点では通常瑕疵担保責任負担能力を必ずしも失ってはおらず、売り主の瑕疵担保責任負担能力による減価は原則として行わないが、依頼者(債権者等)より現所有者に瑕疵担保責任負担能力がないと判断されている場合は、減価要因として考慮する。 なお、担保としての評価を行う場合はデフォルト債権の場合ほどの換価の緊急性はないので、早期売却による減価の験証は行わない。 一方、任意売却のための評価の場合は、デフォルト状態にある不良債権の担保不動産と同様に、債権者にとって合理的な価格であることの験証のため、競落想定時点における予想最低売却価額を、保有リスク等を織り込んだ還元利回りで割り戻した価格から管理コストの現価を差し引いた価格との比較を行う。 - 2 換価困難性についての評価
- 3 類型別減価要因
担保としての安全性(市場性、価格および収益の変動リスク等)確保の観点から、対象不動産の類型、用途に応じ、調査統括表に基づいて各種減価要因を把握し、その内容により、市場性の減価を十分に配慮して適切に減価額または減価率あるいは利回り格差を査定する。 - 4 調査によって明らかにできない事項があるときの減価の取り扱い
調査・確認できない事項については、担保としての安全性(市場性、価格および収益の変動リスク等)確保の観点から、最低・最悪の状態を想定する。さらにこの想定によっても、なおさらなる負担が懸念される減価可能性があるときには、適切な一定率の減価もしくはリスクプレミアムの加算により減価を行うこととする。
| - Ⅴ 評価額の決定
- ① 担保として評価する場合
鑑定評価額は、対象不動産が賃貸用不動産および事業用不動産である場合には、原則としてキャッシュフローを重視した収益還元法による収益価格から求めた価格(各種減価要因による減価後)を評価額として決定する。 また、地域の特性として一般に収益性を前提としないで取引されており、適切な賃貸等の収益把握が困難と判断される戸建住宅等および同用途の住宅地については、比準価格および積算価格等から求めた価格(各種減価要因による減価後)を評価額として決定する。 低・未利用地等については、追加投資により、そのままで建物建築や用途変更が可能なもの(前記住宅地を除く)は収益価格を標準とし、比準価格等を比較考量して決定するものとし、建物建築が想定できないものは、収益価格を評価額として決定する。 - ② 任意売却の場合
鑑定評価額は、前記Ⅲ1で述べたように、評価に当たっての基本的姿勢が早期売却を除き共通している前記①の担保として評価する場合の適用手法、適用数値等を準用してこれを標準とし、早期売却の必要性の程度に応じて、正常価格およびデフォルト状態の不良債権の場合の特定価格を求める場合のそれぞれの適用手法、適用数値等を勘案した、適切な手法や数値等を適用して評価し決定することとする。
以上 |
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平10課法2-14・査調4-20
平成10年11月2日、日本公認会計士協会から、また、同年11月2日及び11月20日、日本不動産鑑定協会から、国税庁に対し、両協会が策定した適正評価手続に基づいて算定される債権及び不良債権担保不動産の取引価額は税務上も認められると解して差し支えないか照会がありました。
国税庁においては、その内容について検討し、平成10年12月4日、それぞれの手法の計算の基礎とした収支予測額及び割引率が適正であれば税務上も認められる旨両協会に対して回答しました。
別紙1 |
課法2-12 査調4-18 平成10年12月4日 |
日本公認会計士協会 会長 中地 宏 殿 |
国税庁長官 薄井信明 |
「「流動化目的」の債権の適正評価について」に基づいて算定される価額の税務上の取扱いについて (平10.11.2付照会に対する回答) |
標題のことについて、評価対象となる債権の取引価額につき、「「流動化目的」の債権の適正評価について」に基づいて算定された価額については、適正な収支予測額及び割引率等に基づいて算定されたものである場合には、貴見のとおり取り扱うこととします。 |
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