税務QA 2016年10月号

税務QA 2016年10月号 page 10/16

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概要:
税務QA 2016年10月号

連載税金裁判の動向第164回個人が会社を通して行った不動産取引から生ずる収益の帰属【今月のポイント】読者の皆さまへ今月から、道下知子先生にも加わっていただくことになりました。先生は、1997年に青山学院大学院法学研究科私法専攻課程を修了した後、新日本アーンストアンドヤング税理士法人にて、税理士として実務に従事しました。その後、大学院の博士課程に進学されるとともに、2014年から西武文理大学サービス経営学部専任講師に就任され、現在、同大学准教授です。実務経験を生かした法的解説を期待できる方ですので、他の執筆者同様、読者の皆さまの激励をお願いしたいと思っております。西武文理大学サービス経営学部准教授道下知子(三木義一)今回ご紹介する判決は、個人が会社を通して行った不動産取引から生ずる収益は、「会社」に帰属するのか、「個人」に帰属するのか、ということが争点となった事案です。会社を設立して取引をすれば、その収益は会社に帰属するのが原則です。ただし本件では、このような収益は会社ではなく、個人に帰属すると認定されました。一体どのような場合に、個人の収益とされるのでしょうか。この点について判断を下した高裁判決を検討してみましょう。なお、本件は脱税事件として起訴された刑事事件であり、少し特異な事案であることにご留意ください。参考東京高裁平成28年2月26日判決(平成26(う)1193、各所得税法違反被告事件/判例集未登載(LEX/DB 25542459))東京地裁平成26年5月21日判決(平成22特(わ)550、所得税法違反各被告事件/TAINS Z999-9140、判例タイムズ1412号296頁)所法12、2381刑事訴訟法3363971、382、400事実の概要本件は所得税の脱税事件として起訴された刑事事件です。被告人X1(弁護士)とその配偶者であった被告人X2(公認会計士)は、多数の関係会社(主たる関係会社:A社)を通じて不動産取引(売買、賃貸)を行っていました。各不動産に関する売買及び賃貸の契約名義は、A社のほか、被告人両名ないし関係者が、実質的に設立若しくは他人から譲り受けた多数の関係会社の名義でなされていました。これらの不動産取引から生ずる収益は会社に帰属するものとして、各関係会社がその所得にかかる法人税の確定申告書を提出していました。これ対して検察官は、X1が個人事業として行った不動産取引であったにもかかわらず、X1は繰越欠損金を計上するA社等の法人の名義を利用し、各関係会社の取引と仮装したのであり、そのような取引から生ずる収益の実質的享受者はX1であるから、租税を負担すべき収益の帰属者はX1であると判断しました。そして、平成16年分及び平成17年分の所得税の確定申告において、X1とX2は共謀のうえ、X1の所得税を免れようと企て、X1の所得を秘匿し、税務署長に虚偽の内容を記載した確定申告書を提出し、所得税合計8億4,482万円余りを逋脱したとして起訴しました。48 zeimu QA 2016.10