[全文公開] 金融庁 デジタル化の推進等が中長期的な課題に

第9回新型コロナ対応連絡協議会開催
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金融庁は7月2日,第9回「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」を開催した。四半期の情報開示に関する要請文の公表(金融庁)や,企業会計基準委員会(ASBJ)の議事概要更新(6月26日付)などの取組みが共有された。また,同連絡協議会は7月2日に「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応(骨子)」を公表。これまでの取組みの振り返りと,今後の中長期的な課題として企業決算・監査等に係るデジタル化の推進等を挙げている。

ASBJと金融庁は四半期の要請事項を公表済

ASBJからは,2020年3月期決算企業のうち,6割以上の企業で会計上の見積りに関する追加情報の記載が確認されたと報告があった。 

議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」では,「重要性がある場合」に追加情報としての開示が求められるとしている。その点からすれば,議事概要の趣旨を踏まえた取組みが行われたと評価できる旨の見解がきかれた。また,ASBJは前回会議における議論を踏まえて6月26日付で議事概要を更新。四半期決算でも追加情報の開示を求めていく姿勢を示しており,その内容についても報告した( No.3464・2頁 )。

金融庁からは7月1日に「四半期報告書における新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示について」を公表し,四半期報告書について①提出期限,②財務情報(追加情報)の開示,③非財務情報(記述情報)の開示,の3点について留意点等を示したことなどが共有された( No.3464・3頁 )。

基準日変更を検討する企業の後押しなど課題

同連絡協議会は7月2日,これまでの振り返りと今後の課題をまとめた「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応(骨子)」(以下「骨子」)を公表した(次頁に全文を掲載している)。

骨子には,同連絡協議会で取組んできた「有価証券報告書等の提出期限の一律延長(本年9月末まで)」や「株主総会をめぐる対応」(延期や継続会の開催に関する声明文など),同感染症の影響に関する「具体的かつ充実した企業情報の開示」を求める要請文の公表等の対応を掲載し,総括として「感染拡大のピーク時を含め,クラスターの発生等の大きな混乱はなく,企業決算・監査業務等を進めることができたことを評価」する旨が記載されている。

今後については,過去の会議でも指摘のあった株主総会の分散化や企業決算・監査等に係るデジタル化の推進等が引き続き中長期的な課題に挙げられている。もし基準日の変更を検討する企業があればそれを後押しすることも必要とされ,引き続き各制度の関係者間において議論を行うこととされた。

なお,同連絡協議会は緊急時において関係者間の調整を迅速に行う役目を果たしてきたが,今回の第9回会合にて一区切りとなった(万が一状況の変化があった場合は再開)。今後は各団体それぞれが,自ら所管する制度等について見直しも含め議論していくことになる。

<重要資料>「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応(骨子)」

(金融庁「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」公表物より転載)
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会
令和2年7月2日

〇有価証券報告書等の提出期限の一律延長(本年9月末まで)

【金融庁】

〇新型コロナウイルス感染症の収束時期等を予測することが困難な状況において会計上の見積りを行う際の留意点を議事概要として公表

【企業会計基準委員会】

〇新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項として,①会計上の見積り,②固定費等の会計処理並びに金融機関の自己査定及び償却・引当などの項目を公表

【日本公認会計士協会】

〇株主総会をめぐる対応

・株主総会の延期や継続会の開催など,例年とは異なるスケジュールや方法とすることの検討を求める声明文を公表

【新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会】

・継続会開催に当たっての留意事項を明確化

【金融庁・法務省・経済産業省】

〇新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示

・新型コロナウイルス感染症の影響に関する具体的かつ充実した企業情報の開示が強く期待されること等を内容とする要請文を公表

【金融庁・企業会計基準委員会・日本公認会計士協会・日本証券アナリスト協会】

・今後も,四半期報告書等も含めた適時適切な開示を期待

【金融庁・企業会計基準委員会・日本公認会計士協会】

〇そのほか,新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会メンバーによる主な取組み

・決算発表日程の再検討のお願いを上場会社宛てに通知

【東京証券取引所】

・新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた定時株主総会の臨時的な招集通知モデルを公表

【日本経済団体連合会】

〇感染拡大のピーク時を含め,クラスターの発生等の大きな混乱はなく,企業決算・監査業務等を進めることができたことを評価

〇今後,基準日変更を検討する企業があれば,後押しすることや,企業決算・監査等に係るデジタル化の推進など,実務上の中長期的な課題への対応は,引き続き関係者と議論

〇本連絡協議会は,7月2日の会合にて一区切りとし,万が一状況の変化があった場合は再開

以上

(参考)3月期決算会社の決算発表・株主総会開催時期の動向等について

<決算発表の動向(6月末時点)>

発表時期 社数(構成比)
決算発表済(5/15まで)(45日以内) 1,732社(74.1%)
決算発表済(5/16~5月末まで) 519社(22.2%)
決算発表済(6/1~6月末まで) 66社(2.8%)
小計(決算発表済会社数) 2,317社(99.2%)
7月以降に決算発表予定 11社(0.5%)
決算発表時期が「未定」 8社(0.3%)
合計 2,336社(100.0%)

<3月期決算会社の株主総会開催時期の動向(6月末開示分まで)>

項目 社数
基準日変更 57社
継続会を開催予定 30社
臨時株主総会を開催予定(※) 4社

※計算書類報告のための臨時総会を後日開催