有限責任監査法人トーマツ リクルートインタビュー


有限責任監査法人トーマツ
人材本部 パートナー 公認会計士 小林弘幸
監査・保証事業本部 第一事業部 日本公認会計士協会準会員 大内望

<編集部より>
 監査法人の採用担当者、入所数年目の若手の方々に、自法人の強みや、採用に関するポリシー、入所後の感想等を伺う本企画。ここでは、有限責任監査法人トーマツ(以下、「トーマツ」)の小林弘幸氏(左)、大内望氏(右)のインタビューをお届けする。 。


有限責任監査法人トーマツ

 デロイト ネットワークのメンバーであり、デロイト トーマツ グループの主要法人として、監査・保証業務、リスクアドバイザリーを提供している。 日本で最大級の監査法人であり、国内約40都市に約3,300名の公認会計士を含む約6,700名の専門家を擁し、 大規模多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしている。詳細は同法人Webサイトまで。

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1.採用ポリシー
──採用に関する考え方をお聞かせください。

小林弘幸氏(以下、「小林」)
 昨今、私たちを取り巻く環境は激変してきています。ぜひ変化に前向きな人、新しいことにチャレンジできる人と一緒に働きたいと強く思っています。  私たちの仕事はどうしても書類とパソコンと睨めっこしているようなイメージが強いと思いますが、実際は経営者と色々な話をする、あるいは経理だけではなく営業や製造も含めた多くの部門の方とコミュニケーションを交わすことが非常に重要です。学生時代の経験としては、勉強はもちろん大切ですが、ゼミ、サークル、アルバイトなど勉強以外の様々なことに好奇心を持って取り組んでいただくと、仕事にもプラスになる面があるかと思います。

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(小林弘幸氏)

2.トーマツの強み
──公認会計士試験合格者の方は、どの監査法人に入ろうか非常に迷っておられると思います。ぜひ、強みなどを教えてください。

大内望氏(以下、「大内」)
 私がトーマツに入社した理由でもありますが、色々なキャリアにチャレンジしやすい環境があることが強みだと思います。勉強している時は自分が公認会計士としてどんなことをやっていきたいかがあまり定まっておらず、だからこそ色々なことをやりながら考えたいと思っていました。仕事を進めていく中で、監査だけではなくコンサルティングや税務など、違う分野に興味が出てくることもあるかもしれませんので、法人や部門の垣根が低く、自分の思いを実現しやすい環境があると、キャリアの選択が柔軟にできるという点で良いなと感じています。将来的にはアドバイザリーなどにも興味はありますが、まずは監査法人に入ったからには監査をきちんと学んでいきたいと考えています。一口に監査と言っても、クライアントの業種・業態・規模によってやることが全然違いますので、今は1社でも多くの会社を見ていきたいと思っています。

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(大内望氏)

小林
 垣根が低いという点は確かに強みで、監査法人だけではなくコンサルティングや税務など、グループ内の他法人も含め「One Firm」という考え方をしています。そのため、本人の希望で監査法人から税理士法人などへの異動も柔軟に可能ですし、キャリアとしてこのタイミングがいいだろうと思えるときには、背中を押してあげるということもあります。 人材育成も大きな強みです。私たちは、「シニアスタッフまでは育て切る」、「マネジャー以上は強みを伸ばす」という育成理念がありますので、しっかり育てるという文化が根付いています。マネジャー以上であっても、研修時間は他法人と比べると多いかなと感じています。特に新人研修であれば、「トーマツで働いている人はさすがだよね」と言われるような人を育てなければならないという使命感もあります。任意の研修としてオンラインの英語の研修などもあるので、グローバル展開をしているクライアントも多い中、英語はぜひチャレンジしてほしいテーマのひとつです。

3.制度・環境面
──具体的な制度面や働きやすさといった点で、ご紹介いただける仕組みがあれば教えてください。

小林
 アセッサー制度という、中長期的にキャリアの伴走者となる人をつける仕組みがあります。「今年1年どうする」というような短期目標の達成のためではなく、もっと4年、5年の中長期的な視点でキャリアを考えてもらうための制度です。例えば、大内のように3年目くらいであればマネジャー(管理職)クラスがつきます。管理職になるとパートナーレベルがつくという形で、長年運用してきています。例えば、直接の上司には異動の相談はしにくくても、そのチームは卒業して次のチームにステップアップしたほうが本人のキャリアのためになる場合は「そのためには今の仕事で何をやるべきか」といったアドバイスをします。
 そして働きやすさという点では、この二重橋のオフィスというのはまさに「One Firm」を体現していると思います。物理的な距離は仕事にも影響が出ますので、従来点在していた各ビジネスのオフィスを集約し、お互いに近い場所で仕事をするようになったのは「One Firm」を加速させることになると考えます。また、最近の流れとして、リモートワークの中で在宅勤務という取組も進む中、どこでも仕事ができるような制度、インフラの整備を進めています。

──大内さんは女性の目線で、何か実感されていることはありますか。

大内
 就職活動中は、どの監査法人からも女性が働きやすい制度は整っていると説明を受けましたし、時短勤務等制度を利用している方の話も聞きました。ただ、実際はどうなのかなと思っていたところ、私が1年目で所属したチームに実際に時短勤務を利用している先輩がいて、チーム全員で率先してサポートを行う一方、その先輩自身も仕事の効率化に取り組んでいて、結果としてみんなが働きやすい仕組みができるという好循環が生まれていたことが印象的でした。

小林
 やはり制度というのは実際に利用できること、利用しやすい雰囲気があることが非常に重要です。最近は男性の育休取得者が増えており、現場の理解も進んできているようです。また、マイノリティの方に対して常に配慮を忘れないということは日本だけではなく、デロイト グローバル全体で掲げている精神のひとつです。制度はマジョリティの意見に流されがちですが、マイノリティの声に耳を傾けることを大事にしていこうと思っています。一例を挙げると、LGBTの方が働きやすい職場環境への取組に対する評価を示す「PRIDE指標」で、今年トーマツは最高位のゴールドを2年連続で取得しました。誰でも使える「みんなのトイレ」を設置したり、研修等で「I am an ALLY」(編注:ALLY=LGBTではないが、LGBTを理解し支援するという考え方、あるいはそうした立場を明確にしている人々を指す言葉)と記載したステッカーを配布したりといった具体的な取組が評価されています。
 なぜ人を大事にするかといえば、当たり前の話ではありますが、監査法人にとって人は最も重要な財産だからです。人財をいかに育成するか、あるいは長く働いてもらうためにはどういう制度を整備したらいいのか、これは経営者や人事に携わる皆さんが考えていることだと思います。私たちが目指すべきなのは、他の監査法人や、先進的な取組をしている一般事業会社と比べたときでも、私たちが魅力あるグループであるということを追求することです。そうしないと公認会計士を目指す人も増えないですし、中長期的に見ればその点が最も重要だと思っています。世の中から学び、よりよい法人にする必要があると考えています。

4.入所後の感想
──「強み」のお話と少し重なるかもしれませんが、実際に入所されてみてのご感想を改めてお聞かせいただけますか。

大内 
 人を非常に大切にしているという点は、私が就活生として参加した説明会でも強く感じました。人が大事だからこそ、制度が充実していると感じます。また、研修が充実していて長期間同期と一緒に過ごすことになりますので、同期の仲も良いです。説明会でそういったお話を聞いて「いいな」と思い入社しましたが、実際は想像以上に、横のつながりがある印象を受けました。事業部関係なく集まって研修を受講するので、そこで色々な人達と知り合うことができました。今も仲が良いですし、そこで他の事業部の話を聞けるのも面白いですね。縦という点でも、上司、先輩、もっと上の方との関係も強いというお話を説明会等で聞きましたが、実際にチームに所属したときには、お兄さん・お姉さんのような感じで教えてもらいました。「こんなこと聞いたら怒られるかな」と、質問するのが怖いという雰囲気を感じることはなく、気になったことは何でも聞いて教えてもらいつつ、自分でも調べる、ということを繰り返して仕事に取り組むことで、成長することができました。

──最初はどういったお仕事をされていたんですか。

大内
 今もそうですが、上場会社の監査と、IPOの支援に関与しました。IPOに関心があるということは就職活動時から伝えており、実際にIPOに携わるチームに配属されました。そのことがきっかけで他のIPO関連チームにも参加できたため、最初から関心のある業務に関与できてよかったと思います。

──実際、入所前とのギャップは特になく、楽しくお仕事ができているのですね。

大内
 そうですね。逆に聞いていた通りというのがギャップだったかもしれません。チームの先輩にも恵まれており、本当に親身に相談に乗ってくれる人も多く、入社してよかったと思います。

小林
 おそらく就活生の方も、いろんな監査法人を回り説明会などにも出られているかと思いますが、その中で何を基準にするかといえば、おそらく「この人達と一緒に働きたいな」と感じるかどうかではないでしょうか。「どんな監査ツールがあるのか」とかは実際に働いてみないとわからないですし、「こういうアナリティクスツールを研究しています」とか「うちの監査品質は高くてね」などと聞いても、結局ピンと来ないと思うんです。きっと最終的な判断材料は「こういう人達が働いている職場だったら一緒に働きたいな」という実感でしかなくて、そういう意味では、我々の人を大事にしているというポイントが伝わればいいなと思っています。

5.公認会計士試験合格者へのメッセージ
──公認会計士試験合格者へのメッセージをそれぞれいただければと思います。

小林 
 まず、「合格おめでとうございます」ということをぜひお伝えしたいです。ずっと勉強漬けだったので、気分転換をされるのも良いと思います。「ワークライフバランス」と言うように、ご自身のキャリアは「会社」と「プライベート」の両輪で構成されますので、プライベートの過ごし方は非常に重要です。人生100年時代と言われますから、社会に出るまでの間は、例えば留学してみようとか、あるいはこれを機に会計とは関係ない本を読んでみようとか、「プライベート」のキャリアを考える時間にあてていただきたいと思っています。働き始めてしまうと、自分自身を見つめ直す時間がなかなかとれません。キャリアというものは、365日・24時間考えるという性質のものではないと思いますので、こうした人生の節目で一度立ち止まってしっかりと考えてみるのが、次の良いキャリアを歩むための基礎になると思います。
 私も採用面接で「私は絶対〇〇をやりたいです!」という方にお会いしますが、結局、人生においては幅をとって色々なことをやるということが重要と感じています。「自分にはこれしかない」と思い込んでしまうと、それ以外は受け入れられないというか、希望が叶わなかったときに「この仕事に向いてないのではないか」と自信を無くしてしまう方がいらっしゃいます。せっかく何年も勉強してきたのに、それは非常にもったいないことです。私も色々な業務を経験してきましたが、今自分が希望していることとは違う世界、本人にはまだ見えていない世界にチャレンジすることになったとしても、その意味は後で振り返ったときでないとわからないものではありますが、人生において無駄なことはありませんし、必ずやる価値はあると考えています。冒頭申し上げた新しいことにチャレンジする、変化を恐れない人と一緒に働きたいというのはそういう意味もあるのです。

大内 
 私も、「合格おめでとうございます」ということと、本当に今まで勉強お疲れさまでしたということをまずお伝えしたいと思います。重複になりますが、私も大切にしたのが「考えること」です。監査法人への就職活動期間は他の事業会社と比べると非常に短期間です。勉強中は受かることに一生懸命なので考える時間がなく、合格してからも間髪入れずに就職活動が始まります。その時間がない中で、自分のこれからの人生のスタートラインを決めなければなりません。もちろんリフレッシュ期間として遊ぶことも大事だと思いますし、違う経験をすることも大事です。ただ平行して、自分がこれから何をしていきたいか、色々なことに興味を持って考えていく期間を過ごしてもらうことも大切だと思います。
 就活生の方からの相談で多いのは、「やりたいことがわからない」という内容です。実際に働く前は、公認会計士としてどういうことをすればいいのか見当もつかないですし、公認会計士以外の周りの友人は具体的にやりたいことが決まっているのに、自分は見えていないという焦りが生じることもあるかと思います。そんな中で、勉強以外にも色々なことを考え経験することで、何か少しでも興味があるものがあれば、それにまず挑戦してみると良いですし、挑戦する中で違うことに興味を持ったら再度挑戦するといったように、自分が素直になれる場所を探すことが良いかと思います。



小林弘幸氏
1995年入社。入社以来、法定監査業務やIPO業務等に従事し、現在は人材本部職員人事執行管理者兼監査・保証事業本部監査・保証タレント部長。
主な対外活動:JICPA公認会計士制度委員会委員、早稲田大学大学院会計研究科非常勤講師

大内望氏
2017年入社。入社以来、上場会社や非上場会社の法定監査業務、IPO業務等に従事。入社1年目及び2年目はリクルート活動にも従事。