税務用語解説

特定支出控除

 サラリーマンなどの給与所得者においては、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額が所得金額とされます。

給与所得の金額 = その年中の給与等の収入金額 − 給与所得控除額

 このうち給与所得控除額とは、給与等を得るために実際に使った経費を積み上げた金額ではなく、給与等の収入金額に応じた一定の額であり、概算の経費額です。概算額を必要経費としているのは、給与等を得るために必要な経費の範囲等を明確化することが難しいためです。
 しかし、給与所得者であっても、その勤務に伴い経費を負担している事実も当然にあります。そこで、特定支出と呼ばれる一定の経費を給与所得者が負担している場合には、次の計算式により、給与所得の金額を計算することも認められています。これが特定支出控除の特例です。

 給与所得の金額
 =その年中の給与等の収入金額 −
 (給与所得控除額+「その年中に支出した特定支出の合計額−給与所得控除額の2分の1」)

 この算式を理解するためには、給与所得控除額が「勤務費用の概算控除額」と「他の所得との負担調整のための特別控除額」で構成されているということを認識する必要があります。その構成割合もそれぞれ2分の1です。

 また、特定支出控除の特例は、概算経費の代わりに実額経費を用いるものですので、言い換えれば「勤務費用の概算控除額」部分の修正といえます。そのため、給与所得控除額の2分の1と実額経費である特定支出の合計額とを比較し大きい方を勤務費用として控除する仕組みとなっているのです。
 したがって、「他の所得との負担調整のための特別控除」である残り半分の給与所得控除額には、特定支出の合計額を影響させません。

【解説者】税理士 村木慎吾
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