税務用語解説

不均一課税

 不均一課税とは、地方税の課税方法のひとつです。
 地方税とは、都道府県や市町村などの地方自治体に対して納める税金をいいます。現在約30種類の税目があり、法人住民税(法人県民税・法人市民税)や法人事業税もその中のひとつです。この地方税には、次のような特徴があります。

【地方税の特徴】
1.地方自治体が税率を自由に決められる税目がある(超過課税、標準税率と制限税率)
2.特定の場合には、通常とは異なる税率を適用することができる(不均一課税)

1.超過課税、標準税率と制限税率

 地方税は、地方税法という法律に、納める税額の計算方法や税率が定められています。例えば、法人県民税の法人税割の税率は、地方税法第51条で次のように定めています。

(法人税割の税率)
第51条  法人税割の標準税率は、100分の3.2とする。ただし、標準税率を超える税率で課する場合においても、100分の4.2を超えることができない。

 「標準税率」とは、地方自治体が課税する場合に通常適用する税率をいい、法人県民税の法人税割の標準税率は3.2%と定められています。
 ただし、各地方自治体の財政上の理由などにより必要がある場合には、この標準税率よりも高い税率で課税する「超過課税」を行うことができます。その際の税率は、各地方自治体の条例で定めることになりますが、地方税法において税率の上限が定められている税目もあります。その上限の税率を「制限税率」といいます。法人県民税の法人税割の制限税率は4.2%ですので、4.2%を超える税率を適用することはできません。
 例えば、神奈川県の法人県民税の法人税割は、制限税率4.2%の範囲内の4.0%という税率で超過課税を行っています。法人の資本金により適用される税率が異なる点は、次の「不均一課税」で解説します。
 ちなみに、法人県民税の均等割には制限税率がありませんので、大阪府のように他の自治体の2倍近い均等割を課している自治体もあります

 

2.不均一課税
 不均一課税とは、特定の場合には、通常とは異なる税率などを適用する制度をいいます。どのような場合に、不均一課税が適用されるかは、その自治体の条例によりますが、そのひとつとして「合併等による不均一課税」が挙げられます。

 平成23年9月26日に、岩手県一関市と藤沢町が合併しました。法人市民税(町民税)の法人税割について、合併前の一関市は超過課税を、藤沢町は標準税率を採用していました。これが合併後は、一関市の税率に統一されることになると、旧藤沢町に所在する法人の税負担が急激に重くなるという事態が生じました。そこで一関市は、平成25年度まで間、その法人が合併前の旧藤沢町の法人であるか、旧一関市の法人であるかにより、下記のように異なる税率を適用しています。これが「不均一課税」です。

【合併等による不均一課税(岩手県一関市:法人市民税法人税割)】

年 度 事業年度末日 税率(旧藤沢町) 税率(旧一関市)
23年度 23.9.26〜24.3.31 12.3% 14.7%
24年度 24.4.1〜25.3.31 13.1% 14.7%
25年度 25.4.1〜26.3.31 13.9% 14.7%
26年度以降 26.4.1〜 14.7%

 不均一課税は、他にも法人の資本金などにより、異なる税率を採用する場合にも用いられます。
 法人県民税の法人税割で超過課税を実施している神奈川県ですが、同時にこの超過課税の対象から中小法人を除外する「中小法人に対する不均一課税」も実施しています。これにより、神奈川県に所在する法人の法人県民税の法人税割の税率は、次のようになります。

【中小法人に対する不均一課税(神奈川県:法人県民税法人税割)】

資本金の額又は出資金の額が2億円以下で、
かつ、法人税額が年4,000万円以下の法人
3.2%
(標準税率)
上記以外の法人 4.0%
(超過課税)

 このように、地方税は条例の定めにより、超過課税や不均一課税を採用している地方自治体があります。税額の計算に当たっては、その都度、各地方自治体のホームページなどで最新の税率などを確認するようにしましょう。

【解説者】税理士 石井幸子
≪≪前へ戻る税務通信のご案内へ税務研究会ホームページ