税務用語解説

控除と減算の違い

 税法の条文上では、「控除する」と「減算する」という用語が用いられています。
 これらの言葉は、一見、同じ意味を表しているように思えるのですが、明確な違いがあり、条文上は使い分けがされています。

 例えば、「100−12=??」という算式を例にします。
 「100から120を控除した金額」だと答えは0となりますが、「100から120を減算した金額」だと答えは△20となります。
 「控除」は、控除される側に何か(今回であれば100)があって、そこから除くという意味です。したがって、答えとしてマイナスがあり得ないのです。
 一方「減算」は、単なる数学上の言葉ですので、その金額を差し引くだけの意味しかありません。したがって、答えにマイナスがあり得るのです。

 例えば、法人税法第22条は、以下のように「控除」という言葉を用いています。

内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。

 この場合は、益金の額から損金の額を差し引いた金額はマイナスになりえない、つまり、各事業年度の所得の金額には、マイナスという概念がないということになります。
 なお、益金の額から損金の額を差し引いた金額がマイナスの場合には、別途、下記の「欠損金額」という定義が設けられています。

法人税法第2条19号
欠損金額
各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額が当該事業年度の益金の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。

 次に、「資本金等の額」を定義している法人税法施行令第8条第1項は、以下のように「減算」という言葉を用いています。

法第二条第十六号に規定する政令で定める金額は、同号に規定する法人の資本金の額又は出資金の額と、当該事業年度前の各事業年度( 略 )の第一号から第十二号までに掲げる金額の合計額から当該法人の過去事業年度の第十三号から第二十二号までに掲げる金額の合計額を減算した金額( 略 )に、当該法人の当該事業年度開始の日以後の第一号から第十二号までに掲げる金額を加算し、これから当該法人の同日以後の第十三号から第二十二号までに掲げる金額を減算した金額との合計額とする。

 条文通りの計算をした結果、資本金等の額のマイナスが生じ得る、ということになります。

 ただし、このような使い分けは、法人税法独特の使い方であることに注意が必要です。
 例えば、所得税法では「控除」という言葉を使っていても、計算の結果がマイナスとなることを許容しています。所得税法において、計算の結果にマイナスを生じさせない場合には、「残額を限度にする」などの表現を別途用いています。

【解説者】税理士 村木慎吾
≪≪前へ戻る税務通信のご案内へ税務研究会ホームページ