税務用語解説

グループ法人課税(グループ法人税制)

 グループ法人税制とは、完全支配関係(100%の資本関係)にある法人同士を一体とみて法人税の課税を行う制度です。平成22年度税制改正で創設されました。



1.完全支配関係とは?
 完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の全部(100%)を直接または間接に保有する関係(当事者間の完全支配の関係)をいいます。このほかに、一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係も完全支配関係といいます。




例1と例2はいずれも、AとB、AとC、BとCとの間に完全支配関係があります。


2.グループ法人税制の具体的な規定
 完全支配関係のある法人間では、次のような規定が適用されます。

(1)中小法人特例の適用を判定する規定
 資本金が1億円以下の法人であっても、資本金または出資金が5億円以上の法人による完全支配関係がある法人は、次の中小法人の特例の適用を受けることができません。
 @ 法人税の軽減税率
 A 特定同族会社の特別税率(同族会社の留保金課税)の不適用
 B 貸倒引当金の法定繰入率
 C 交際費等の損金不算入制度における定額控除限度額
 D 欠損金の繰戻しによる還付制度




 例3の法人Cは資本金が1億円以下ですが、資本金が5億円以上である法人Aによる完全支配関係があるため、上記@〜Dの中小法人の特例の適用を受けることができません。

(2)その他の規定
@ 譲渡損益調整資産の譲渡損益の繰延べ
 完全支配関係のある法人間で譲渡損益調整資産(固定資産、土地、有価証券、金銭債権、繰延資産で帳簿価額が1,000万円以上の資産)を譲渡した場合には、一定の事由が生じるまでの間、その譲渡に係る譲渡損益を繰り延べます。

A 受取配当等の全額益金不算入
 完全支配関係のある法人から受け取る配当金は、原則として、その全額が益金不算入になります。

B 寄附金の損金不算入・受贈益の益金不算入
 完全支配関係のある法人間で寄附(受贈)があった場合には、寄附をした法人では寄附をした金額の全額が損金不算入に、寄附を受けた法人では寄附を受けた金額(受贈益)の全額が益金不算入になります。

 法人税のグループ法人税制、消費税の特定新規設立法人の納税義務の免除の特例規定は、いずれも「グループ」を単位として課税をするという点では共通していますが、両制度の対象となる「グループ」の考え方が異なります。制度ごとに、適用される「グループ」の範囲を正しく判定することが重要です。

 

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