税務用語解説

租税特別措置法

1.租税特別措置法とは
 租税特別措置法とは、特定の政策を実現するために、期間を限定して適用する特例規定を定める法律をいいます。法人税に限らず、様々な税目の特例が定められています。

<租税特別措置法の構成>
第1章    総則
第2章    所得税法の特例
  第1節    利子所得及び配当所得
  第2節    不動産所得及び事業所得
  第3節    給与所得及び退職所得
  第4節    山林所得及び譲渡所得等
  第4節の2 居住者の特定外国子会社等に係る所得等の課税の特例
  第5節    住宅借入金等を有する場合の特別税額控除
  第6節    その他の特例
第3章 法人税法の特例
  第1節    中小企業者等の法人税率の特例
  第1節の2 特別税額控除及び減価償却の特例
  第2節    準備金等
   …略…
  第4節の2 交際費等の課税の特例
   …略…
第4章    相続税法の特例
第4章の2 地価税法の特例
第5章    登録免許税法の特例
第6章    消費税法等の特例
  第1節    消費税法の特例
  第2節    酒税法の特例
   …略…
  第4節    印紙税法の特例
第7章    利子税等の割合の特例
第8章    雑則

2.具体例
 株式会社などの普通法人の税率は、平成31年4月1日から令和3年3月31日の間に開始する事業年度では、次のようになっています。
法人の区分所得金額税率
中小法人等年800万円以下の金額15.0%
年800万円を超える金額23.2%
中小法人等以外所得金額の全額23.2%

 この法人税の税率が、法律でどのように定められているのかを確認してみましょう。


(1)法人税法(本法)を確認する

 法人税の税率であれば、まずは法人税法を確認します。このとき、特別の扱いを定めている租税特別措置法に対して、そのもととなる法人税法などの法律のことを「本法」と呼びます。
 法人税の税率は、法人税法第66条に次のように定められています。

法人税法第66条(各事業年度の所得に対する法人税の税率)
 内国法人である普通法人、一般社団法人等(略)又は人格のない社団等に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の額は、各事業年度の所得の金額に100分の23.2の税率を乗じて計算した金額とする。
2  前項の場合において、普通法人のうち各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下であるもの若しくは資本若しくは出資を有しないもの、一般社団法人等又は人格のない社団等の各事業年度の所得の金額のうち年800万円以下の金額については、同項の規定にかかわらず、100分の19の税率による。

 ここでは、中小法人等の年800万円以下の所得金額に対する法人税率は19%となっており、上記の15%という税率は出てきません。


(2)租税特別措置法を確認する

 次に租税特別措置法を確認します。法人税の税率の特例については、租税特別措置法第42条の3の2に次のように定められています。

租税特別措置法 第42条の3の2(中小企業者等の法人税率の特例)
 次の表の第1欄に掲げる(略)普通法人(略)の平成31年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度の所得に係る同法その他法人税に関する法令の規定の適用については、同欄に掲げる法人又は人格のない社団等の区分に応じ同表の第2欄に掲げる規定中同表の第3欄に掲げる税率は、同表の第4欄に掲げる税率とする。

第1欄第2欄第3欄第4欄
一 普通法人のうち当該各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの若しくは資本若しくは出資を有しないもの(第四号に掲げる法人を除く。)又は人格のない社団等法人税法第66条第2項及び(略)100分の19100分の15

 租税特別措置法第42条の3の2では、資本金の額が1億円以下の法人の法人税率について、法人税法第66条第2項で「100分の19」と定めているものを「100分の15」にする、と規定しています。これにより、現在適用されている上記の表の法人税率となります。
 このように、租税特別措置法では、法人税法などの本法に定められている取扱いの特例的な取扱いを規定していますので、本法と合わせて確認するようにしましょう。

 

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