税務用語解説

連結納税制度

 連結納税制度とは、完全支配関係(100%の資本関係)のある企業グループを「ひとつの法人」と捉えて法人税を課税する、法人税独自の制度です。グループ全体で決算を行う連結財務諸表とは異なる制度です。

1. 連結納税制度と単体納税制度のちがい
 連結納税制度の一番の特徴は、グループ内の各法人の所得と欠損を通算し、その通算後の所得金額に対し税率を乗じて法人税を計算することにあります。所得と欠損の通算後の金額をもとに法人税を計算するため、グループ内の法人で所得金額が発生している法人と欠損金額が発生している法人がある場合には、1法人ごとに行う申告(連結納税と区別するため「単体納税」といいます。)と比較すると、グループ全体の納付税額が少なくなります。

 また、単体納税では欠損金が生じた場合には、その法人のその後の所得金額からしか控除することができません。これに対し、連結納税を採用した場合には、グループ内の法人の所得と欠損の通算を行い、通算しきれなかった欠損がある場合には、その欠損はその後10年間繰り越して、各事業年度の連結グループ全体の所得金額から控除することができます。そのため、単体納税と比較すると早く、確実に欠損金を有効利用できるのも特徴です。

2. 連結納税における所得金額の計算方法
 連結納税制度では、各法人の決算で確定させた損益をもとに、連結グループ全体で所得金額を計算します。この所得金額の計算の基礎となる申告調整額の算出にあたっては、次のような特徴があります。

(1) 法人毎に計算する申告調整項目
 減価償却や貸倒引当金など、各法人での損金経理を要件としているものは、単体納税同様に、各法人で申告調整額を算出します。
(2) グループ全体で計算する申告調整項目
 交際費や寄附金の損金不算入など、申告調整額の計算において法人の規模(資本金・所得金額・法人税額)が必要な項目は、グループ全体で申告調整額を計算し、各法人に配分するという方法により申告調整額を算出します。
(3) グループ内の取引に係る申告調整項目
 連結グループ内で一定の資産の譲渡を行った場合には、その譲渡に係る譲渡損益を繰り延べる調整を行います。

 これらの申告調整額をもとに各法人の所得金額および欠損金額を算出し、これをグループ全体で通算することにより連結所得金額を算出します。

【解説者】税理士 石井幸子
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