税務用語解説

事業所税

 事業所税とは、大都市における都市環境の整備や改善のための費用にあてることを目的として、東京都や政令指定都市などの「指定都市等」だけで課されている税金です。
 事業所税には、資産割と従業者割があり、資産割は事業所等の床面積に対して1uあたり600円、従業者割は支払給与総額に対して0.25%の税率で計算します。
 指定都市等が提供する行政サービスと、そこに所在する事業所等で行われる事業活動との間の受益関係に着目して課税を行うものです。似た名前ですが、事業税とは異なる種類の税金です。

1. 事業所税の課税を行う「指定都市等」とは
 事業所税の課税を行う指定都市等は、平成31年2月1日現在、次の77団体です。
 事業所等がこの77の指定都市等内にある場合にのみ、事業所税を納めることになります。

●東京都23区
●政令指定都市(20市)
札幌市、仙台市、新潟市、千葉市、さいたま市、横浜市、川崎市、相模原市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市
● 首都圏整備法の既成市街地を有する市(3市)
川口市、武蔵野市、三鷹市
● 近畿圏整備法の既成都市区域を有する市(5市)
守口市、東大阪市、尼崎市、西宮市、芦屋市
●人口30万以上の政令で指定する市(48市)
旭川市、秋田市、郡山市、いわき市、宇都宮市、前橋市、高崎市、川越市、所沢市、越谷市、市川市、船橋市、松戸市、柏市、八王子市、町田市、横須賀市、藤沢市、富山市、金沢市、長野市、岐阜市、豊橋市、岡崎市、一宮市、春日井市、豊田市、四日市市、大津市、豊中市、吹田市、高槻市、枚方市、姫路市、明石市、奈良市、和歌山市、倉敷市、福山市、高松市、松山市、高知市、久留米市、長崎市、大分市、宮崎市、鹿児島市、那覇市

2. 事業所等の範囲と免税点制度
 事業所税は、上記の指定都市等に、事務所や店舗、工場などの事業所等を設けて事業を行う法人と個人に対して課されます。この「事業所等」には、自己が所有して使用しているもののほか、借りて使用しているものも含まれます。
 事業所等が指定都市等に所在する場合でも、その事業所等で行う事業の規模が一定以下であるときは事業所税の納税が免除される「免税点制度」があります。事業所等の床面積が1,000u以下の場合には資産割が、事業所等の従業者数が100人以下の場合には従業者割が免除されます。この算定にあたっては、事業所等の床面積からは福利厚生施設などの非課税施設の床面積を、従業者数からは障害者や65歳以上の者など非課税となる者の人数を除きます。
 免税点の判定は、指定都市等ごとに、かつ、資産割と従業者割ごとに行います。免税点の判定と納める税額の計算を具体例で確認してみましょう。

(具体例)

  所在地 事業年度末日の事業所床面積 事業年度末日の従業者数 事業年度中の給与支払総額
本社 東京都千代田区 750u 110人 4億円
支店@ 横浜市西区 800u 55人 2億円
支店A 横浜市中区 300u 20人 1億円

(免税点の判定)

  資産割 従業者割 納税義務の有無
東京都千代田区 750u≦1,000u 110人>100人 従業者割のみ
横浜市

800u+300u

=1,100u>1,000u

55人+20人

=75人≦100 人
資産割のみ

(納める税額の計算)

  資産割 従業者割
東京都千代田区 免税点以下 4億円×0.25%=1,000,000円
横浜市

1,100u×600円=660,000円

免税点以下


 事業所税は、納める税額の計算方法はとてもシンプルですが、その計算のもとになる事業所等や従業者の範囲は、細かくそして複雑に定められています。指定都市等により取扱いが異なるものもありますので、実際の適用に当たっては、事業所等の所在する指定都市等の取扱いを十分に確認する必要があります。

【解説者】税理士 石井幸子
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