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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

建物の一階部分の一部を賃貸している場合の小規模宅地等の特例の考え方 (20/7/9更新)
Q

 被相続人Aは、自宅の一階の一部(建物一階の約1/2) を同族会社に事務所として賃貸しており二階に相続人である配偶者とともに居住していました。
 特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受けたいと考えておりますが、この場合、同一宅地の一階、二階の関係で合わせて特定同族会社事業用宅地等としても小規模宅地等の特例を受けることは可能でしょうか。




A  

1 小規模宅地等の特例の対象となる特定居住用宅地等とは、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族(以下「被相続人等」といいます。)の居住の用に供されていた宅地等で、その被相続人の配偶者又は一定の要件を満たすその被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます(措法69の4@B二)。
 また、特定同族会社事業用宅地等とは、被相続人等の事業(事業に準ずるものを含みます。)の用に供されていた宅地等で、被相続人及びその被相続人の親族その他その被相続人と特別の関係がある者が有する株式の数又は出資の額がその株式又は出資に係る法人の発行済株式の総数又は出資の総額の10分の5を超える法人の事業(貸付事業を除きます。)の用に供されていた宅地等で、その宅地等を相続又は遺贈により取得したその被相続人の親族(申告期限においてその法人の役員である者に限ります。)が相続開始時から申告期限まで引き続き有し、かつ、申告期限まで引き続きその法人の事業の用に供されているものをいいます(措法69の4@B三)。

2 ご質問は、被相続人Aは自宅の1階の一部(1階の約1/2)を同族会社に事務所として賃貸しており、2階に配偶者とともに居住していたところ、同一宅地について特定居住用宅地等と特定同族会社事業用宅地等として併せて小規模宅地等の特例を適用することができるかと問われるものですが、一の宅地に複数の利用区分がある場合、例えば一の宅地が上記1の要件を満たす特定居住用宅地等と特定同族会社事業用宅地等に該当する場合には、それぞれの限度面積(特定居住用宅地等330u、特定同族会社事業用宅地等400u)の範囲について小規模宅地等の特例を適用することが可能です。
 このことは、次の平成22年7月13日付資産課税課情報第18号「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例に係る相続税の申告書の記載例等について」により明らかにされています。

○ 資産課税課情報第18号「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例に係る相続税の申告書の記載例等について」(抜粋)

1 複数の利用区分が存する場合
問 被相続人甲は、自己の所有する土地(600u)の上に建物1棟を所有し、その建物について下図のように利用していた。
 配偶者乙と子丙は、土地及び建物の共有持分2分の1をそれぞれ相続により取得し、相続税の申告期限まで有している。
 乙は、上記建物に申告期限まで引き続き居住しているほか、甲の貸付事業を丙とともに引き継ぎ、乙・丙ともに申告期限まで引き続き貸付事業の用に供している。また、甲が上記建物で営んでいた書籍・雑誌小売業については丙が事業を承継し、申告期限まで引き続き営んでいる。
 この場合に小規模宅地等の特例の対象(特定事業用宅地等、特定居住用宅地等及び貸付事業用宅地等)として選択できるのはどの部分か。

 甲と乙の居住の用に供されていた部分に相当する宅地等の相続税評価額 20,000,000円
 甲の貸付事業の用に供されていた部分に相当する宅地等の相続税評価額 15,800,000円
 甲の書籍・雑誌小売業の用に供されていた部分に相当する宅地等の相続税評価額 20,000,000円

答 本件の場合の乙及び丙が取得した宅地を「特定事業用宅地等」、「特定居住用宅地等」、「貸付事業用宅地等」及び「それ以外の宅地等(減額対象とならないもの)」に区分すると次のとおりとなる。

〔乙が取得した宅地〕
特定居住用宅地等に該当する部分

貸付事業用宅地等に該当する部分

それ以外の宅地等に該当する部分

※ 乙は、甲の書籍・雑誌小売業を承継していないことから乙が取得した部分のうち1F部分に相当する部分(100)は特定事業用宅地等には該当しないため、当該部分(100)については小規模宅地等の特例の適用はない。
(以下略)




(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
   

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