1 土地の売買契約締結後、その契約に係る取引の完了前に売主又は買主が死亡した場合におけるその土地に係る相続税の課税に関する取扱いについては、最高裁昭和61年12月5日判決や最高裁平成2年7月13日判決を契機として出された「売買契約中の土地等又は建物等に係る相続税の課税等について」(平成3年1月11日付資産税課情報第1号)と題する情報により示されています。
この情報では、ご質問の「土地の売買契約中に売主が死亡した場合」の取扱いについて、「売主に相続が開始した場合には、相続又は遺贈により取得した財産は、当該売買契約に基づく相続開始時における残代金靖求権とする。」と定めていますが、これは、売主に相続が開始した事件についての最高裁昭和61年12月5日判決の考え方に沿うものです。
○最高裁昭和61年12月5日判決要旨
原審の適法に認定した事実関係のもとにおいては、たとえ本件土地の所有権が売主に残っているとしても、もはやその実質は売買代金債権を確保するための機能を有するに過ぎないものであり、相続人の相続した本件土地の所有権は、独立して相続税の課税財産を構成しないというべきであって、本件において相続税の課税対象となるのは、売買残代金であると解するのが相当である。
2 上記のとおり、土地の売買契約中に売主が死亡した場合には、相続又は遺贈により取得した財産は、当該売買契約に基づく相続開始時における残代金靖求権とされます。
この場合の「残代金請求権」とは、売買契約に基づき買主から売主に支払われるもので、相続開始時において未払いのものをいいますが、買主から売主に支払われるものである限りその名目を問わないものと考えますから、残代金請求権には、ご質問の固定資産税清算金も当然に含まれることになります。
ご意見は、この固定資産税清算金は評価額には反映しないという考え方によるものと思われますが、土地の売買契約中に売主が死亡した場合の取扱いは、評価額を問題とするのではなく、相続税の課税対象となる財産を何とするかという問題であると思われます。
(税理士懇話会・資産税研究会事例より) |