トップへ

【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

先代名義の不動産に係る遺産分割協議について (20/9/9更新)
Q

 両親と子供2人の家族で、昭和61年に父親が亡くなり、平成11年に母親が亡くなりました。
 不動産をいくつか所有していますので、当時でも相続税の申告が必要な程度の相続財産があったと思われますが、子供2人は、両親どちらの相続についても、相続税の申告を行ったかどうかの記憶が無く、相続税の申告書の控えや当時の遺産分割協議書も見た記憶が無いとのことです。
 両親はご商売をされていたので、顧問税理士が存在したとのことですが、その税理士も既に亡くなっているそうです。
 仮に税務署へ閲覧申請しても、20年以上も前の相続税の申告書は、もう税務署にも保管されていないのではないかと推察しております。
 相続登記もしないままで、固定資産税も親の名前の納付書のまま納めているようです。
 その子供2人も70代という年齢であることや、新型コロナウイルスの影響等を考え、財産を整理すべく相続登記をしたいとのことですが、昭和61年の父親の相続などは、母親が相続して配偶者の税額軽減を適用していた可能性なども考えられ、今回の相続登記が過去に提出したかもしれない相続税の申告書と辻褄が合わない可能性もあります。
 この場合に税務上の問題は何かありますか。
 当方の意見としましては、放置していた相続登記を今行っただけですので、特に税務上の問題は考えられません。また、以前に提出したかもしれない相続税の申告書と辻褄が合わなかったとしても、20年以上前の相続については修正(期限後)申告も提出できませんので、為す術がなく、結果的には何も影響がないとの考えに至っております。
 他の見解や、過去の相続税申告内容についての確認方法がないかと気になっております。ご教示ください。




A  

1 相続税の申告について
 期限後申告も修正申告も不要です。
 国税の更正決定等の期間制限及び徴収権の消滅時効は、各税の申告期限から5年です。
 期限後申告書及び修正申告書は、所轄署の決定・更正が行われるまで提出することができますが、国税の徴収権が5年で消滅するため、決定等の期間制限を超えて提出された申告書については税額を収納することができず、その期限後申告書等を収受することができません(通則法18、19、70、72)。

2 相続税申告書の閲覧について
 相続税申告書は、閲覧申請者以外の相続人全員の委任状があれば申告書を提出した所轄署で閲覧することができますが、相続税申告書の保存年限は10年ですので、ご照会事例に係る申告書の保管はないものと思われます。
 (注)委任状には、実印の押印及び印鑑証明書(発行から3月以内)の添付が必要です。

3 遺産分割協議等について
 父親及び母親が所有する不動産のすべてについて、相続登記が未了であれば、一次相続及び二次相続について遺産分割協議が行われていない可能性があります。
 仮に、その当時に遺産分割協議が行われていたとしても、不動産の相続登記が実行されていないのであれば、共同相続人全員の意志によって先の遺産分割協議書の内容を合意解除したものとして、改めて遺産分割協議を行うことができます(ご照会事例の事情を斟酌すれば、再分割による贈与には該当しないと考えます。)。
 父親及び母親の所有する不動産の相続登記が未了の場合、父親及び母親の存命な相続人(代襲相続人を含みます。)で遺産分割協議を行えば、その不動産の相続登記をすることができます。
 このためには、父親及び母親が不動産を所有する市区町村に対して固定資産税台帳の写しを請求し、すべての不動産登記情報を確認されてはいかがでしょうか。
 その結果、一部の不動産に相続登記が行われている場合は、相続登記が未了の不動産についてのみ遺産分割協議を行えばよいと考えます。




(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
   

資産税研究会(税理士懇話会)のご案内へ
≪≪ トップに戻る税務研究会ホームページ