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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

土地の貸付が使用貸借である賃貸借であるかの判断 (20/11/13更新・20/11/24訂正)
Q

 被相続人甲に相続が開始しました。
 甲は、17年前に同族会社乙社が駐車場として利用するためにA土地(500u)を乙社に貸し付けていました。土地の無償返還に関する届出書の提出がありません。地代は、固定資産税額に相当する金額程度です。
 乙社は、A土地に駐車場の管理事務所の建物(軽量鉄骨造平屋建25u)を建築所有し、乙社名義で所有権を登記済みです。
 甲と乙社の契約では、A土地を返還する時には、A土地のうち25uの借地権程度の金額を乙社が甲に請求し、受領することになっています。
 この借地権に関し、相続税の申告においては、乙社に借地権が帰属するものとして取り扱い、今後A土地を譲渡した場合に乙社が譲渡代金から借地権相当額を受領することができると考えて差し支えないでしょうか。




A  

 乙社は、A土地に関し地代を支払っていないことから、賃借権を有しないものの、使用貸借によりA土地を使用していることが認められます。
 個人と法人との間で土地に係る使用貸借においては、相続税及び贈与税の取扱いでは、法人税の課税取扱いに準拠することとされています。
 一方、甲と乙社の契約によれば、契約の終了時に無償で土地を返還することの約定がないことから、土地の無償返還に関する届出書を提出することができなかったので、そのA土地の借用に関し、乙社は借地権の認定課税を受けることになります。
 その場合における借地権とは、建物又は構築物の所有も目的とする地上権又は土地の賃借権をいいます(法人税法施行令第138条第1項)。この点に関し、乙社がA土地に管理事務所建物25uの所有を目的としていることは明らかですが、駐車場としての構築物(アスファルト舗装等)の所有を目的にしているのであれば、A土地(500u)の借地権について認定課税を受けることになります。
 現実には、その認定課税がなかったことから、課税漏れになっています。課税漏れになっていたとしても、以後の課税取扱いにおいては、適時適切に認定課税があったとみなされるのが通例です。
 そうすると、本件のA土地(500u)は、法人税の課税取扱いに準拠すれば、乙社に借地権の認定課税がされたものとして取り扱われることから、相続税評価額は「貸宅地の価額(自用地の価額×(1−借地権割合)」として評価するのが相当です。
 なお、乙社が将来的にA土地の譲渡代金のうち借地権に相当する金額を請求、受領することができるかについては、法人税の取扱いに従えば可能と考えますが、その場合、権利金や地代を負担していない乙社が譲渡代金を取得することができることに不合理を感じます。




(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
   

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