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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

長男所有の土地の上に被相続人(父)所有の建物があり
それを次男が相続した場合の課税関係
(20/12/11更新)
Q

 長男の土地に父が収益物件を建築しています。
 父は長男に相当の地代を支払っています。
 父は長男と生計一なので、父の必要経費には計上せず、この不動産所得にも計上していません。
 このたび、父に相続が発生し、この建物と借地権を二男が相続しました。
 長男と二男は生計別です。
@ 相続税申告において借地権は自用地価額×20%を計上すべきでしょうか。
A 相続後に二男が地代を支払うことをやめ使用貸借にした場合、長男に借地権を返還したこととなり贈与税課税が発生しますか。




A  

1 昭和60年6月5日付課資2-58「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」通達(以下「相当地代通達」といいます。)の3《相当の地代を支払っている場合の借地権の評価》は、「借地権が設定されている土地について、相当の地代を支払っている場合の当該土地に係る借地権の価額は、次によって評価する」と定めています。
@ 権利金を支払っていない場合又は特別の経済的利益を供与していない場合 零
A @以外の場合 原則として2《相当の地代に満たない地代を支払って土地の借受けがあった場合》に定める算式に準じて計算した金額

2 ご質問@については、ご質問のケースは親子間ですから、借地権の設定時において権利金の授受はないと思われますが、そうであれば、上記@により、父(被相続人)の借地権の価額は零とされますから、相続税の課税価格に加える必要はありません。
 なお、自用地価額の20%相当額のことについては、相当地代通達の6《相当の地代を収受している場合の貸宅地の評価》の注に書かれていますが、これは、被相続人が同族関係者となっている同族会社に相当の地代で貸し付けている宅地(貸宅地)の価額を自用地価額の80%相当額により評価するため(相当地代通達6の(1))、自用地価額から控除された20%相当額をその同族会社の株式又は出資の評価上、純資産価額に加えるというものであり、これにより土地の価額が個人と法人を通じて100%顕現することが課税の公平上適当と考えられることによるものですから(同通達7及び8のなお書きも同じ)、ご質問の場合とは関係がありません。

3 相当地代通達の9《相当の地代を引き下げた場合》は、借地権の設定に際し、相当の地代を支払った場合においても、その後その地代を引き下げたときは、その引き下げたことについて相当の理由があると認められる場合を除き、その引き下げた時における借地権者の利益(発生借地権相当額)を土地所有者から贈与により取得したものとして取り扱う旨定めていますが、これは賃貸借が継続されている場合のことであり、ご質問Aにあるように相当の地代による賃貸借から使用貸借に変更した場合には、使用貸借に係る使用権の価額は零とされますから(昭和48年11月1日付直資2-189「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」通達の1《使用貸借による土地の借受けがあった場合》)、借地権を相続した二男に利益は生じないことになります(相当地代による借地権の価額:零⇒使用貸借に係る使用権の価額:零)。したがって、ご質問Aの場合は、贈与税の課税問題は生じないことになります。




(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
   

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