相続税の申告書の提出先については、相続税法第27条の規定により、相続又は遺贈により財産を取得した者(以下「相続人等」をいいます。)の納税地の所轄税務署とされています。ここで、納税地については、国内に住所を有する者については、その住所地が納税地とされていますが(相続税法62@)、附則第3項の規定により、被相続人の死亡の時における住所地とされています。 また、同一の被相続人から財産を取得した相続人等が2人以上いる場合において、申告書の提出先の税務署が同一であるときは、当該申告書を共同して提出することができることとされています(相続税法27D)。 以上の点は、ご案内のとおりだと思いますが、相続人等が各人で個別に申告書を提出するケースは、相続人間に争いがあって関与税理士を別にする場合など、レアケースで、相続人等が連名(共同)で申告書を提出するのが一般的ですし、ご質問の事例も相続人4名が連名で申告書を提出することが前提になっていると思います。
一方、新型コロナウイルスによる申告期限の延長については、国税庁ホームページに「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」が掲載されており、「問8 相続税の申告において相続人の一人が感染した場合の取扱い」の答えのところで、「なお、個別の申請により申告期限等が延長されるのは申請を行った方のみとなり、申請を行っていない他の相続人等の申告期限等は延長されませんのでご注意ください。」との説明がされています。 ご質問の(1)〜(3)は、この問8のなお書きが発端ではないかと思われますが、FAQの問9〔令和2年12月15日更新〕には、申請書の提出に代えて、申告書等の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を付記する、簡易な手続での申請方法が現時点でも掲載されています。そして、この簡易な手続により相続税の申告期限の延長申請を行う場合は、連名で申告書を提出した相続人等の全員が延長申請を行ったこととなりますので、ご質問のような疑問は生じないものと考えます。なお、この場合は、当然のことながら、相続人等の全員に個別延長が認められるやむを得ない理由があることが前提になります。
ご質問の(4)については、FAQの問9において、簡易な手続により延長申請を行った場合、「申告・納付期限は、原則として申告書の提出日になります。」と説明されています。したがって、申告書の提出日後に納付をした場合は、納付期限を過ぎた納付になりますので、申告書の提出日から納付した日までの間の延滞税が賦課されるという問題が生じます。
既にご承知かも知れませんが、国税庁ホームページのFAQの関係部分をご参照ください。
(税理士懇話会・資産税研究会事例より) |