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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

相続税の申告期限の延長 (21/3/4更新)
Q

 新型コロナウイルスの影響で点在する被相続人の不動産の現地調査や資料収集が遅れ、これに起因して遺産分割協議も遅れた結果として、申告・納付期限の延長申請(以下、延長申請といいます)を記載した相続税の期限内申告書(以下、申告書といいます)を提出する場合の方法について、お尋ねします。

 相続人は4人で、国内に居住した被相続人と同居していた者が2人・その同居地以外の国内の自治体に居住する者が2人です。
 各相続人は相続税法27条1項により申告書を納税地の所轄税務署に提出すべきことと同法附則3項が当該納税地は当面被相続人の死亡の時における住所地になることを定めている事は確認しました。これまでは、各相続人の納税地と申告書提出先の税務署長が同じになるので同法27条5項の定めにより連署した「共同」提出用の申告書を1部だけ提出すればよいと考えてきましたが、延長申請を記載した申告書提出の場合は「個別」に申請した相続人のみに延長が認められ、申請しなかった他の相続人には延長が認められない事を知りました。

(1) 共同提出用の申告書で延長申請を記載したもの1部だけ提出した場合、各相続人の記名押印が連なっているときでも、例えば1人の相続人にしか延長は認められないのでしょうか。そうだとすると、他の3人の相続人には期日後の未分割申告書の提出が求められるのでしょうか。
(2) 延長申請を記載した各相続人の申告書を個別に1つずつ合計4つ提出すれば、全ての相続人に延長が認められるのでしょうか。
(3) 各相続人の記名済申告書に個別申請する者だけが押印したものをその者の申告書とし、同じ要領で申告書4つを作成し提出すればよいのでしょうか。
(4) 私と相続人居住地は遠隔地にあるので、申告書は相続人の納税地を所轄する税務署長に郵送し、納付書は各相続人に郵送するつもりです。この場合納付が先に行われるよう手配すると教わりましたので納付書の郵送を先行させた後、数日置いて申告書を郵送する予定をしています。この手順を踏まないと、どのような問題が生じるのか聞き漏らしましたので、ご教示下さい。




A  

 相続税の申告書の提出先については、相続税法第27条の規定により、相続又は遺贈により財産を取得した者(以下「相続人等」をいいます。)の納税地の所轄税務署とされています。ここで、納税地については、国内に住所を有する者については、その住所地が納税地とされていますが(相続税法62@)、附則第3項の規定により、被相続人の死亡の時における住所地とされています。
 また、同一の被相続人から財産を取得した相続人等が2人以上いる場合において、申告書の提出先の税務署が同一であるときは、当該申告書を共同して提出することができることとされています(相続税法27D)。
 以上の点は、ご案内のとおりだと思いますが、相続人等が各人で個別に申告書を提出するケースは、相続人間に争いがあって関与税理士を別にする場合など、レアケースで、相続人等が連名(共同)で申告書を提出するのが一般的ですし、ご質問の事例も相続人4名が連名で申告書を提出することが前提になっていると思います。

 一方、新型コロナウイルスによる申告期限の延長については、国税庁ホームページに「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」が掲載されており、「問8 相続税の申告において相続人の一人が感染した場合の取扱い」の答えのところで、「なお、個別の申請により申告期限等が延長されるのは申請を行った方のみとなり、申請を行っていない他の相続人等の申告期限等は延長されませんのでご注意ください。」との説明がされています。
 ご質問の(1)〜(3)は、この問8のなお書きが発端ではないかと思われますが、FAQの問9〔令和2年12月15日更新〕には、申請書の提出に代えて、申告書等の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を付記する、簡易な手続での申請方法が現時点でも掲載されています。そして、この簡易な手続により相続税の申告期限の延長申請を行う場合は、連名で申告書を提出した相続人等の全員が延長申請を行ったこととなりますので、ご質問のような疑問は生じないものと考えます。なお、この場合は、当然のことながら、相続人等の全員に個別延長が認められるやむを得ない理由があることが前提になります。

 ご質問の(4)については、FAQの問9において、簡易な手続により延長申請を行った場合、「申告・納付期限は、原則として申告書の提出日になります。」と説明されています。したがって、申告書の提出日後に納付をした場合は、納付期限を過ぎた納付になりますので、申告書の提出日から納付した日までの間の延滞税が賦課されるという問題が生じます。

 既にご承知かも知れませんが、国税庁ホームページのFAQの関係部分をご参照ください。




(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
   

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